主要企業が「非上場」のコロンボ証券取引所
証券市場の「流動性」「透明性」そして「効率的な価格発見機能」は、誰しもが認める必要な要素だ。しかしそれらを導入すると謳う証券取引委員会(SEC)のロジックには、不明瞭な点があり、また論理的な誤謬がある。
まず確認したいのは、スリランカの証券取引所には、国内の主要企業が上場していないということだ。金融セクターの多くや、経済的にも大きな割合を占める公共事業セクターの企業は上場をしていない。スリランカ最大の産業である輸出向けの既製服や、テクノロジー企業、また港湾ビジネスについても証券取引市場との関わりが薄い。そのため証券市場がもつ経済のバロメーターとしての機能がスリランカでは弱い。コロンボ証券取引所の時価総額は対GDP比で30%で、70%超であるインドと比較してはるかに低い割合だ。
証券取引市場の流動性に関する問題は、このようにスリランカ国内でビジネス展開する大企業が上場していないということに起因している。上場することの負担に嫌気を示し、あるいは他の資本調達手段に比較して上場するメリットが薄いと感じて、多くの企業は株式を公開していない。
また資本を求めている国営企業にとっては、上場に必要な強固なガバナンスが欠如していることが足かせとなる。ガバナンスを改善できたとしても、これらの国営企業を上場して民営化すべききどうかは、政策的に検討されなければならない。上場企業の数が少ないことが流動性を抑えている直接の原因なのであって、80%を超える株式を保有する支配株主に責任を押し付けるSECのロジックは、論理的に誤りなのである。
合理性を欠いた証券取引委員会のロジック
同様に、浮動株の最低比率を定めることで、より透明性が増すというSECの主張も、論理性がない。市場の透明性は、よい企業ガバナンスと情報開示ルールによるものであって、浮動株比率とは直接の関係はない。また企業ガバナンスや適切な情報開示は、全ての上場企業に求められることであり、一般株主の割合が5%であろうが90%であろうが関係がないことである。
市場における高い流動性は、効率的な価格発見機能を助け、上場企業の資本コストを削減する。過半数の株式をもつ支配株主の存在が流動性を低めている原因だとしたら、彼らは自らの存在によって資本コストを増加させていることに、彼ら自身が気が付くだろう。そうなれば、SECに強制されなくても、自らにとって最良の選択をするというインセンティブが働くはずなのだ。
次回はセカンド・ボード(二部)に逃げ出す、上場企業の現状をご紹介します。