広大地評価への取り組みを聞けば税理士の実力が分かる
では腕のいい税理士はどのように探せばいいのでしょうか?
たとえば知人から紹介を受けるのは有力な手段です。ネットを当たってみるのもいいでしょうし、さらには書店に並んでいる本で探すのもいいでしょう。とはいえ、本来は何らかの形で事前に探しておくべきことであると言えます。
選んだ候補者(税理士)とは面談すべきです。面談の際にポイントとなるのは、各土地の評価をどのように考えているかを聞くということです。
また、税務署に強い人であるかどうかは、広大地評価への取り組みを聞けばすぐにわかります。さらに、その税理士とあなたがウマが合うかどうかも、選ぶ際の重要なポイントとなります。税務申告、さらにはその後の税務調査までを考えると、税理士との付き合いは長丁場となります。やはり、サービス精神があって、頼りがいのある人が望ましいでしょう。
いろいろと検討した結果、ダメだと思った税理士には遠慮なく断りを入れるべきです。力関係から言えば、発注側である依頼者が強いのです。断ることに後ろめたい思いをする必要はありません。
また、中にはいろいろな事情によって、以前からつながりのある「先生」に依頼せざるを得ない状況の方もいることでしょう。その場合は、その税理士を先に紹介した「不動産に強い」「税務署に強い」「依頼者に強い」の三要素に少しでも近づけるべく、さまざまに注文を出すべきだと思います。
たとえば、「この土地はこういう状況にあるから、○○の規定が適用できるように思うがいかがか」「こういう状況の配偶者名義の預金があり、自分はこう考えているのだが、先生はどのようにお考えか」といった具合にです。
「すべてお任せします」は好ましくありません。これをやってしまうと「震え評価」のオンパレードになりかねません。あれやこれやと注文を出して、プレッシャーをかけるべきです。
もし、土地の評価がまったく不得手な税理士であれば、その部分だけを得意としている税理士に任せるという手段もあります。いわば下請けに出すわけです。筆者もこの下請けを何度かやった経験があります。
一方、まったくそうした余地がないのであれば、申告書提出後にタイミングを見計らって、資産税に強い税理士に相談して更正の請求等を行う段取りを整えるべきでしょう(更正の請求についてはこの後すぐに説明します)。
繰り返しますが、「最大の相続税対策は税理士の選択」です。くれぐれも画竜点睛を欠いてはなりません。この点を強調しておきます。
「ダメ元」でも相談してみる価値あり!?
税は追徴されることがある一方、還付されることもあります。そこで、本連載の最後に税の還付についてお話しします。
さて、何かの勘違いで税が過大となる申告書に基づき、余分な税を払ってしまった場合はどうなるのでしょうか。この場合は(申告書を訂正するという意味の)「更正の請求書」を提出します。そして、税務署がその請求が妥当であると認めた場合に、その分の税が還付されることになっています。
ただし更正の請求は、元となる申告書の申告期限から5年(申告期限が平成23年12月までのものは1年。ただし5年以内であれば嘆願等によりほぼ還付が可能でした)以内に行わなければなりません。5年を超過すると時効となり、請求自体ができなくなります。
とはいえ、そうそう申告書の記載を間違えることはないでしょう。ところが相続税の申告に限ってはこれがかなりあります。それは土地の評価でなされていた大量の「無難な評価」「震え評価」の存在です。
実は、こうした土地評価の実態が認識された何年か前、一部でこの相続税の還付の請求がかなりはやったものです。
やり方はダメ元の成功報酬スタイルが主流。つまり申告書を見せてもらうことにより、各種の土地の調査を実施し評価の見直しを行います。そして実際に還付された場合に限り、還付額の3〜4割の報酬を支払い、ダメだったら一切の費用や報酬はなし、という仕組みです。
実は私のところにも、仲間から少なからずそうした申告書が持ち込まれたものです。そして当時は、申告期限後1年を超える事案は、還付を受ける権利としての更正の請求ではなく、還付をひたすらお願いする形の「嘆願」とされていました。
しかしそうした「嘆願」でも、(還付額を値切られはしましたが)税務署はそれなりに良心的に還付してくれたものです。ちなみに持ち込まれた申告書のうち還付請求可能なものの割合は9割を超えていたように思います。そしてそのうちの8〜9割見当が還付されたと思われます。
先に「相続財産にいくつもの土地がある場合には、通常で少なくとも5〜10%、広大地が絡んでくれば軽く20〜30%程度の余分な税を払っている」とお話ししました。それはこの更正の請求や嘆願の依頼を受けた経験から導いた数値です。つまりいかに「無難な評価」等が蔓延しているかを如実に示していると言えましょう。
この現実については、基本的には今も変わりはありません。さらにその「ビジネススタイル」も変わっていないように思います。したがって、5年以内にこうした相続税の申告を行った方は、ダメ元で相談されたらいかがかと思います。