タイの富裕層、ケニアの運転手が教えてくれた「日本の需要」

『なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?』(幻冬舎MC)を上梓した小林邦宏氏は、「東大から財閥系商社」というキャリアを投げ捨て、アフリカ・ケニアのバラ農園との取引をたった一人で開拓した。同氏は、世界の花屋として活躍しているが、もう一つ、「水産業」の世界で貴重な経験を収めている。サケとサバの展開で失敗し、チリで食材を探すなか、「大ぶりのウニ」という新しいビジネスチャンスを手にしたのだ。

タイの富裕層が教えてくれた、ジャパンブランドの需要

僕のビジネスは、輸入業ばかりですが、そのほかに日本の商材を海外で販売する事業も行っています。

 

近年は、東京クラスの先進都市が、世界中で増えてきています。アジアで言えば、シンガポールやバンコクには富裕層が多く暮らしており、平均的な日本人よりもはるか上の収入を稼ぎ、それに見合った生活をしています。また、世界を回っていると、ジャパンブランドに対するポジティブなイメージを持っている国がたくさんあることが分かります。

 

日本から来る商材にプレミアムが付き、高額で取引されるような都市もあります。そうした状況が示すのは、輸出業にもビジネスチャンスがあるということ。昔は、日本といえば「高品質、高価格」と思われていましたが、現在はアジアの都市が発展し、アジアにおいて「日本は高品質の割に価格がリーズナブル」という印象を持つ人が増えています。ニーズさえ見つければ、かなり高い確率でビジネスになるはずです。

 

僕も現在、日本からタイのバンコクに向けた輸出業を行っています。きっかけは、ある取引先とタイ料理屋で食事をしたことでした。

 

彼は富裕層で、「バンコクのアッパーミドルは、食の安全は自分で確保している。そのため、ここのところオーガニックにこだわっている」と言います。安心できる食べ物を食べたい。彼のそうした願いは切実に見えました。

 

タイのアッパーミドルはオーガニックにこだわっている
タイのアッパーミドルはオーガニックにこだわっている

 

そこでバンコクのスーパーの市場調査をしてみると、有機野菜のコーナーがそれなりの広さで展開されていました。また、タイのオーガニックフードの草分けとされるオーガニックスーパー「レモンファーム」が、バンコクで店舗数を増やしていました。

 

タイという国の経済がいかに勢いがあるか、僕は肌で感じていました。今後、富裕層がもっと増えれば、有機野菜に対するニーズもさらに高まる…。僕はそこにビジネスチャンスを感じました。

 

日本に戻り、国内の有機野菜の市場を調べてみると、タイのような勢いはなく、スーパーの有機野菜のコーナーも狭いものでした。生産者である有機農家に話を聞くと、手塩に掛けた野菜をどこに売ればいいのか、悩んでいる人が多くいました。

 

有機農家の方々が、野菜に賭ける情熱は、半端ではありません。本当に手間暇を掛け、愛情を持って、最高の野菜を作っています。ただ残念ながら、その情熱を価値として評価してくれる人が今の日本にはほとんどいないため、有機野菜の市場が広がらないのです。

 

安心できるものを食べたい、タイの富裕層。

売り先に悩む、日本の有機農家。

 

ひょっとしたらこの二つを、僕がつなげられるのではないか。そうして2018年から手掛けているのが、日本の有機野菜をタイの小売店に卸したり、僕自身が現地でネット販売したりするビジネスです。「世界の花屋」などで培ったオンラインストアのノウハウが役立ちました。

 

まだ始まったばかりですが、最初は半信半疑だった現地パートナーも、僕の説得や実際の商品出荷を通じ、このマーケットに自信を持ったようです。今後もさらに成長していくという確信が、僕にはあります。

なぜだろう、と感じる出来事がビジネスの種になる

僕のこれまでの歩みを振り返ってみると、新たなビジネスが生まれる前には必ず、「なぜだろう」という疑問がありました。

 

なぜ、ケニアでバラなんだろう。

なぜブルガリアに、日本近海の貝がいるのか。

なぜ、オイル関連の相談が多いのか。

なぜタイで、オーガニックなのか。

 

