NYダウが再び急落、過去2番目の下げ幅に
3月11日の米国株式市場では、NYダウは再び急落しました。取引時間中には下げ幅を一時1,700ドル近くまで広げ、終値は前日比1,464.94ドル安の23,553.22ドル、5.86%の値下がりとなりました。今週月曜日の3月9日に続いて、過去2番目の下げ幅です。
新型コロナウイルスの感染者が米国内で増えてきており、今週になって、楽観論が吹き飛んでしまいました。加えて、9日の株価下落は原油相場の急落も背景にありましたが、実は11日も、産油国の動向が影響したかもしれません。
ニューヨークの原油先物4月限(WTI)は1バレル32.98ドル(前日比-1.38ドル)で取引を終え、4.02%の大きな下げ幅です。
ロイターの報道によると、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の協調減産をめぐる協議決裂を受け、アラブ首長国連邦(UAE)が産油量を4月から増加させると表明したそうです。
9日の原油価格急落は、サウジアラビアの増産表明が大きく影響しました。今回のUAEの増産によって、新型コロナの感染拡大による経済活動の停滞で世界的な原油需要の減少が予想される中、一段と供給過多の状況になりそうです。OPECとロシアとの対立も懸念されます。
米国政権の経済対策案は織り込み済みの話
このような状況で、米国政府も静観しているわけではありません。トランプ政権は10日、給与税の免除などを含む経済対策案を発表しました。
しかし、このような話は(1)サプライズ性が大きい、(2)市場の期待を上回る大きさでなければ、効果は限定的というのが常です。この点で、すでに9日のうちに、トランプ大統領は「10日に『かなりの規模となる』経済対策を公表する」と表明しており、織り込み済みの話でした。
実際に発表された内容は市場予想の範囲内であり、むしろ具体性に乏しいとして、失望につながったと考えられます。そもそも、会見にトランプ大統領が出席しなかったことも、マーケットの関係者からすれば論外な話です。
さらに言えば、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が同じ日に、「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と発言して、世界的な大流行になっているとの認識を示し、各国に対策の強化を訴えたことも、投資家心理を冷やしたと考えられます。
数日前まで、感染者は中国、韓国、イタリア、イランに集中しており、北米ではまだ「そんなに大ごとではない」と考える人が少なくないと報じられていました。それが、ここにきて米国やカナダでも感染者が増えてきており、リスク回避の姿勢が一気に強まってきているようです。特に米国は日本のように医療保険制度が整っていないため、感染者の拡大が一気に進むリスクがあると指摘する医療関係者もいて、事態が悪化する可能性も捨てきれません。
為替にしても株価にしても、下方向、上方向のどちらにも大きく動く状況こそ、投資家の不安心理を映しています。ボラティリティ(変動幅)の大きな相場は、投資家の先行き不透明感があるためです。
やはり、新型コロナの感染者数にアタマ打ちの兆しが出てくるとか、ワクチンや何らかの予防方法、治療薬が開発されたとかがない限り、米国株も日本株も上下動を繰り返しながら、ベクトルは下方向とみてよさそうです。
なお、一部では3月17~18日に開かれる、米国の連邦公開市場委員会(FOMC)に注目する向きがあるようです。これは、米国の金融政策を決定する会合で、日本の「日銀金融政策決定会合」のようなものです。
ただ、今回の混乱はリーマン・ショックのような「金融発」ではありません。金融政策ではなく、財政政策(政府サイド)で動くべき話であり、FOMCに対して過度に期待するのは無理筋だと考えます。
新型コロナウイルスが「得体のしれないもの」であるうちは、金融マーケットの本格的なリバウンドは難しいと考えておくべきでしょう。
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