法人化によってかかるコストは「30万円程度」
法人化の手法については、そのコストが気にかかる人がいるかもしれませんが、法人を設立するための費用は思うほどかかりません。
かつては、設立時に有限会社で300万円、株式会社で1000万円をそれぞれ最低資本金として用意しなければなりませんでしたが、平成18年の会社法改正でこのような資本金のしばりはなくなりました。現在は、資本金が1円からでも法人を作ることが可能です。
したがって、必要となるコストは登記費用や司法書士の報酬などで、30万円程度あれば十分です。
また、株式会社を設立する場合、株式は、将来後継ぎとなる子どもに100%持たせてしまうことが理想的です。というのは、不動産事業が順調であれば、株式の資産価値はどんどん上がっていくはずです。10年で10倍以上になることも珍しくありません。
そのような資産価値の高い株式を被相続人が持っていても、いたずらに相続税が増えるだけです。それならば、最初から子どもに100%持たせておく方が、生前からスムーズに資産を移転しておくという観点からも合理的です。
もっとも、中には子どもに株式を100%所有させて、法人の経営権を握らせてしまうことに躊躇するようなケースもあるでしょう。
たとえば、「息子に全部渡してしまうと何をしでかすかわからない」「株式を全部渡したら、先祖代々守ってきた土地をすべて売られてしまうかもしれない」などという不安を抱かせるような息子さんあるいは娘さんをお持ちの方もいるかもしれません。
そのような場合には、株式の51%以上を親が持ち続けることも一つの選択肢となります。株式の過半数を握っていれば、経営権を握り続けることができるので、少なくとも自分の生きている間は、子どもが法人を好き勝手に動かして〝暴走〟するような事態は避けられるでしょう。
生前に債権放棄し、余計な相続税の負担をなくす
法人が設立済みの場合、通常、被相続人は役員として法人に対して貸付金を有していることが多いでしょう(ことに法人が恒常的に赤字状態の場合)。その貸付金を、被相続人の存命中に債権放棄しておくのです。
もし貸付金をそのままにしておけば、被相続人の死後、相続財産を構成し課税対象となります。たとえば、法人に対して1億円の貸付金があれば、それに対しても相続税がかかってくることになるわけです。
法人の赤字が続いているような状態の場合、貸付金は返済される可能性が低いでしょうからほとんど無価値です。にもかかわらず、そのような価値のない債権を価値のあるものと評価され、相続税を支払う羽目になるのはばかげています。
あらかじめ債権放棄をしておき、余計な相続税の負担を負わせないようにしておくことが合理的なのは明らかです。放棄する債権の額にもよりますが、驚くほど相続税の額が変わることもあります。