そうした知的好奇心から、すべては始まっているように思います。世界を巡っていると、本当に知らないことばかりで、「なぜだろう」と感じない日などありません。世界中に散らばっている「なぜだろう」を拾っていき、その疑問を解決するために調べたり、行動したりするなかで、ビジネスの種が手に入ることがよくあります。

 

今のビジネスとまったく関係がないように思える出来事や情報に対しても、好奇心を持って調べていくことで、思い掛けないビジネスチャンスに恵まれることが増えてくるはずです。

 

そうしてビジネスの種が見つかったなら、あとは行動あるのみ。現地に行って、現状を知り、例えば日本の市場を調査し、隙間を探し、そこに入ってこじ開け、大きくしていく。それが僕のビジネスの広げ方です。

 

◆「空輸もの」を狙うのがカギ

 

本連載で述べてきたとおり、中小企業が大企業と同じ土俵に立ってしまうと、事業の難易度が格段に上がります。フットワークが軽く、小回りの利く中小企業だからこその、ビジネスを見つけ出さねばなりません。

 

商社という立場から、大企業がほとんど絡んでこない「狙い目」のビジネスを一つ挙げるとするなら、「空輸ビジネス」でしょう。

 

空輸ビジネスは、中小企業のマーケットとして代表的なものです。実際に、花や水産物など、僕が扱う商材のほとんどは、飛行機で飛んできます。飛行機便というのは、予定どおり到着しないこともよくあります。「土日だから会社は休み」というわけにはいきませんし、状況によっては夜中でもばんばん連絡が入ってきます。こうした飛行機の都合に柔軟に対応できる会社だけが、空輸ビジネスを手掛けることができます。

 

残業や休日労働の規制が厳しい大企業では、いつ来るか分からない商材を待ち構えているような働き方は、なかなかできないもの。だからこそ、空輸ビジネスが中小企業の独壇場となっているのです。

あえて真逆の売り方をし、先行者との違いを明確にする

もう一つ、僕がビジネスをするうえで意識してきたのは、「人と同じことをやらない」ということです。

 

ビジネスを立ち上げる際、それが誰も見たことのないまったく新しいものであればともかく、実際にはどんなニッチなものであっても、ほぼ必ず先行者が存在します。

 

商社は、すでに世にある商材を取引して利益を得るわけですが、そこで先行者と同じことをしていては、なかなか市場に食い込めません。同じ商材を扱うとしても、人がやっていないようなやり方を探して、ブランドやビジネスモデルを確立する必要があります。

 

例えばケニアのバラは、僕が扱う以前は、花が小ぶりで単色のものが、安く流通していました。日本市場では「ケニアのバラは○円くらいの価値である」という観念がすでにでき上がってしまっていました。

 

そこで僕はあえて、真逆の売り方をしてみようと考えました。「安かろう悪かろう」だったケニアのバラというブランドを、「高級で高品質」に変える。それが僕の描いたプランでした。そして売り出したのが、これまで日本市場には流通していなかった、「花が大ぶりで色は複色」のバラでした。

 

そのうえで、これまでのイメージを払しょくするべく「ケニアといえば大輪のバラ」というプロモーションをどんどん行いました。こうして「逆張り戦略」を取ることで、先行者との違いを明確に打ち出し、自らを差別化したのが、「世界の花屋」が軌道に乗った大きな理由の一つだと思います。

 

人がやっていないことをやるのには、当然困難が伴います。しかしそれを成し遂げるところにこそ、ビジネスの神髄があると僕は考えています。

飛び込んだ新規事業のうち、うまくいくのは1割程度

ビジネスには、「こうしなさい」というルールブックはありません。発想一つ、組み合わせ一つで、新たな事業が生まれます。僕の経験上、ひょんな思い付きが、ビジネスにつながるということは多くあり、閃きが大切だと思います。

 

この閃きに、才能は関係ありません。とにかくインプットを増やしていくなかで、徐々に閃くようになっていきます。

 

ただしこのインプットは、ひたすらインターネットで知識を集めるということではありません。実際にアクションを起こして、現場に行って、経験するなかで集まってくる生きた情報をインプットしていく。その蓄積が、新規事業へとつながるような閃きを生むのです。成功の確証が持てないからと最初から否定せず、とにかくアクションを起こすという姿勢でいると、結果的にビジネスが広がりやすくなります。

 

