最大の相続税対策とは「腕のいい税理士」に頼むこと
今までの連載で、相続税対策に関していろいろ述べてきました。それでも本連載での話はごく限られたものにすぎません。それ以外にも、いろいろなケースに応じた各種の方法があります。
しかし読者の皆さんからすれば、「いろいろある中で、自分にとっては何が最適な対策なのか。それをはっきり示してほしい」という話にもなりましょう。いやもっと言えば「ごちゃごちゃした話はいいから、最も効果的な相続税対策は何なのか、それを聞かせろ」という要請がなされるように思います。
それにズバリお答えします。それは相続発生時に「腕のいい税理士に依頼すること」です。
相続税対策は前段(相続開始前に行うもの)と後段(相続発生後に行うもの)の二つに区分できます。むろん双方ともが重要です。そして、後段の対策の扇の要に位置するのが、この税理士の選択というわけです。
選択した税理士の腕のよしあしは大変な重みがあります。また相続人が求めているのは節税だけではないはずです。何より円満な遺産分割、さらには税務調査への恐怖感の除去もありましょう。
事前の相続税対策がしっかり行われている場合であっても、税理士の選択はゆるがせにできません。すでになされた対策を生かすも殺すも、税理士がどのような申告書を作成するかがすべてだからです。
この「腕のいい税理士」には三つの側面があります。それは「不動産に強い」「税務署に強い」「依頼者に弱い(優しい)」の三点です。これらすべてを満たしていれば最高ですが、そんな人はおいそれとはいません。ともすると多くの税理士は三戦全敗と言わざるを得ないのですから・・・。総論はこれぐらいにして、具体的に述べていきます。
大半の税理士の間に蔓延する「震え評価」
依頼した税理士が「不動産に強い」人であるかどうかは、絶対的な要件と言えましょう。
まず一般の税理士に、評価規定をしっかり使いこなす力量が備わっているかどうかは、かなりの疑問と言わざるを得ません。ましてや「土地の評価額をいかに引き下げるか」という内容に関しては、そのほとんどの対応は困難となります。
そもそも土地の評価規定は、そうかっちりしたものではありません。その解釈には幅があります。たとえば「(騒音等の特殊事情に起因して)付近の土地に比べて利用価値が著しく低下している場合には、評価額を1割減にする」という規定があります。
しかし、この「利用価値が著しく低下している」のように漠然としたことを言われても困ってしまいます。下手にこれを適用すれば、後日の税務調査で「そこまでは利用価値は低下していない」などと言われてしまう可能性があります。
場合によっては、税理士の顔色を見ながら「この評価は低すぎるんじゃないですか」などと、ダメ元で鎌をかけてくるかもしれません。
評価に自信があれば、そのような指摘は即座に否定することができます。しかし、自信がなければ、「低すぎる」と言われたらどうしようと不安になります。それにより評価額が否認されれば、過少申告加算税等を含め追徴を受けてしまいます。大切な顧客の信頼を失ってしまうのです。
こうした不安を除去するために、税理士は「無難な評価」を行います。否認されないような無難な評価、つまり減額規定を適用しないままの評価です。税務署は「評価が高すぎるから評価を下げなさい」とは言ってこないからです。
これであれば御身は安泰で、顧客の信頼を失うこともありません。とはいえ実態は「無難な評価」というより「震え評価」と言うべきかもしれません。
土地の評価規定には解釈や判断を要する部分がかなりあります。地主層が所有する複雑な土地は、そうした部分がてんこ盛りです。とりわけ今日「広大地に該当するかどうか」の判断は本当に微妙な域にあります。しかし、大半の税理士は、少しでも疑義があると「無難な評価」に逃げ込みます。そしてこれがかなり蔓延しているのです。
したがって、相続財産にいくつもの土地がある場合には、通常で少なくとも5〜10%、広大地が絡んでくれば軽く20〜30%程度の余分な税を払っていると考えられます。相続税は累進課税です。評価額の10%の減少が減らす税額は15%近くに拡大するという事情もあるからです。
やはり税理士の選択は、節税面で圧倒的に重要であると考えます。