なぜ「不動産を相続」したら「ダイレクトメール」が届くのか?

不動産を相続すると、相続が発生したことを明らかに知っているかのようなダイレクトメールを受け取ることがあります。「なぜうちに相続があったこと知っているのだろう?」と心配になる方も多いようです。本記事では、不動産を相続した方に、どのようにしてDMが送られているのか、その構造を解説します。※本記事は、円満相続税理士法人の橘慶太税理士の語り下ろしによるものです。

DMが届く原因は「相続登記」にあり

ここ最近、相続が終わった家庭にDMが送りつけられるケースが増えています。「相続した不動産を売却しませんか⁉」とか、「払いすぎた相続税は取り戻せます! 相続税を取り返しましょう!」という内容です。

 

そのDMを受け取った方からすると、「なんでうちに相続があったこと知っているんだ? どこから情報が漏れているんだ!」と憤慨し、相続で関わった人(たとえば税理士)に対し、「おまえら、情報漏洩しているんじゃないか⁉」とクレームになることがあります。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?

 

まず、相続まわりの手続きをおさらいしてみます。

 

相続が発生した日(=被相続人が亡くなった日)から3ヵ月で期限を向かえるのは、相続放棄の期限です。この手続きは、亡くなった方の遺産を相続したくない相続人がいる場合には、相続を放棄することを家庭裁判所に申し出る手続きです。

 

3ヵ月以内に申し出をしないと、相続することを承認したものと取り扱われますので注意が必要です。ちなみに相続放棄をしなくても、遺産分割協議で、「私は財産を相続しなくていいですよ」といえば、同じ結果になります。

 

どちらかといえば、この手続きは、亡くなった方が借金などを多額に残してしまった場合に使われます。

 

相続が発生した日(=被相続人が亡くなった日)から4ヵ月以内に行わなければいけないのは、所得税の確定申告です。通常の確定申告は、毎年2月15日から3月15日の間に行いますが、亡くなってしまった人の場合には、亡くなった日から4ヵ月以内に申告しなければならないのです。

 

なお、「年金の収入が400万円以下」「その他の所得が20万円以下」の場合は、確定申告をしなくてもよいこととされています。

 

相続税の申告は、相続が発生した日(=被相続人が亡くなった日)から10ヵ月以内です。この時までに、相続税の納税も済ませなければいけません。相続税の納税は金銭で納めることが原則なので、それまでにキャッシュを用意しないといけません。

 

「不動産はたくさんあるけど金銭はあまりないですよ」という方は、物納(ぶつのう)といって、物で税金を払うことも可能です。しかし、近年この物納の要件はどんどん厳しくなっていて、本当にお金を持っていないと認められなければ物納することはできなくなっています。日本全国で物納が認められる件数は、年間100件も満たないのが現状です。

 

ここまでの手続きで、情報が一般に公になることはありません。唯一、情報が公になるのは、不動産の名義変更、つまり、相続登記をした場合です。

 

不動産の所有者は、誰からでもわかるようにするため、その所有者の情報を一般に公開しています。

 

その情報は、登記簿というものに登録され、法務局に申請すれば誰でも簡単に見ることができます。インターネットで申請すれば、たったの335円です。

 

その登記簿には、現在の所有者のフルネームとその方の住所、そしてどのような理由でその不動産を取得したかが書いてあります。

 

登記簿謄本の見本(出所:法務省ホームページ)
登記簿謄本の見本(出所:法務省ホームページ)

 

相続が理由で所有者を変更するときは、「相続」と書かれます。

相続登記をした人の一覧が公表されるわけではない

相続登記をしたからといって、相続登記をした人の一覧が公表されているわけではありません。

 

こんなことは、ありえません
こんなことは、ありえません

 

そのことから、DMを送っている業者は、どのようにしてピンポイントで相続登記をした人にDMを送っているのか、謎は深まるばかりでした。そこで直接、法務局に聞いてみました。

 

筆者「相続登記をするとDMが届くことがあるんですけど、相続登記をした人の一覧って公表されているんですか?」

 

法務局「そんなものはありませんよ」

 

筆者「そしたら、名簿業者がいちいち全部の登記簿とってしらみつぶしに相続登記を探しているんですか?」

 

法務局「そんなこと、わたしに聞かれてもわかりませんよ。まぁ似たようなものだと、不動産登記受付帳ってのはありますけどね」

 

筆者「なんですか? 不動産登記受付帳って。詳しく教えてください」

 

法務局「管轄している地域ごとに作っている、登記された物件と理由が書かれた一覧表です。1日単位で作っていて、時間はかかるけど、それを渡すことはできますよ」

 

なるほど! それだ!

 

おそらく、名簿業者がこの不動産登記受付帳を入手し、そこから相続登記を抽出し、それを一覧にしたものを、DMを送る不動産業者や税理士に販売している可能性が高いです。

 

Googleで「名簿 相続登記」で検索すると、いくつか名簿業者がでてきますので、この名簿からDMが発送されているのでしょう。

 

100歩譲って、筆者が関与した方に「相続した不動産を売りませんか?」とか「その相続税申告、間違えているかもしれませんよ」などといったDMを送るのは結構です。しかし「この情報は、登記情報から取得したもので、他者からの情報漏洩ではありません」のようなひと言を添えてほしいですね。

 

筆者はあらかじめ「相続登記をすると、不動産屋や税理士からDMが届くことがありますが、これは私たちから情報が洩れているわけじゃありません!」と伝えています。余計な心配をかけなくて済みますから。

 

 

【動画/筆者が「遺留分に対する課税」について分かりやすく解説】

橘慶太

円満相続税理士法人

 

 

円満相続税理士法人 代表 税理士

中学・高校とバンド活動に明け暮れる。大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人山田&パートナーズに正社員として入社する。

税理士法人山田&パートナーズでは相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算300件以上。また、三井住友銀行・静岡銀行・ゆうちょ銀行を中心に、全国の銀行で年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。

税理士の使命は、難解な法律や税金をできる限りわかりやすく伝えることだと考えている。平成29年1月に表参道相続専門税理士事務所を設立し、平成30年より法人化に伴い、円満相続税理士法人に商号を変更した。

著者紹介

連載家族が集まる年末年始だから本気で考えたい!「相続」特集 ~2020

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