為替市場は、米ドル円は「新型コロナウイルス」をめぐって大相場となっています。2月高値の112円から101円台まで急落した後、今度は111円台まで上昇しています。このまま112円に乗せて高値を更新していくのでしょうか。

米ドル円は112円から101円台まで急落したが…

3月はまだ終わっていませんが、新聞報道などより一足早く、米ドル円の1カ月間の値動きを振り返ってみます。

 

上旬は新型コロナウイルスへの世界的な警戒でリスク回避の様相が一気に強まり、米ドル円は下落しました。2月21日に112.10円台の直近高値をつけていましたが、17日後の3月9日には101円60銭台の安値に急落しました。

 

株式市場で大幅安が続いたとか、原油価格の急落があったとか、いろいろな要因はあるのですが、米国の金利が急激に低下したというのが「模範解答」になります。

 

米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が相次いで利下げを発表し、結局、実質ゼロ金利を導入しました。加えて、量的緩和策も行うと表明しました。これによって、米国金利の上昇期待の高まり→米ドル円の上昇という構図が崩壊し、それどころか逆回転を始めたため、パニック的な売りも相まって、短期間に米ドル円が暴落したのです。

 

3月の為替相場では、米ドル円は10円の値幅で大きく動く展開となった。
3月の為替相場では、米ドル円は10円の値幅で大きく動く展開となった。

 

この点で、足もとの米国金利はひと頃の不安定な値動きから落ち着きを取り戻したものの、これまでに比べると依然として低いです。

 

しかし、米ドル円は「101円台で当面の下値を確認した!」とばかりに、その後は112円手前までリバウンドしています。これはどういうことなのでしょうか。

米ドル円の急激なリバウンドは「有事のドル買い」

101円台から112円手前までの上昇について、理由は2つあると考えられます。

 

1つ目は、リスク回避の様相は変わっておらず、むしろ投資家のリスク許容度が一段と低下したため、米ドルが買われているということです。これは、金融関係者やFX(外国為替証拠金取引)をやられている方以外は、少しわかりにくいかもしれません。

 

「有事のドル買い」という言葉をお聞きになられたことはないでしょうか。よくニュースに出てくるのは、戦争が起きているときです。

 

平時の相場における一時的なリスク回避局面では、投資家の資金は安全資産に向かいます。それは、金(ゴールド)であったり、為替相場では円であったり、債券市場では米国債、日本国債あたりが選好されます。

 

しかし、戦争や大災害が起きて、リスク回避の様相が極度に高まると、大半の金融商品が売られて、現金化する動きが広がります。とりわけ、基軸通貨である米ドルに資金が向かいやすく、これが「有事のドル買い」です。

 

世界中で株やコモディティ商品(原油や金など)が売られ、現地の通貨から米ドルに転換する動きが強まり、米ドルの「一人勝ち」になります。米ドル円で言えば、海外投資家が日本の株式市場から資金を引き揚げるため、株を売って、円から米ドルに転換したという説明になります。

 

米ドル円・60分足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
米ドル円・60分足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

2つ目は、基軸通貨である米ドルを確保しようと、世界中から買いオーダーが殺到したことです。原油を購入する場合など、基軸通貨の米ドルが不足すれば一大事です。

米ドル円の急反騰はテクニカル的に「行き過ぎ」

さて、米ドル円がこのまま上昇し、2月下旬につけた112円台の高値を更新していくかが、目先の注目点です。

 

このカギを握るのは、先進国の中央銀行が相次いで行っている米ドル資金の緊急的な供給です。未曽有のリスク回避の局面が続く中で、米ドル資金不足へ備えた措置といえます。

 

確かに、これは世界経済をまわしていくにあたって大きな効果があります。米ドルが他のどの通貨に対しても「一人勝ち」となっているということは、つまり、ニーズが急速に高まっていることが背景にあります。

 

中央銀行による米ドル資金の緊急的な供給は、混乱を和らげる効果はあるのですが、逆に言うと、この「有事」が一息つけば、米ドルは「不足」から一転「余剰」となります。そうなると、米ドル売りが急拡大に、状況が一変する可能性が出てきます。

 

米ドル円・月足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
米ドル円・月足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

新型コロナウイルスの騒動が年内に収まるのか、それとも来年以降も続くのかはわかりません。このような状況で、ひとまず米ドルに資金を戻しておこうとか、リスク資産を売って米ドルに換えておこうという動きが、対円でも米ドルを押し上げました。

 

ただ、この動きはずっと続くものではなく、ある程度のところで一巡すれば、今度は逆回転するというのが、これまでの「相場の歴史」が示しています。

 

詳説は省きますが、この米ドル円の急反騰はテクニカル的に「行き過ぎ」です。このまま112円手前で上値が重くなり、2月下旬につけた112円台の高値を更新できなければ、今度は売りが優勢となって、トレンドが下落に転換すると思われます。

 

月足チャートでは101円台への下落で「三角持ち合い」という形状を下に放れており、「投資の教科書」的には、ベクトルは下方向です。直近高値である2月の112.10円台をブレイクしない限り、このシグナルは消えません。

 

新型コロナウイルスに端を発したリスク回避相場の「第2幕」はあるかもしれないと、常に備えておきたいものです。

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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