日本に危機感を覚えた筆者は、「めんどくさい他国」を選んだ

『なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?』(幻冬舎MC)を上梓した小林邦宏氏は、「東大から財閥系商社」というキャリアを投げ捨て、アフリカ・ケニアのバラ農園との取引をたった一人で開拓した。日本企業がほぼ入っていない国で、どうやってビジネスチャンスを掴んだのか。本連載では、同氏の軌跡を追っていく。

超・少子高齢化により、すべてが縮小し続ける日本

世界的にも類を見ない「超高齢化社会」に突入した日本。65歳以上の高齢者の数は現在、3,588万人を超え、全人口に占める高齢者の割合は28.4%で過去最高となっています。これは、日本と同じく高齢化が進むイタリアの高齢化率23%を大きく上回るパーセンテージであり、日本はずば抜けて高齢者の割合が高い国といえます。

 

その一方で、少子化もまた進行しています。2017年に、国連が類推した世界全域における年少者(0~14歳)の人口の割合は26.1%ですが、日本はその割合が12.3%と半分以下の水準となっています。

 

出生数に関しても、1975年に200万人を割り込んでから、減少傾向にあります。2016年の出生数は97万6,978人となり、1899年の統計開始以来、初めて100万人を下回りました。このままの流れでいけば、2060年には高齢化率が40%近くになり、総人口も1億人を割って9,000万人程度になると予想されています。

 

人口というのは、その国の将来的な成長の一つの指針となります。人口が増えれば労働力や消費が拡大し、それが経済成長の原動力となります。逆に少子高齢化が進むと、労働力不足や社会保障費の増大などで国内市場は縮小し、経済成長は鈍化する傾向があります。

少子高齢化を「対岸の火事」と捉える日本の中小企業

少子高齢化というのは、すでに何十年も前から指摘されてきた現象ですが、それに危機感を抱き、ビジネスモデルを変革してきた企業がどれくらいあるでしょう。特に中小企業においては、いつまで経っても「対岸の火事」であり、日本市場がどんどん縮小していくという事実と真摯に向き合っているところは少ないように感じます。

 

国内消費が減っていけば、その分だけ、国内の限られたパイを巡る企業間の競争は激しくなります。体力勝負になれば、中小企業は大企業には到底勝てませんから、まずは中小企業からどんどん姿を消していくことになるでしょう。

 

そんな負のループから逃れるための有力な選択肢となるのが、世界を舞台にビジネスをつくることです。世界に目をやれば、人口は増え続けています。世界にはまだまだ、ビジネスチャンスが眠っています。

 

◆各国の人口予想からビジネスの可能性を探る

 

世界の人口は発展途上国を中心に増え続け、2050年には97億人を超えると予想されています。

 

人口が多い国といえば、すぐに思い浮かぶのが中国でしょう。現在の世界人口は約77億人ですが、中国の人口は約14億人であり、だいたい5人に1人が中国人という計算になります。ちなみに2位はインドで、約13億人。両国だけで世界の総人口の37%を占めています。

 

ただし、国連の「World Population Prospects 2019」によると、中国の人口の増加は2030年で頭打ちとなり、そこから減っていくと予想されています。その代わりに1位となるのがインドです。2030年には人口が逆転し、そこからさらにインドでは人口が増加していくという予想となっています。

 

インドのほかにも、人口が爆発的に増加する発展途上国がいくつもあります。例えばアフリカでは、全54カ国の人口が2050年には約25億人になると予想され、全世界の4人に1人となる見通しです。アフリカでは人口の6割を若年層が占め、経済成長と市場拡大が予想されています。このように、各国の人口の予想だけ見ても、どの国が将来ビジネスの中心となる可能性が高いのか、その一端が見えてくるものです。

世界の動向やニュースに常にアンテナを張る

本記事を読んでいる方のなかには「世界でビジネスをするのに興味はあるけれど、何をきっかけにしてどのようにビジネスをつくればいいのか、皆目見当がつかない」という人もいるでしょう。

