税務調査の負担を軽減するために、検討すべきことは何でしょうか。今回からは、「資産防衛のための4つの視点」のうち、「税務申告・調査の視点」について見ていきます。

都市農家の場合、税務調査は必ずあると思っておく

当人がどう思っているかはともかくとして、広大な土地を所有している都市農家の方々は、税務署の認識としては「富裕層」に該当します。そして、富裕層の家で相続があった場合、何も対策をとらずにいれば、税務調査は必ずあるものと思っておいた方がよいでしょう。

 

したがって税務対策においては、連載第3回でご紹介した「資産防衛のための4つの視点」のうちのひとつ、「4.税務申告・調査の視点」を持つこと、具体的には、税務申告をどのような形で行っておけば税務調査の負担を軽減できるのか、また、税務調査の際にはどのような点が問題となるのかを検討しておくことも必要となります。

 

また、税務調査の負担を軽減するために、最も効果的な手法は、書面添付制度を活用することです。そこで以下では、この制度を利用した税務調査対策の手法について詳しく解説したいと思います。

突然の税務調査におびえる必要がなくなる!?

そもそも「書面添付っていったい何だ?」と思っている人も多いことでしょう。積極的に活用している税理士の数がまだ少ないこともあって、書面添付制度については、一般の納税者の方にはあまりなじみがないかもしれません。

 

書面添付制度とは、税理士法第33条の2に基づき、税理士が申告書に「申告書の適正性を表明する書面」、つまり「カルテ」のようなものを添付する制度をいいます。

 

この制度の目的は、税理士が申告書の作成に関してどの程度関与し、どのように調整したものであるかを積極的に明らかにすることによって、より正確な申告書を作成して提出するとともに、税務当局においても税理士が責任を持って計算し、整理し、または相談に応じた事項についてはこれを尊重することによって、税務行政の円滑化と簡素化を図ることにあります。

 

申告書に税理士法33条の2の書面が添付されると「税務調査をするには、書面を添付した税理士の意見を聞かなければならない(税理士法第35条)」ことになっています。

 

また、意見を聞いたうえで調査の必要がないと認められた場合には、税理士に対し「現時点では調査に移行しない」旨の「調査省略通知」が送付されます。

 

つまり、書面添付制度を利用し、きちんとした申告書を提出していれば突然の税務調査におびえる必要がなくなるわけです。税務調査は法人であれば2~3日、個人であれば所得税や相続税の調査に1日時間をとられることになります。その準備等を含めれば、非常に大きな時間と手間をとられてしまいます。

 

そのような負担の大きい税務調査が省略される可能性自体が、書面添付制度の最も大きなメリットといえます。しかも、添付する書面、すなわち書面添付書面は税理士が作成するものなので、依頼人の手を煩わせることはありません。

 

その費用を請求するか否かは事務所の方針によって異なります。ちなみに筆者の事務所では、書面添付書面の作成はルーティンのサービスと位置づけているので、その作成に関して報酬をいただくことはありません。

本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『地主のための相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地主のための相続対策

地主のための相続対策

土田 士朗

幻冬舎メディアコンサルティング

・利益を生まないのに評価額だけ高い空き地 ・バブル期に建てて不良債権化したアパートやマンション ・全体像が把握できない先祖代々受け継がれた土地etc… 土地が絡む相続は、複雑になりがちです。 本書では、長年にわ…

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