米国株式市場では、NYダウの急反発がみられています。直近の安値から20%の回復となっており、本格的な上昇を見込む声も聞かれ始めました。一方、新型コロナウイルスの影響は、やはり気がかりです。NYダウの上昇が続く場合、上値はどのあたりまで見込めるのか、反対に、下落する場合の下値はどのあたりになるのか、考察します。

NYダウは直近安値から20%超の反発を達成した

米国株のリバウンドが続いています。3月26日は、新型コロナウイルスの問題を受けた米国政府による大規模な経済対策への期待が一段と高まり、NYダウの終値は前日比1,351.62ドル高の22,552.17ドルとなりました。

 

NYダウはこれで3日続伸となり、直近安値から20%超の反発を達成しました。米国のメディアの中には、3月11日から続いた弱気相場は史上最短で終了したと伝えているところもあります。

 

米国議会の上院で25日夜、個人への現金給付や企業への資金支援などを盛り込んだ総額2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策法案が可決され、下院でも27日には採決が行われる見通しです。米国の国内総生産(GDP)の1割にも相当する大規模な経済対策であり、市場の想定よりも早期に実現する見通しとなったため、投資家の歓迎ムードが広がりました。

 

また、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長がこの日、金融安定監視評議会(FSOC)で「FRBは経済を守るためにあらゆる政策手段を講じる」と発言したことも、投資家の安心感につながっています。

 

新型コロナウイルス問題で、米国政府による大規模な経済対策への期待が一段と高まっている。
新型コロナウイルス問題で、米国政府による大規模な経済対策への期待が一段と高まっている。

 

この日に注目されたのは、労働省が朝方発表した前週(3月21日まで)の新規失業保険申請件数です。季節調整済みで328万3,000件となり、前週比で約12倍に増えました。過去最大の記録であり、新型コロナウイルスの影響で工場の操業停止や店舗閉鎖が相次ぎ、企業によるレイオフ(一時解雇)が急増したためと報じられています。

 

これは当然ネガティブなニュースですが、市場ではもともと大幅な数値悪化が見込まれていたこともあり、相場への影響は限定的となったようです。

上昇継続か、再び下落に転じるか、見方が割れている

短期間に大きく値を戻してきた米国株ですが、このまま上昇を続けるのか、それとも戻りが一服するのか、見方が割れるところです。

 

NYダウの値動きをたどると、2月に29,500ドル台まで上昇しましたが、下落に転じると、3月には18,200ドル台の安値まで暴落しました。そして、リバウンドに転じると、26日には高値(29,500ドル台)から安値(18,200ドル台)の3分の1戻しを達成しています。

 

株価水準が短期間に3分の1を回復し、それも歴史的な大幅高が続いてのリバウンドであったことが、見通しを立てることを一段と困難にしています。

 

NYダウ・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
NYダウ・日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

このまま上昇が続くとすれば、テクニカル的に、まず目が行くのは、23,700ドルのレベルです。詳説は省きますが、26日時点で25日移動平均線、基準線と2つの重要なトレンドを示すラインがあり、上値を阻まれそうです。もちろん、これをブレイクして上昇を続けられれば、本格的な株価の戻りが期待できます。

 

強気(ブル)派の方からすれば、「新型コロナの悪影響は織り込まれた」とか、「米国の景気対策は、お肉券とかお魚券とか言っている日本とはモノが違う!」という論調で、株価の戻りは早いと予想する識者も、意外に多いようです。

 

今週、FRBの元議長であるバーナンキ氏がCNBCとのインタビューで、「現状は1930年代のような不況ではなく、同規模の不況に向かってもいない」との見解を示したことが話題になっています。市場の大変動を認めた上で、「新型コロナウイルスによるクラッシュは『吹雪や自然災害』のような1~2四半期の経済事象に過ぎない」との発言も、ロイターニュースで伝えられています。

 

一方の弱気(ベア)派のシナリオはもちろん、新型コロナウイルスの影響がどこまで広がるのか、予想できないというものです。米国政府の景気対策は恩恵が一部の企業にしかなく、リセッション(景気後退)は避けられないとか、金融不安が始まるとか、強気(ブル)派とは正反対のものです。

 

NYダウ・月足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
NYダウ・月足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

いずれにせよ、過去の信用収縮の相場における値動きを参考にすれば、「下値を再度確認しに行く動き」は遅かれ早かれ、あると予想されます。ずっと上昇が続いて、何もなかったかのように29,000ドルまで上昇するとは、さすがに考えにくいです。

 

一度安値をつけて反発したものの、勢いがつかず弱含みとなり、再び安値の近辺まで値を下げる、という展開です。「下値の堅さを確認する」といった言い方をする場合もあります。ここでまた上昇に転じれば、それは「二番底」と呼ばれ、2回も安値を更新せずにサポートされているため、下値不安はかなり和らぎます。

 

反対に、直近の安値で下げ止まらず、安値を更新していく展開は「底割れ」と呼ばれます。むしろ、下値不安が高まり、場合によってはスパイラル的な下落のリスクも出てきます。

 

大きな値幅を伴っての上昇と下落を繰り返しており、依然としてマーケットは不安定です。2月、3月とNYダウの月間値幅はかなり大きいものです。

 

何らかの材料によっての大幅高、大幅安を繰り返しながら、株価の水準感を探っていくことになります。値動きが収れんされていくには、まだまだ時間がかかりそうです。

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