「基準地価」「公示地価」「路線価」の違い
不動産の取引価格は買い手と売り手の合意で決まるもので、定められた公式があるわけではありません。
しかし公的な指標がなければ、売買のみならず納税額の決定などで、何かと困ってしまいます。そこで、土地に関しては政府などが目安となる地価を調査・公表しており、それが相続時の評価や公共事業のための用地買収などで活用されるとともに、一般の取引でも売買価格の参考として用いられています。「基準地価」はその一つであり、他にも「公示地価」や「路線価」などがあります。
それぞれの違いについて簡単に解説します。
基準地価とは、各都道府県が毎年発表する7月1日時点での土地の価格のことです。自治体から依頼を受けた不動産鑑定士が、全国で2万ヵ所を超える「基準地」を調査対象として、1ヵ所につき1名以上で鑑定・評価し、毎年9月下旬に1平方メートルあたりの価格が発表されます。
基準地価は、都道府県や政令指定都市が国土利用計画法に基づく土地取引規制の基準として用いるために調査されますが、実際の取引価格を100とした場合、基準地価は70~80になるケースが多く、一般の不動産取引でも参考指標として使われます。
公示地価は、国土交通省が毎年発表する1月1日時点での土地の価格です。土地の取引価格の指標や、公共事業用地の取得価格の算定基準になるもので、3月下旬に発表されます。
基準地価との違いは、調査発表の時期が約半年ずれていることと、各基準地点を調査する不動産鑑定士の人数が2名以上でより丁寧な調査が行われること、調査範囲は基本的に都市計画区域に限定されており、その他は調査対象にならないことです。
路線価は相続税や贈与税を課税する際に土地の評価額を算定するために用いられ、その土地に面している道路ごとに設定されています。毎年1月1日を評価時点として評定され、国税庁より7月1日に発表されます。
基準地価をチェックして適正価格を知る
基準地価は、国土交通省のWebサイト「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」で公示地価と一緒に公表されています。
検索条件指定で、「都道府県地価調査のみ」にチェックを入れると基準地価を、「地価公示のみ」を選ぶと公示地価を調べることができます。「地価公示・都道府県地価調査の両方」を選ぶと、両方が検索結果に表示されます。
公示地価も同じですが、基準地価は「千代田-1(東京都千代田区六番町6番1外)」や「品川-1(東京都品川区荏原2丁目234番14)」など、基準地点ごとの1平方メートルあたりの地価として発表されます。基準地点の数が多いので、特定のエリアの土地の評価額や、その推移を調べる際に役立ちます。
物件を購入する際は、一般的に土地と建物をセットにした価格で考えることが多いでしょう。しかし、自分が購入を検討している物件に近い基準地の地価やその推移を把握しておくと、その物件の適正価格を判断しやすくなります。
各基準地点は、住宅地・商業地・工業地・林地といった用途別に分けられており、統計情報では住宅地別や商業地別の推移なども公開されています。このような統計情報は、不動産の全体的な動向を把握する際にも活用できます。
今後も首都圏の地価は上昇が期待できる
最後に、最新となる2019年7月1日時点の基準地価を見ておきましょう。
まず、東京を筆頭に大阪圏や名古屋圏などの大都市の地価上昇が目立ちます。特に東京圏は全用途の平均価格が前年比+2.2%、住宅地限定で+1.1%と伸びており、都内の物件に投資する人には、依然として追い風と言えそうです。
一方地方圏は全用途で-0.3%、住宅地限定だと-0.5%と地価が下がっています。少子化による人口減少や、地方から都市部への人口流出が影響しているようです。
都内では23区が大幅に上昇しており、23区すべてで住宅地が上昇しています。特に荒川区(+8.6%)や豊島区(+7.9%)、台東区(+7.6%)といった都心5区(千代田区・港区・中央区・渋谷区・新宿区)の隣接エリアの上昇が目立ちました。
ここ数年は、アベノミクスによる金融緩和や2020年東京五輪の開催決定、インバウンド(訪日外国人旅行客)の増加などを背景に都心部の地価は大きく上昇していましたが、その周辺にも地価上昇が波及してきたと言えるでしょう。
最近の不動産投資は家賃収入というインカムゲインが重視される傾向にあるため、地価上昇がすぐに利益に直結するわけではありません。しかし将来物件を売却して投資を手仕舞いする際、地価上昇は物件価値の下落を防いでくれます。不動産投資を始める場合は、今回取り上げたような地価の情報もしっかりと押さえておき、ある程度の出口戦略を見据えた上で取り組む必要があるといえるでしょう。