60歳で定年退職し、老後は料理上手な妻と一緒にカフェを始めようと考えていた山本さん(仮名)。子どもたちがプレゼントしてくれた温泉旅行の最中、満を持して妻に打ち明けると、驚きの返事が返ってきました。いったいなにがあったのか、定年後の「セカンドライフ」で起きる“思わぬ事態”について詳しくみていきましょう。FP Office株式会社の一二三幸恵FPが解説します。

冗談だよな?…退職金1,800万円・60歳の元サラリーマン、定年祝いの「箱根温泉旅行」で天国から地獄に突き落とされた“妻のひと言”【FPが解説】
定年後の「セカンドライフ」にワクワクが止まらない
〈家族構成〉
夫:山本直人さん(仮名61歳)
妻:紀子さん(仮名55歳)
子:2人(独立済み)
直人さんは大手食品メーカーの営業として、新人時代から国内外のレストランやホテルを飛び回る日々を過ごしていました。当時の日本はバブル期と呼ばれる好景気で、仕事は忙しく、家に帰れない日も少なくなかったといいます。そこから営業一筋30年、53歳で営業部長にまで昇りつめました。
ある日、そんな直人さんから筆者のもとに連絡が。
「実は……お菓子作りが好きな妻のために、退職後にカフェを始めようと思っている。まだ妻には内緒だが、きっと喜んでくれると思う。資金的に問題がないなら60歳で退職したらすぐにでもカフェ開店に向けて動きたいと考えているから、現状の資金と年金で大丈夫か家計をみてほしい」
そこで早速、山本家の家計状況を確認。退職金の1,800万円を考慮すると、過度な贅沢さえしなければ定年後にカフェを開いても大丈夫そうです。それを聞いて安心した直人さんは、同期が継続雇用で65歳まで働くなか、60歳で退職してカフェを開く決意を固めました。
直人さんが無事に定年を迎えたその週末、帰省してきた子どもたちが「定年のお祝いに」と箱根温泉旅行をプレゼントしてくれました。
「そうだ、この温泉旅行でサプライズしよう。喜ぶ顔が目に浮かぶな……」
そう考えた直人さんは、早速スケジュールを組んで旅行へ出発。夫婦で温泉を楽しんだあと夕食に舌鼓を打ち、デザートが運ばれてきて一息ついたころ、直人さんは満を持して、自分が密かに考えていたカフェの夢を紀子さんに伝えます。
「今まで仕事が忙しくて一緒にいる時間もあまり作れなかった。老後はお前の好きなお菓子作りを活かして、一緒にカフェを開こう」
直人さんは、紀子さんから喜びと感謝の言葉が出てくるのを期待していました。しかし、紀子さんからは予想外の答えが返ってきたのでした。