金価格高止まり…中国、デジタル人民元の価値担保で積み増し?

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

一般にインフレ・ヘッジの手段とされる金の価格が、世界的な物価安定下でも高止まりしている。背景にあるのは、主要中央銀行の量的緩和の帰結が、将来、インフレ圧力につながるとの観測ではないか。さらに、「世界最大の消費地」を目指す中国は、デジタル人民元の価値を担保するため、金準備を積み増していると考えられる。

金価格:将来のリスクへのヘッジを象徴か

過去30年間の金価格を他の資産と比べると、安定して良好なパフォーマンスを示している(図表1)。

 

もっとも、足下、世界経済で懸念されているのは低い物価上昇率であり、日本はようやくデフレを脱したところだ。利息などキャッシュフローを生まず、インフレヘッジの役割を担うはずの金にとっては、本来、常識的には選好され難い経済環境と言えるだろう。

 

期間:2019年11月末基準 出所:Bloombergのデータよりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]主要資産のパフォーマンス(年平均騰落率) 期間:2019年11月末基準
出所:Bloombergのデータよりピクテ投信投資顧問が作成

 

そうしたなか、金が買われている理由とされているのが、世界的な低金利と希少性だ。もっとも、利息収入がない以上、価格上昇を前提としない限り、低金利は金を保有する動機にはならない。希少性についても、数量に限りのある資産は他にも数多く存在する。

 

金価格が高止まりするファンダメンタルズ上の背景は、主要中央銀行の量的緩和、そして政府の財政赤字拡大が、長期的には大型のインフレをもたらすとの観測ではないか。その場合、どの国の通貨・資産もインフレヘッジとして決め手に欠けている。従って、国際的に共通の尺度で測ることができ、流動性も確保されている金が着実に選好されているのだろう。

注目される中国の動き:デジタル人民元の価値を金で担保か

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、今年6月末における中央銀行の金保有量は、米国FRBが他を圧倒する8,133トン、時価で3,800億ドルを超える規模だ。世界最大の貿易赤字国は、借金の証文であるドルの信用力を確保するため、最強の軍隊、洗練された金融市場に加え、金の大量保有が必須なのだろう。

 

他の中央銀行に目を転じると、金準備を着実に増やしているのは中国とロシアだ(図表2)。まだ米国の4分の1程度だが、他国と明らかに異なる動きをしている。

 

期間:2000〜2019年4-6月期 出所: World Gold Councilのデータよりピクテ投信投資顧問が作成
[図表2]主要中央銀行の金保有量 期間:2000〜2019年4-6月期
出所: World Gold Councilのデータよりピクテ投信投資顧問が作成

 

中国は米国との通商戦争により、世界の市場では「売り手」より「買い手」が圧倒的に優位であることを再確認したと思われる。「世界の工場」から「世界最大の消費地」へ転換を図る上で、最強の軍隊、洗練された金融システム、そして安定した通貨が必要と考えている可能性は強い。金準備の拡充はその一環だろう。

 

近く発行が予想されるデジタル人民元の価値を金準備で担保するのが中国の戦略とすれば、今後も着実に保有量を増やすことが予想される。そうした中国の動きは、世界経済の長期的なインフレのリスクと共に、金の価格を押し上げる要因と言えるのではないか。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『金価格高止まり…中国、デジタル人民元の価値担保で積み増し?』を参照)。

 

(2019年12月13日)

 

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社

シニア・フェロー

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