株式トレードで有名な2つの「ボラティリティ指標」
株式トレードで値動きの激しい銘柄をスクリーニングするときに有効な指標として、ボラティリティがあります。ボラティリティを簡単に説明すると、価格の変動率のことです。そして、ボラティリティを示す指標は2つあります。
株価の変動率は、地合や対象銘柄の資金の出入りで変わります。そこで、ボラティリティを指数化してスクリーニングすると、タイミングよく値幅の取れる銘柄を見つけられるようになります。一般に、ボラティリティが低い状態が長く続くと、トレーダーは値動きを求めて仕掛けてきます。テクニカルトレードのコメントでよく聞く、レンジブレイクで相場が大きく動くというのは、このことを指します。
特に短期トレーダーにとっては、ボラティリティが上がっている銘柄を見つけることが重要になります。以降では、最も有名な2つのボラティリティ指標を紹介します。
過去のデータで算出する指標「HV」
代表的なボラティリティ指標の一つにヒストリカルボラティリティ(HV)があります。HVの特徴は、ヒストリカルという言葉に示されているように、過去のデータに基づくデータ分析によって算出されます。
HVは値動きの過去データを標準偏差で表します。使い方も統計学の標準偏差に倣います。重要な目安は1σと2σです。統計学的に考えると、株価は±1σの範囲に約68%の確率で納まります。そして±2σにはは約95%の確率で納まります。
これをHVに当てはめると、HVが20%の時、株価は約68%の確率で±20%の範囲に収まり、約95%の確率で±40%の範囲に収まると予測できることになります。もっと簡略化して考えると、HVが大きいと相場が荒れており、小さいと値動きが小さい状況であると言えます。
HVを算出することは難しくありませんが、ネット証券ではスクリーニングの指標の中にHVが入っているので、ほとんどの銘柄のHVを手軽に検索できます。
将来の変動率を予想する指標「IV」
インプライド・ボラティリティ(IV)は予想変動率とも呼ばれ、投資家の期待や予測を数値化し、将来の変動率を予想するボラティリティ指標です。HVは過去のデータ、IVは未来の予想という点で、異なる特徴をもちます。
IVの算出はHVよりも複雑で、オプション価格から逆算します。オプション価格はブラックショールズモデルで算出され、以下の変数を使います。
・株価(原資産価格)
・権利行使価格
・満期までの残存期間
・金利
・ボラティリティ
これらの変数のうち、ボラティリティ以外は実際の市場で見つけられます。このため、現在の市場のオプション価格が、このモデルの理論上のオプション価格と等しければ、ボラティリティが逆算できることになります。
この算出方法からわかる通り、オプション価格のわからない銘柄はIVを算出できません。多くの場合、日経平均など株価指数において相場の方向性を予想するときに参考にされます。
「ATR」でボラティリティを評価
これまでに、2つの有名なボラティリティ指標を紹介しました。どちらの指標もトレーダーが参考にしているため、株価に一定の影響を与えているといえます。しかし、他のトレーダーと同じことをしていても満足できない方には、ATRを使ったボラティリティ評価を紹介します。
ATRはAverage True Rangeの略で、前日終値の終値と当日のろうそく足の値を使って簡単に算出できます。株価情報サイトで時系列データをエクセルなどに張り付けて、計算してみてください。
そして、ここからがオリジナルのポイントです。ATRは一般に、14日分の株価変動率の平均値で算出します。自分で計算する場合、この14日を自由に変えられます。また、1日分のATRの値の最大値と最小値を計算しておくと、一日の値動き幅の見当を付けられるようになります。これを利用し、移動平均線の逆張りを狙いたいときは、一日の値動き幅の分だけ下髭余地を見込んで指値注文を出す、などの工夫ができるようになります。
このやり方は、値動きの激しい銘柄でトレードしてみたものの、テクニカル分析に対する誤差がうまく扱えず、下髭で損切りしたり、上髭で高値掴みする失敗を減らすのに役立ちます。株価に振り回されずに値幅を大きくとるためのテクニックとして、有用なのでおすすめです。