米民主党予備選スタート…金融関係者が好意的に見たのは誰か?

米大統領選に向けた民主党候補者選びの緒戦となるアイオワ州党員集会で、集計作業が終了した。老齢な候補者が目立つなか、39歳のブティジェッジ・前インディアナ州サウスベンド市長が、サンダース氏らを抑え一歩リードしている。Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bankの長谷川建一CIOが解説する。

米民主党予備選がスタート ブティジェッジ氏が優勢

米大統領選に向けた民主党候補者選びの緒戦となるアイオワ州党員集会で、集計作業が終了した。得票率はブティジェッジ・前インディアナ州サウスベンド市長が26.2%、サンダース上院議員が26.1%と、わずかの差でブティジェッジ氏がサンダース氏を破った。3位はウォーレン上院議員で得票率18%、4位はバイデン前副大統領で15.8%、クロブシャー上院議員は12.3%で5位だった。

 

世論調査で一時首位に立ち、大統領候補選をリードしているといわれてきた中道・穏健派のバイデン氏は4位に終わったことで、今後の選挙活動に不安を残すと結果となった。一方で、民主党の中道・穏健派の期待をブティジェッジ氏が担い、今後の民主党予備選の目玉候補となる可能性も急浮上した。

 

今年74歳になる現職大統領に勝てる候補を選ぶという点で、民主党員は頭を痛めてきたが、ブティジェッジ氏は38歳と若く、ほかの民主党の候補も皆70歳を超える高齢であるなか、対抗馬としては、新鮮に映るだろう。トランプ大統領が右寄りで強烈な個性と主張をする人物であることに対して、中道かつ穏健でスマートな候補者に乗るという選択は、案外、民主党内で心地よいかもしれない。筆者は、ブティジェッジ氏がダークホースとして浮上することはあり得ると考えていたが、他州で実施される民主党予備選で、より広く支持を集める展開は十分にあるだろう。

 

ちなみに、ブティジェッジ氏は、マルタからの移民の子供(ただし父親は名門ノートルダム大学の教授)で、ハーバード大学を優等の成績で卒業後、英国のオックスフォード大学に留学した頭脳明晰な人物である。大学卒業後は大手コンサルタントのマッキンゼーに勤務。2012年に29歳でサウスベンド市長に就任し、当時の米国で10万人以上の人口を有する最年少の市長となった。2014年のうちの7ヵ月間を、アフガニスタンで従軍した経歴もある。自ら同性愛者であることも公表しており、2018年に結婚した夫がいる。こうして経歴を書くと、トランプ大統領とは、似ても似つかわないことがわかる。トランプ大統領にとっては、対立候補としてやりにくい相手かもしれない。

 

米民主党予備選がスタート
米民主党予備選がスタート

サンダース氏ら左派組は富裕層への課税強化を提案

さて、ブティジェッジ氏はテレビ討論で見る限り、落ち着きがありバランス感覚を感じさせて、他候補の老練な政治家よりも存在感があるように感じる。主張も、ほかの民主党候補、特に左派が提唱するような急進的な政策は採用せず、問題解決型の現実主義的なアプローチがなされると評価(期待)がされている。金融業界に対する見解も具体的には出てきていないが、資本主義の長所にも理解がされているとして、金融関係者にも好意的に受け止めているようである。

 

対抗するサンダース上院議員は、米国の連邦予算の約25%を占めている社会保障をさらに拡充する意向である。大学や医療費の無償化など広範な歳出プログラムを提示しており、仮にそれらが実現すると、今後10年で米国の財政赤字を18兆ドル上積みすることになるという試算がある。エリザベス・ウォーレン上院議員も、左派ぶりはサンダース氏以上で、米紙ニューヨーク・タイムズの計算では30兆5000億ドルの費用が上積みされるという。

 

歳入では、大規模歳出の財源として、サンダース氏もウォーレン氏も富裕層への課税強化を提案している。しかし、上述のような大規模は歳出の増加を補って余りある歳入を確保できるかどうかは疑問である。こうした政策の主張は、結果として、次の世代に多くの借金を背負わせることになるという批判もある。ただ、富裕層向け課税は、合衆国憲法違反にあたるとの異論もあり、実現性は見通せない。

 

ブティジェッジ氏陣営は、財政赤字の拡大ははるかに小さいと主張しているようである。ヘルスケアや教育の分野で政府が関与することを手厚くするが、一本化して有権者の選択肢を奪うことになるとして、民間セクターを排除する計画はないとしている。企業には、需要増加に対応するための設備や新技術向け投資を積極化させる政策を採るという。全米でブロードバンドや教育、職業訓練などに工夫して賢く投資することで、米国の労働力の競争力を高められると主張している。

 

次の予備選は、2月11日に実施されるニューハンプシャー州予備選で、前半の山場は、大票田のカリフォルニア州を含む予備選が集中する3月3日の「スーパー・チューズデー」である。ダークホース的な位置につけ、追う立場だったブティジェッジ氏は、もともとアイオワ州予備選で1位を獲得し、ニューハンプシャーでも上位につける戦略で、両州での選挙運動に集中してきた。狙い通りアイオワを制したブティジェッジ氏が、全米でブームを巻き起こせるかどうか、8年前のオバマ旋風を思い起こすような展開となるか、注目しておきたい。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

京都大学卒、MBA(神戸大学)。
シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。

WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

長谷川建一氏登壇のセミナー https://gentosha-go.com/articles/-/13973

著者紹介

連載香港発!グローバル資産防衛のためのマーケットウォッチ

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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