もちろん、水をやっても芽が出ないビジネスの種は、たくさんあります。僕の経験で言うと、例えば以前、カナダから豚肉の輸入をしたいと考えたとき。まずはカナダ大使館に話を聞いたところ、「素人では難しいと思うが、ひとまず話を聞いてみたらいい」とカナダのケベック州に養豚場を持つ生産者を紹介してくれました。

 

そこに赴き、生産状況から解体・食肉加工まで見せてもらい、ビジネスの仕組みの説明も受けましたが、結果としてメリットを見いだすことができず、事業化には至りませんでした。

 

ワインの輸入をやってみないか、という話もありました。もともとのワイン好きが高じて、出張のたびに世界中のワイナリーを巡っていたこともあり、自分としてはぜひやってみたいと思いました。そして、フランスのブルゴーニュに行って、現地の生産者に「ワインを輸入したいけれどどうしたらいいのか」と聞いてみました。

 

すると生産者は「それならまず2月にブルゴーニュに来て、土の状態をチェックして、そこからまた春に…」と、段取りを教えてくれたのですが、本気でやるならかなりの時間を取られそうで、ほかの事業と両立が難しいと感じ、結局諦めました。

 

僕の感覚で言えば、閃きを得て飛び込んだ新規事業のうち、うまくいくのは1割程度といったところです。そんなものか…と落胆する声が聞こえてきそうですが、たとえ1割であっても、自分だからこそ思い付けたような新規事業がものになったときには、中小企業にとっては十分な利益を会社にもたらしてくれます。

雑談から、ケニアのサッカー選手を紹介する事業へ

なお、自分の閃きを探求していくなかで重要なのは、「どんなアイデアもビジネスになりうると考えること」です。例えば今、僕が関心を持っている事業として、「ケニアのサッカー選手を世界に紹介する」というものがあります。

 

事の発端は、ケニアの車の運転手との雑談でした。ケニアの新聞に、サッカーに関する記事が載っていたことから、僕が冗談で「もうバラのビジネスは飽きたし、サッカーのビジネスでもやろうかな」と話したところ、運転手が「じゃあ知り合いにサッカー選手がいるから紹介しよう」と言ってきました。

 

ちなみにケニアには推定40以上の民族がいるとされていますが、そのなかでサッカーが強いのは、ルオ人、ルヤ人、カンバ人の三民族しかありません。運転手の知り合いの選手は、ルオ人とのことでした。

 

その後、個人的なつながりを通じて、ケニア代表チームの監督と知り合い、懇意になりました。彼は、ケニアのサッカーをより強くするため、国内リーグに外国人を増やすとともに、ケニア人選手をどんどん海外リーグに出してさまざまな経験を積ませたいと考えていました。そして僕に「ケニアの若い選手を海外に出す手伝いをしてくれないか」と声を掛けてくれました。

 

僕としても、国の将来を支える若者のサポートをすることでケニアに貢献したいという思いがあります。そうした流れから、ケニアのサッカー選手を、アジアを中心とした世界各国に紹介するという事業を、現在構築している最中です。アジアにも、興味を持ってくれている人がいます。

 

このように、意外なところからやってくる情報が、新たな事業の種になることが往々にしてありますから、やはり現地に足を運び、得た情報を柔軟に取り入れる姿勢でいるのが大切です。

 

 

小林 邦宏

株式会社グリーンパックス 専務取締役

 

株式会社グリーンパックス 専務取締役

東京大学卒業後、住友商事株式会社の情報産業部門に入るも、世界を旅しながら仕事をするという夢が諦めきれず、28歳で商社を起業。花、水産物、オイルなど、さまざまな商品の卸売りを始める。

中国などアジアを中心にビジネスをしていたが、「中小企業は大手と同じことをやっていては生き残れない」と考え、南米、アフリカ、東欧、中近東など、「人が行きたがらない場所」に行って、知られていないニッチな商材を見つけ、取引するようになる。情報番組への出演や、ラジオ局のゲストコメンテーター、講演業など、幅広く活躍中。

著者紹介

連載なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

小林 邦宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「東大から財閥系商社」というキャリアを投げ捨て、アフリカ・ケニアのバラ農園との取引をたった一人で開拓し、「世界の花屋」チーフバイヤーとして多くのメディアから注目を集める著者。 なぜ、財閥系商社を飛び出して「フ…

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