日本人「貧しい国への誤解」…ケニアのバラ園で痛感した事実

オンラインフラワーショップ『世界の花屋』。NHKの番組にも取り上げられ、インスタグラムのフォロワー数が約4万人となるプロジェクトにまで成長した。創設者の小林邦宏氏は「東大から財閥系商社」というキャリアを投げ捨て、「ケニアのバラ」を一大ブランドへと成長させたわけだが、ビジネスを展開するなかで、同氏はあることに気づいたという。

貧しい私たちを助けるという目的で購入するのはやめて

普段購入するお花が、農園から皆さんの手元に届くまで、どのようなプロセスを経ているかご存じですか?

 

実は、これが意外と長いんです。

 

現地から輸入する商社が、物流会社・エアラインと連携して日本まで運び、日本で検品・水揚げの上、市場のセリや仲卸業者を通じ、お花屋さんへ運ばれます。そしてようやく、皆さんのもとへ届くのです。

 

※ 切り花の寿命を延ばす方法。切り口から水を吸い上げやすくするため、カットをしたり、お湯につけたりする。

 

筆者は、水産業をはじめ様々な業界に携わってきましたが、当初からお花業界の不思議な点に気づいていました。

 

それは、「商社はお花屋さんの事情を知らない」「市場やお花屋さんは現地のことを知らない」ということです。お花の事業に取り組んで数年、「これが当たり前の流通構造なんだな」と、どこかモヤモヤしながらビジネスを展開していました。

 

そんな折、突然転機が訪れました。アフリカや南米などのお花の生産地には数えきれないほど足を運んできましたが、ケニアのバラ農園で働く女性から、次の言葉を伝えられたのです。

 

「私たちのバラを、貧しい私たちを助けるという目的で購入するのはやめてほしい。私たちは充分幸せです。バラは、皆さんが大切な時間を過ごす際に選ぶお花。決して安いお花ではない。純粋に、皆さんが『これ』と思うバラを選んでほしい。皆さんの選ぶバラが、私たちのものであるように日々努力しています。それこそが、私たちのモチベーションなのですから」

 

農園の幹部ではない、現場のいちスタッフの言葉です。筆者は衝撃を受けました。

 

この言葉をきっかけに、たくさんの誤解が広がっているお花の世界で、消費者の皆さんに「リアルを伝えたい」と強く思うようになりました。

 

貧しい私たちを助けるという目的で購入するのはやめて
貧しい私たちを助けるという目的で購入するのはやめて

新参者を排除しようとする「日本のお花の世界」

自動車メーカーなどでは、たとえ競合同士だったとしても、時には手を取り合い、技術革新を推し進め、「消費のピラミッド」を拡大していこうとする心意気があります。業界の繁栄には、全体をリードする会社が「ピラミッドの上部を大きくする」ために動き、一丸となっていくことが重要だからです。

 

残念ながら、お花の世界、特に海外のお花を輸入する業界のリーダーたちには、このような動きがなかった。むしろ、新規参入したよそ者(=筆者)を排除するくらいでした。これはとても危険なことです。実際、日本のお花の世界では、不景気も相まって、ピラミッドの上部が年々小さくなっています。

 

しかし、バラを例に取れば、ケニアの品種開発の現場は年々レベルアップし、今や世界ナンバーワンといっても過言ではありません。だったら、筆者自身が最高級のバラを皆さんに届けよう。そして、お花の世界のピラミッドの上を大きくしていこう。「世界の花屋」は、こうしてスタートしました。

 

日本のお花の世界
日本のお花の世界

日本人の「海外品への偏見」を物流で払しょくする

高品質・高鮮度のお花を知ってもらい、お花に興味を持つ人を少しでも増やしたい。そんな信念を持っていますが、実際のところ、商社だからこそできる取り組みであると感じています。

 

キーワードは「物流」です。

 

基本的にお花は航空物流の商品であり、飛行機で世界中から運ばれてきます。特にお花のような生鮮品は 「短い時間で低温管理しながら目的地へ運ぶこと」、いわゆるコールドチェーンが重要になります。

 

「たくさん注文する人にはファーストクラスのサービスを提供する」のが航空物流です。つまり、きちんと大量に買い付ける商社にしか、よりよいコールドチェーンは実現できないわけです(ちなみに筆者は、ケニアのバラだけで毎週10万本前後買い付けています。10万本、想像できますか?)。

 

ケニアのバラだけで毎週10万本を買い付けている
ケニアのバラだけで毎週10万本を買い付けている

 

では、この取り組みを知ってもらうためには何をすべきかと考え、筆者は「生産者さんに前面に出てもらえばいいのでは」と仮説をたてました。

 

海外品と聞くだけで、日本人の皆さんは、どこかで「安かろう悪かろう」のイメージを持ってしまいませんか? 実際は、そんなことはありません。質の優劣に国は関係ありません。日本だろうが海外だろうが、良いものは良いし、悪いものは悪い。

 

だからこそ、自信を持って紹介できるワールドクラスの人たち、彼らの仕事、そしてお花への思いを、ソーシャルメディアを通じて伝えていこうと考えたのです。

 

川上も川下も理解している商社だからこそ成せるビジネスモデルです。とはいえ、最初から狙っていたのではなく、「現地で拾った言葉・情報から偶然生み出された」というのが正しい表現でしょう。

ネット社会だからこそ現場に出る価値が再認識される

現在、筆者はいくつかのビジネスを手掛けていますが、すべてに共通するキーワードがあります。

 

それは、“Behind the Product”。製品を売るというより、製品の裏側にある「情熱」や「品質管理のストーリー」を売るのです。

 

「世界の花屋」の取り組みも、まさに、“Behind the Product”をアピールしていく動きです。繰り返しになりますが、決して机上のマーケティング的理論に基づいて編み出したメソッドではありません。

 

今の時代、「現場に出る価値」が増えてきていると感じています。講演の仕事などで口を酸っぱくして伝えていることです。

 

昨今、世界の変化は本当に激しく、ネットの情報を追い続けるのは難しい。だからこそ、世界のリアルを知るためには「現地で情報を直に拾い集める」ことが必須となりました。アフリカを始め、情報が不足している国は特にそうです。

 

「誰もやっていないオンリーワンのビジネスを創造する」

 

言葉だけでは難しく聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはありません。皆さんの日々のビジネスにちょっとしたプラスアルファを加えれば、それが「オンリーワンのビジネス」へと昇華してくれます。そして、そんなプラスアルファは、世界中に落ちていると確信しています。

 

世界中を旅してみれば、きっとあなただけのアイデアが生まれるはずです。

 

 

小林 邦宏

株式会社グリーンパックス 専務取締役

 

 

株式会社グリーンパックス 専務取締役

東京大学卒業後、住友商事株式会社の情報産業部門に入るも、世界を旅しながら仕事をするという夢が諦めきれず、28歳で商社を起業。花、水産物、オイルなど、さまざまな商品の卸売りを始める。

中国などアジアを中心にビジネスをしていたが、「中小企業は大手と同じことをやっていては生き残れない」と考え、南米、アフリカ、東欧、中近東など、「人が行きたがらない場所」に行って、知られていないニッチな商材を見つけ、取引するようになる。情報番組への出演や、ラジオ局のゲストコメンテーター、講演業など、幅広く活躍中。

著者紹介

連載なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?

小林 邦宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「東大から財閥系商社」というキャリアを投げ捨て、アフリカ・ケニアのバラ農園との取引をたった一人で開拓し、「世界の花屋」チーフバイヤーとして多くのメディアから注目を集める著者。 なぜ、財閥系商社を飛び出して「フ…

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