新型コロナウイルス…「市場への影響は一時的」といえる根拠

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中国湖北省を震源地とする新型コロナウイルスが、世界の市場に不透明感を投げ掛けている。日本の場合、中国経済の減速、そして訪日中国人の減少による影響が懸念されよう。もっとも、「爆買い」が名目GDPに占めるウェートは0.3%程度に止まる。中国指導部が感染拡大の封じ込めに成功すれば、東京市場は早期に冷静さを取り戻すのではないか。

想定される2つの影響:中国経済の減速、訪日中国人の減少

新型コロナウイルスが日本経済に与え得る影響は、震源地である中国においての生産と消費の停滞、そして春節の時期における訪日中国人の減少…2つがある。

 

このうち、中国経済については、感染がいつピークアウトするかが重要だろう。旧正月となった1月25日、中国共産党中央政治局常務委員会は、習近平国家主席、李克強首相を含む7名全員が出席して対策を協議、その模様が国営中央テレビで報じられた。

 

その後、湖北省を中心とした公共交通の遮断、国外への団体旅行の禁止など、中国政府周辺は矢継ぎ早に手を打っている。中国共産党指導部にとり、感染の封じ込めには国の威信が掛かっていると言えるだろう。

 

一方、春節による休暇期間は、日本を訪れる中国人観光客が増加する時期と言われ、「爆買い」への期待は大きかった。それが落ち込むとすれば、一般的に日本の国内景気に対して大きな悪材料であるとの認識がコンセンサスだろう。

 

もっとも、2015年以降、5年間の中国からの訪日客を月別に見ると、年間に占めるウェートは1月が平均7.4%、2月が7.6%であり、特に他の月に比べて突出している分けではない(図表1)。むしろ、中国からの訪日客が増えるのは、夏休み期間の7月(11.0%)及び8月(10.8%)だ。

 

出所:政府観光庁の統計によりによりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]訪日中国人の月別人数期間:2015〜2019年
出所:政府観光庁の統計によりによりピクテ投信投資顧問が作成

 

また、政府観光庁によると、2019年における訪日外国人の消費総額は4兆8,113億円、うち中国は36.8%を占める1兆7,718億円だった。2011年頃まで、非居住家計の国内直接購入が名目GDPに占めるウェートは概ね0.1%程度に止まったが、2019年は0.9%程度まで上昇したと推定される(図表2)。

 

 期間:2000〜2019 年、2019年はPAMJが推計 出所:内閣府、政府観光庁のデータより PAMJ が作成
[図表2]訪日外客の国内直接購入額 期間:2000〜2019 年、2019年はPAMJが推計
出所:内閣府、政府観光庁のデータより
PAMJ が作成

 

統計上、消費ではなく輸出に計上される訪日外客による財・サービスの購入は、日本経済の重要な需要項目になったことは間違いない。もっとも、訪日中国人による需要はその3分の1なので、名目GDPの0.3%程度に止まる。新型コロナウイルスによる落ち込みが一時的ならば、マクロ面から見てこの問題が日本の景気に甚大な影響を与えるとは考え難い。

マクロ的なインパクト:感染者のピークアウトがポイント

新型ウイルスの感染者が拡大している間は、世界のマーケットも材料として消化できず、神経質にならざるを得ないだろう。また、訪日韓国人が減少しているだけに、ミクロ的には大きな影響を受ける日本の地域・企業があるかもしれない。

 

しかしながら、冷静に考えれば、新型ウイルスの影響はあくまで一時的なものだ。中国政府による対策が功を奏し、感染者数がピークアウトすれば、日本を含め世界の市場は落ち着きを取り戻すものと見られる。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナウイルス…「市場への影響は一時的」といえる根拠』を参照)。

 

(2020年1月31日)

 

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社

シニア・フェロー

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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