地価相場はそもそもどのように形成される?
今回は、不動産の時価を「見て判断する」とはどういうことなのかを考えてみましょう。以下の二つの写真を眺めてみてください。
[図表1]時価を見て判断してみる
写真Aと写真Bが同じ地域にあるとします。これらの通り沿いに、同じ地形の土地(更地)がある場合、上の写真Aの土地の単価を100としたときに、下の写真Bの土地の単価はいくらぐらいになると思われるでしょうか。土地の買主の立場で考えてみてください。
おそらく皆さんの回答は、40〜75ぐらいであろうかと思います。
たとえば、50という値を付けた方は、ともすると潔癖症的なところがあると思われます。「Bの土地はなんだかむさくるしいから、どうせ買うならAのようにすっきりした土地を」というお考えでしょう。誠にもっともであると思います。
しかし中には、「購入資金には限りがあるから、周囲の環境面には多少目をつぶる」という方もいらっしゃいます。そうした人なら70〜75の値段をつけるでしょう。
では、売主は誰に売るでしょうか。もちろん、最も高値を提供してくれた人に売るに決まっています。つまり、75の価格を付けた人です。そしてそれが売買事例となり、地価相場となります。つまり、Bの土地の時価は75となるわけです。
今の事例をベースとして、ここで地価相場がわかっている場合の土地の評価方法(土地の個別的要因をどう考えるか)について確認しておきましょう。
最初に自分が土地の買主であると考えます。そして第一段階として、その土地に自分ならいくらの値を付けるかを買主の気持ちで考えます。
次に第二段階として、自身の考えはさておいて、そうした土地を最も好むであろう買主の発想をイメージした上で、その人ならいくらまで提示するかを考えます。そして、それを最終の評価額とするのです。
これだけでまず「当たらずといえども遠からず」の域に達することができるでしょう。少なくとも路線価評価の補正率よりもずっとレベルが上となります。
土地の価格は「接面道路の良否」に左右される
ところで、上記の写真Aと写真Bの土地はどこが違ったのでしょうか。
ズバリそれは道路。もっと言えば道路幅です。同じような地域の土地であれば、道路条件(特に道路幅員)がその土地の価値に決定的な影響を与えます。
ではなぜ、道路幅が広いことがそれほどにも好条件になるのでしょうか。確かに写真Aの道路であれば車もスムーズにすれ違えるでしょう。写真Bでは小さい車がやっと通れるだけです。
しかし筆者は、そうした通行等の機能的側面が格差の本命ではないように思います。つまり、写真Aの道路やそれに接面している土地は、理屈抜きにいいのです。半面、写真Bはどうにも貧相です。
そして、この「理屈抜きの感覚」が大切です。この感覚を養成していただきたいのです。そして、この感覚こそが「見て判断する」の源泉を構成しているわけです。
ところで今見たように、よい土地とはよい道路に面した土地のことです。ですから、土地の価格は接面道路の良否に左右されるというのが土地評価の基本です。そのため、国税庁も各道路にその良否に応じて格差・価(あたい)を付けた路線価を設定し、それに基づき土地の評価をしています。
このように路線価をベースに土地を評価するという考え方は、実に合理的です。
もう一つ例を考えてみましょう。下記の図表2は、同じ道路に並んでいる同じ面積の二つの土地です。B地の単価(時価)を100としたときに、A地の単価はいくらになるかを考えてみましょう。まずは買主になったつもりで推測してみてください。
[図表2]B地に対してA地の価格はいくらになるか?
事例も二つ目ですから、だいたい要領はおわかりかと思います。回答は40〜65くらいになるのではないでしょうか。そうであるとすると、65が時価ということになります。
しかし、ともすると売主はそうは考えません。売主は「土地の形状に合わせて家を建てればいい、道路側のふくらんだ部分は駐車場にでもすればいい」などとして、値は1割も下げれば十分売れるはず、などと考えます。しかし今日、土地の市場価格は買主が決めるものです。90では売れるはずがありません。
このような不整形地の価格差も、国税庁の定める評価規定では十分に反映されていません。今では多少ましになりましたが、以前はこのような土地でも95ぐらいに評価されていたものです。おそらく国税庁も売主の発想で評価しているからでしょう。