 

世界市場の扉を開くための最初の一歩は、世界に目を向け、興味関心を持つことです。そして、世界に目を向けるのは、早ければ早いほどいいと僕は思っています。

 

今すぐビジネスを立ち上げるかどうかは別として、世界の動向やニュースに常にアンテナを張っていれば、いつか自分が「ピンとくる」情報と出会い、ビジネスへとつながる可能性があるからです。

本当にリアルな情報は現地にしか落ちていない

◆インターネットと上手く付き合う

 

世界の情報を集める際、インターネットによる収集をメインにする人は多いでしょう。インターネットの発展により、「世界で今何が起きているか」がリアルタイムで把握できるようになりました。

 

SNSを見ると、世界各国のデモやストライキ、紛争といった情報がすぐに目に飛び込んできます。入り口として、SNSを使った情報収集は確かに有効です。

 

しかし、インターネットを通じて得た情報がそのままビジネスにつながることは、個人的な経験としては皆無です。本当に得をする情報や誰もが利益を得られるような情報というのは、インターネットには上がってきません。もしあったとしたら、それには裏があると思ったほうがいいでしょう。

 

例えば、「最高の立地にあり、今後必ず値が上がる」と誰もが感じるような物件の情報が、不動産屋さんのウェブサイトで紹介されるでしょうか。

 

不動産屋さんの立場から考えれば分かるのですが、そんなすばらしい物件があったなら、インターネットで情報を公開してその売り先を見ず知らずの人から探すよりも、まずは上得意やお世話になった人など、自分が信頼している顧客に対して声を掛けるはずです。

 

このように、不特定多数に公開されている情報というのは、「直接ビジネスを作る」という意味においてはほとんど役に立たないと考えたほうがいいでしょう。

 

では、ビジネスにつながるような質の高い情報を得るには、どうすべきか。先ほどの不動産屋さんの例でいえば、自らが「不動産屋さんから信頼される人」にならねばなりません。

 

ビジネスにおいて信頼されるには、その人と何度も会い、フェイストゥフェイスで会話をして、人間関係をつくっていくのが大切です。

 

僕が世界中でビジネスをつくってこられた大きな理由は、徹底した現場主義にあると思っています。真にリアルな情報は、現場にしかない。これが僕の経験則であり、フリーランス商社マンとしての経営哲学の一つです。だからこそひと月に世界一周をするほどの距離を、飛び回っているのです。

「ビジネスチャンス」が眠る国の特徴

僕は1年の半分以上を海外で過ごしていますが、もちろん闇雲に国々を渡り歩いているわけではありません。「この国にはきっとビジネスの種が眠っている」という僕なりの確信があるからこそ、日本から時間と費用を掛け、はるばる足を延ばすわけです。

 

ただ、たくさんの数の国を巡ってきたなかで、僕がより多く渡航している国々には、ある程度の傾向があります。どんな国にどのようなビジネスの種があったか、全体的な傾向から述べるとするなら、「あまり知られていないような国にこそ、ビジネスチャンスが眠っていることが多い」といえます。

 

日本の中小企業において「海外でビジネスをする」となると、まず思い浮かべるのは「人件費が安い」という印象の国々でしょう。中国、インドネシア、タイ…バブル期以前は、こういったアジア圏の国々の人件費は、日本に比べ大幅に安く、製造業を中心として海外に拠点を構える企業がよく見られました。そのイメージはいまだに根強く残っているようです。

 

しかし現在では、こうした国々において、人件費は必ずしも安くはありません。首都や産業都市といった発展している地域では、日本と同等以上の水準で生活する人々もたくさんいて、人件費も当然高くなっています。ビジネスの種を探しに行くならともかく、「安いから」という理由でアジア圏に進出しようと考えるのは、もはや時代に合っていません。

 

