この時期にできる相続税対策は少ないが・・・
今回からは、連載第3回でご紹介した「資産防衛のための4つの視点」のうち、3つめの「3.納税の視点」について説明します。
「納税の視点」が求められる時期は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に限られています。しかも、現金一時納付が原則であることを十分に意識しておく必要があります。
つまり、わずか10カ月間の間で、納税資金を現金の形で用意しておかなければならないのです。この時点では、相続税対策としてできることは、もはや限られています。せいぜい、相続した土地の評価を下げる程度です。
とはいえ、土地を評価する際には、細心の注意が必要となります。たとえば、税務署などからよく耳にするのは、路線価のミスです。路線価が掲載されている路線価図の道路を見誤った結果、誤った路線価をもとに土地を評価してしまうことはよくあるようです。
それから、評価単位の取り違いです。土地の評価額は、具体的にどのような形で利用しているかによって変わってきます。すなわち、所有している宅地を自ら使用しているか否か、宅地の一部について借地権を設定しているか否かなどによって数字が変わってきます。
評価単位を誤って申告してしまうと、のちのち高額の追徴課税を受けることになるおそれがあります。
「税理士の選択」が税金の金額を大きく左右する
都市農家の場合であれば、やはり連載18回で説明した広大地評価が重要なポイントとなります。
したがって、税理士に依頼する際には、広大地評価に対してどのような判断基準を持っているかを確認することをお勧めします。というのは、税理士によって広大地評価に対するスタンスが大きく異なるからです。
たとえば、広大地評価をとることに対して積極的な者もいれば、どちらかといえば消極的な者もいます。そのため、同じ土地であっても、A税理士は広大地評価と判断してくれるが、B税理士は広大地評価と判断しないというようなことが起こりえます。
ちなみに筆者自身は、広大地評価について積極的なスタンスをとっています。やはり土地の評価額を下げることができれば、相続税がそれだけ安くなり、依頼人にとっては大きな利益となるからです。
もっとも、ただやみくもに「ここは広大地のはずだ」と主張するだけでは、土地の評価額を下げることはできません。やはり、税務署に広大地評価と認めさせるための戦略も必要になります。
また、たとえば類似の事例で、判例が広大地評価と認めていないとしても、あきらめることはありません。土地の形状等に関して、判例で判断されたケースとは異なっている要素があれば、その違いを強調し税務署に自己の主張を認めさせることは十分に可能です。
そのためには、地元の税務署が広大地に対してどのような判断基準を持っているのかをある程度把握しておくことが必要となります。
したがって、広大地評価を活用して大きく相続税を減額したいのであれば、広大地評価に対して積極的な姿勢を持っている地元の税理士に依頼するのが望ましいと思います。