「マンション転貸」で手間なく安定収入を確保
ここからは、Airbnbの運営事例に学ぶ「収益モデル」について見ていきましょう。
まずは、東京都港区・東京都渋谷区のワンルームマンションで、転貸により手間をかけずに安定収入を確保した例です。
オーナーは、現役時代は外資系企業に勤める、いわゆるエリートサラリーマンでした。バブル期に都心のマンションを数件購入し、賃貸収入を得ていました。現在は定年退職し、賃貸物件の運営収益で悠々自適の生活をしています。
しかし、築年数が古くなったため、最近は空室が増え、収益が低下していることが悩みでした。空室を埋めるには大規模な修繕が必要となるため踏み切れずにいたそうです。
その中で、港区や渋谷区にある物件は立地が良く、部屋の広さも手頃なワンルームマンションであったため、ある会社でAirbnbにより活用することにしました。オーナーには転貸許可料として通常家賃に加え、月額1万円をお支払いしています。
渋谷区の物件は既にリノベーション済みだったため、筆者の会社でカスタムメイドの家具をつくりコーディネートしました。港区の物件は宿泊用に全面リノベーションしました。
[図表1]リノベーション前
リノベーションに当たっては、「Tokyo Art Room」というアートギャラリーのようなAirbnbというコンセプトを設け、インテリアデザインにこだわった部屋づくりを目指しました。
天然素材とカスタム家具を活用し、ミニマルな空間をつくり出し、さまざまなアート作品が自然に馴染むような設計にしてあります。壁は調湿性のあるドイツ製の紙クロスを下地に塗装を施し、人の手を感じられる仕上げとしました。港区の物件の床はフレキシブルボードを利用し、セメントの質感をそのまま仕上げに取り込んでいます。
[図表2]リノベーション後
ゲストの外国人に感想を聞いてみると、この部屋のミニマルかつモダン、黒とグレーの色使いが日本っぽいと感じているようです。私たち日本人から見るのと、外国人ゲストから見るのとでは、同じものを見ていても違った趣に見えたり、新しい発見があったりするということです。
港区の物件のリノベーションは設計、壁・天井・壁紙貼り替え、床替え、キッチンにステンレス貼り・塗装、家具製作、ボイラータンクカバー製作などをすべて行って、総費用200万円ほどでした。
渋谷区の物件は、設計、家具作成、設置で約50万円です。いずれもローコストでありながら、素材感の生きた空間にすることで、原状回復工事程度の予算で、賃貸物件の資産価値を向上させることにも成功しています。
リノベーション代のほとんどを「1年」で回収
港区の物件は、2014年7月より運営を開始しました。まるごと貸し切りで1泊1万1004円の価格設定です。最も収入の大きかった2015年4月には43万4186円となりました。最も収入の少なかった同年12月でも収入は21万8386円です。
月によって収益に差はあるもののコンスタントに一定以上の収入はあり、年間で見れば180万9637円の収益がありました。つまり、初期に費やしたリノベーション代のほとんどを1年で回収できたことになります。
[図表3]
稼働率にもばらつきはありますが、ほとんど予約を取らなかった1月を除き、稼働率の低い11月でも3分の1は埋まっています。稼働率の高い9月では100%を達成しました。年平均の稼働率は61.1%でした。
渋谷区の物件は、2015年4月中旬より運営を開始しました。5月の稼働率は71%にとどまりましたが、その後は順調に稼働しています。Airbnbでは秋に稼働率が落ち込みやすい傾向があるのですが、この物件に関しては10月がオープン以来で最も高い77.4%という稼働率になりました。
これらの物件からの肝心のオーナーへのキャッシュですが、港区の物件は8万円の家賃のほかに転貸許可料1万円が、代々木は家賃7万4000円のほかに転貸許可料1万円が支払われます。つまり、毎月合計17万4000円の収入となります。
老朽化して空室が埋まりにくくなっていた物件を埋めることができ、なおかつ家賃の上乗せもあることから、オーナーには非常に満足してもらえる状況が続いています。そして、オーナーは今後、自身が所有するほかの物件も空き次第、Airbnbに転用したいとの考えをお持ちです。