前回は、安全なAirbnb運営には「損害保険」への加入が欠かせない理由について説明しました。今回は、「対人賠償責任保険」について見ていきます。

常に管理者責任が問われる「対人」の事件や事故

2015年夏に渋谷区で、中国人の母親と子どもがAirbnbと思われるマンションに宿泊していたところ、子どもがマンションのベランダから落ちて亡くなったという事件がありました。

 

こうした事故や事件が起こると、「オーナーの責任の有無」が議論にのぼります。「子どもが柵を乗り越えられるような、足場になる物をベランダに置いていたのは誰なのか」という管理者責任が問われるのです。すると、たいていはオーナーに責任があるという判断になってしまいます。

 

たとえオーナーが意図してそこに物を置いたのでなくても、結果的に子どもが柵を乗り越えられる状況をつくってしまったのはオーナーですから、まったく責任なしということには基本的になりません。この事件に対応しAirbnbでもホスト補償保険が新たに整備されました。

 

これは対人・対物事故の損害賠償保険ですがさまざまな状況を想定するなら一般の保険に加入することもお勧めします。その場合オーナーの管理者責任を最大限カバーできるだけの対人賠償責任保険に入っておく方が良いでしょう。

 

対人の賠償責任保険に加入した場合、通常は1棟まるごと(共用部も各個別の居室も)補償の対象となります。

日本人では起こりにくい事故なども想定し、保険に加入

他にも、Airbnbでは火災の事故も心配です。オーナーがどれだけ防災していても、宿泊者が火の不始末などをやってしまうと、火災の恐れは常にあります。

 

分かりやすい例がタバコです。ゲストが喫煙者で、宿泊中に寝タバコなどしてしまうと、火の不始末による火傷や火災時の死亡事故などが考えられます。基本的には火災保険で、建物や近隣の燃え広がってしまった物への被害の補償はできます。しかし、人が亡くなってしまうと、それではカバーできません。

 

「部屋にスプリンクラーはきちんとつけられていたのか」や、「スプリンクラーや火災報知器がしっかり作動していたのか」など、事故の検証時に必ずオーナー責任が問われます。居室内事故のリスクとして考えられるものは、ほかにもたくさんあります。

 

・一酸化炭素中毒
・煙による窒息死
・階段からの転落死
・浴槽での転倒

 

慣れない日本家屋の狭いところで頭を強打してしまう、とか、給湯器の使い方が母国のものと違っていて分からず、急にお湯が出て火傷するなど、日本人では起こり得ない外国人特有の事故も予想されます。

 

海外から来る人たちは、訴訟社会の中で生きている方が多いので、一旦敵になってしまうと、責任追及や訴訟から逃れることは難しくなります。もし最終裁判までいってしまえば、オーナーの金銭的・時間的・精神的負担は甚大なものになります。Airbnbで事件や事故が起こる可能性は確率的には低いですが、万一を考えなくてはなりません。

 

特に対人被害の場合は補償金額が大きくなってしまうことが多いので、ぜひとも保険に入っておいてほしいと思います。

本連載は、2015年12月11日刊行の書籍『中古アパート・マンションが生まれ変わる airbnb空室物件活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中古アパート・マンションが 生まれ変わる airbnb空室物件活用術

中古アパート・マンションが 生まれ変わる airbnb空室物件活用術

小沢 吾亘・町田 龍馬

幻冬舎メディアコンサルティング

ここ数年“サラリーマン大家”という言葉が定着してきました。年功序列や終身雇用制度が崩壊し、将来に不安を抱えるサラリーマンが安定した資産を築く手法として注目しているのが不動産投資です。 こうしたサラリーマン大家…

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