前回は、土地の評価で必要となる「理屈抜きの感覚」について説明しました。今回は、土地の評価に大きく影響する行政法規について考えていきましょう。

行政法規を満たしていない土地の値段は一気に下がる

土地の利用に関しては、都市計画法や建築基準法等の行政法規が、多くの厳しい規制を行っています。今までは、土地の評価は「いい土地かどうか見て判断すればいい」とお話ししてきましたが、実際にはこうした行政法規の規制という観点もそれなりに必要となります。

 

中でも、建築基準法が定める「敷地の接道義務」の規定は非常に重要です。これを満たしていない土地の値段は一気に下がってしまいます。そして現実にそうした土地がかなり存在・混入しています。

 

しかし、一般の人のほとんどはこの規定の存在を知りません。そして、相続税の評価規定も考え方は取り入れてはいますが、減額幅等はその実態をまるで反映していないのです。そこで、唯一この規定だけはぜひともご理解いただきたく、ここに簡単に説明します。

 

市街地の土地は、そこに建物を建てて利用することによりその価値が見いだされます。ところが、建物を建てることができない(禁止されている)土地は市街地に相当数あります。

 

こうした「欠陥敷地」(筆者の造語です。外部では通用しません)は、古い市街地では5〜10%程度は存在するのではないでしょうか。

 

「欠陥敷地」の発生原因は、建築基準法の第43条の規定にあります。すなわち「建物を建築する敷地は、建築基準法に定める道路に2m以上接面していなければならない」とする規定です。

 

この規定は昭和25年に制定されたもので、「敷地の接道義務」と言います。つまりこの規定を具体的に言えば、建築を可能とする敷地には二つの要件が必要となります。

 

まず敷地の間口が2m以上あること。二つ目は敷地が接面する道路は、建築基準法が認めたしっかりした道路(建築基準法上の道路)でなければならないことです。この二点のうち一つでも満たしていない土地の上には、建物を建てることが禁止されています。

 

立法趣旨は災害対策です。火事等に被災した時に、どのようにして逃げ、いかに救出するか。それには各建築物がしっかりした道路にきちんと接面していなければならないというわけです。

間口1.8mの敷地が存在する理由

とはいえ、「欠陥敷地」にも実際にはほとんど建物が立っています。つまり、その土地は再建築ができない土地ということになります。

 

「欠陥敷地」の発生過程には、連載第2回で紹介した面大減価が大きく絡んでいます。

 

たとえば戦後間もなくの頃までは、東京の山の手地区で住宅敷地の面積は60〜100坪が普通でした。しかし地価が高くなってくると、こんな広い土地は買い切れません。となると一般の人に買ってもらうための敷地の分割が必要になります。

 

その典型が、下記図表1のA地のような路地状敷地による2分割、さらにはB地のように私道を造成した上での4分割です。

 

[図表1]路地状敷地の分割

 

ここで問題になるのは、A地のような路地状敷地の間口が2mあるかどうかです。実は昭和50年より前の敷地分割では、尺貫法による1間(1.81m)の長さのものがかなり多かったようです。下記の図表2がそれに該当します。

 

[図表2]間口1.8mの家

 

しかし、皆さんはこの写真の土地の間口にそう違和感を持たれないと思います。こうした土地は世の中にかなり存在しているからです。しかし、それらはあくまで「欠陥敷地」です。

 

ちなみにタクシーなどの一般の車の車幅は、ほぼ1.8mです。つまりその路地部分に車が入らないと思われる土地は、アウトということになります。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『相続税を減らす不動産相続の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税を減らす不動産相続の極意

相続税を減らす不動産相続の極意

森田 義男

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策の成否は「土地の相続税評価をいかに行うか」にかかっています。 しかし、専門家であるはずの税理士や金融機関の担当者等が、まったくと言っていいほど不動産を知らない状況にあるとしたら…。 本書では二十数…

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