アジア圏を除けば、日本人にとって比較的なじみがあるのはアメリカ大陸やヨーロッパの先進国です。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス…こうした国々では、日本人にも受け入れやすい資本主義的な商習慣が主流となっています。ただ、逆にいえば、そんな「とっつきやすさ」は、ライバル企業にとっても同じであり、実際にあらゆる分野にはすでに先人がいて、そこに切り込んでいくには多大な労力が必要になるでしょう。

 

このような、誰もがイメージできるような海外へのアプローチ方法では、なかなかビジネスをつくることはできません。むしろ日本人にとってはマイナーな「思いがけない国」にこそ、これまで日本にはなかったような新たなビジネスの種が存在している可能性が高いです。

 

そしてまた、すでに市場が成熟してなかなか介入の余地がない先進国よりも、これから人口が増加し、市場も発展していくであろう発展途上国のほうが、ビジネスフロンティアであるといえます。

「めんどくさい」「危ない」「遠い」国に行く

僕がビジネスチャンスを感じる国を、発展性や市場などの要素はさておき、単純にわかりやすく表すとするなら、3つのポイントが挙げられます。

 

まず、「めんどくさい国」。例えば、時差の関係で深夜にもやりとりが発生したり、ビジネスの価値観や商習慣があまりに違ったりするなど、日本人にとって煩わしい事情がたくさんある国には、ライバルも少ないといえます。

 

「危ない国」もまた、人が行きたがらないところです。ただし、紛争が多発しているような本当に危険な国や、明らかに治安の悪い地域には、もちろん僕も行きません。ではどういった国に行くかといえば、例えばパキスタン。テロのイメージが強く、日本の外務省が渡航中止を勧告するような地域もありますが、その一方で、安全とされる地域にきちんとした準備をしていけば、そこまで危険な目には遭わないというのが僕の経験上の結論です。

 

危ないという印象だけが先行し、実情があまり知られていない国というのも、一つの狙い目であると思います。ただし、こうした国々へと出掛ける際には、十分過ぎるほどの下準備と、常に現地の人と行動をともにしたり、ボディガードを雇ったりするなどの安全対策が求められますから、ハードルが高いかもしれません。

 

パキスタンのボディーガードと。
パキスタンのボディーガードと。

 

「遠い国」は、最もわかりやすいと思います。日本から36時間も掛けてようやく到着するような辺境地域でビジネスをつくろうとする人はなかなかいない分、チャンスが多いといえます。

 

こうした国々には、大企業はまず目を付けません。リスクが高い割にリターンが薄いケースがほとんどだからです。この理由が、そのまま中小企業のチャンスとなります。

 

人と同じ場所に行って同じように探していては、すばらしい商材にはまず出会えません。逆に、人が行かない国に行き、ニッチで品質の高い商材を見つけ出し、日本の人々のもとへ届けられれば、その市場は独壇場となります。

 

めんどくさい、危ない、遠い国で、大企業が避けるような小規模取引の種を撒き、それを積み上げていくというのが、中小企業にフィットしたビジネスのやり方であると僕は考えています。

 

 

小林 邦宏

株式会社グリーンパックス 専務取締役

 

株式会社グリーンパックス 専務取締役

東京大学卒業後、住友商事株式会社の情報産業部門に入るも、世界を旅しながら仕事をするという夢が諦めきれず、28歳で商社を起業。花、水産物、オイルなど、さまざまな商品の卸売りを始める。

中国などアジアを中心にビジネスをしていたが、「中小企業は大手と同じことをやっていては生き残れない」と考え、南米、アフリカ、東欧、中近東など、「人が行きたがらない場所」に行って、知られていないニッチな商材を見つけ、取引するようになる。情報番組への出演や、ラジオ局のゲストコメンテーター、講演業など、幅広く活躍中。

著者紹介

連載なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

小林 邦宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「東大から財閥系商社」というキャリアを投げ捨て、アフリカ・ケニアのバラ農園との取引をたった一人で開拓し、「世界の花屋」チーフバイヤーとして多くのメディアから注目を集める著者。 なぜ、財閥系商社を飛び出して「フ…

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