「金」を買うなら「300グラムずつ」にすべき明確な理由

来るべきインフレに備え、資産は「株式」「不動産」「金地金」といった「お金以外の資産」に分散することが重要です。本記事では、特に「金地金」に着目していきます。※本連載は、『大学教授が考えた「科学的投資法」 株は決算発表の直後に買いなさい!』(PHP研究所)より一部を抜粋・再編集したものです。

お金を「お金以外の資産」に移しておくことが必要

ここでは、インフレ経済下における対処法について考えてみます。どのくらいの強さになるかはわかりませんが、これからインフレ、とくにハイなインフレ、またはハイパーインフレになるということを前提に考えれば、お金をお金以外の資産へ移しておくことが必要です。

 

「お金以外の資産」というのは、主に「株式」「不動産」「金地金」です。それ以外にも、趣味のもの(外車や絵画、その他のコレクション等で、外貨建ての資産になるもの)を買っておくのもいいと思います。

 

私も含めて皆さんも基本的に通常の生活をしていく中で、徐々にまたは急激にインフレが進んでいくというのが現実の姿でしょうから、無理な対策を組むのは非現実的だろうと思います。

 

また、「富裕層が海外に逃避している」ということを最近よく耳にしますが、大多数の普通の人にとっては、このように海外逃避をするというのも非現実的です。「仕事はどうするのでしょうか」ということになりますからね。

 

ですからここでは、通常の生活をしていく中で現実的な対策案について考えていきます。では、「株式」「不動産」「金地金」について考えていきましょう。

 

有事の際に頼れる「金」
有事の際に頼れる「金」

 

[1]株式

 

日本人の株式の保有率は国際的に見て非常に低いといわれています。株式の保有率は人によって様々でしょうけれども、保有割合は各人の全金融資産のうちの0%~30%くらいなのではないでしょうか。

 

これをもっと増やすのがオススメです。現在の保有割合に30%くらい追加するのがよいのではないかと思います。現在の保有割合が0%の人は30%に、20%の人は50%に、といった感じです。最大は60%くらいでしょうか。私は株式の保有割合が60%くらいです。かなり高いとは思っていますが、高すぎるとは思いません。

 

[2]不動産

 

不動産投資自体は手間もかかりますし、株式投資に比べて利回りも低いので、とくに初心者にはオススメできません。さらには、アベノミクスが始まって7年以上が経過しており、その間に物件価格は充分に上がってしまっているので投資妙味のある物件は今はほとんどないと思います。

 

しかし、現在、賃貸住宅にお住まいの方は自宅を買っておくというのはオススメです。いわゆる「自宅投資」です。少なくとも500万円~1,000万円を頭金にして、住宅ローンの毎月の支払額を現在の家賃と同じくらいにして自宅を買うのです。そうすれば、借入によってレバレッジもかかりますし、インフレになった場合にインフレ対抗力をつけることができます。自宅を買う場合には、土地の比率が大きくなるので、マンションではなく一戸建てのほうが効果的ですし、資産価値の維持・増殖を考えて、絶対に「駅近」でなければなりません。地下鉄やJRの駅から徒歩5分圏内が理想です。

 

このようにして、自宅を取得しておけば、強いインフレが来た場合にも「食う寝る所に住む所」は確保しておくことができるのです。これはかなりの安心感につながります。賃貸住宅ですと、強いインフレが来た場合には家賃が上がってしまいますが、自宅を買っておけばそういった心配はありません。

 

もちろん、これからの時代は借入の金利は絶対に固定金利にしておかなければなりません。変動金利ですと、インフレのときには金利が暴騰してしまうからです。

 

もしも10倍のインフレになってしまえば、住宅ローンの毎月の支払額は実質的に10分の1の負担ですんでしまうわけですから、こんな大バーゲンセールのチャンスは逃さず、予約しておかなければならないと思うのです。

 

「大バーゲンセールのチャンスを予約しておく」というのが、「自宅を(賃貸ではなく)購入しておく」ということなのです。「自宅を購入しておく」ということならば、日常の生活の中でもできることです。特別なインフレ対策をしているというわけではなく、ただ、自宅を「購入するか賃貸にするか」に関して、「購入」を選択しておくだけでインフレ対策になるのです。

 

 

[3]金地金

 

金地金の購入については、非常に重要ですので、詳しく述べたいと思います。結論を先に書きますと、貯金代わりに、「金地金をコツコツ買い貯めておく」のです。貯金を崩して、文字通りの「貯『金』」に切り替えるのです。保有資産の一部を金地金にしておけば、万が一、国家財政が破綻したような場合にも、財産を保全できます。

金地金はなぜ「300gずつ」買うべきなのか?

財源は、定期預金でもいいですし、株の売却益でも構いません。また、株の配当も格好の財源です。夏と冬にボーナスが支給される方は、それも有力な財源です。次回のボーナス時期以降、ボーナスと株の配当を財源にして、半年に一度ずつ金地金を買っていくのです。私はボーナスと株の配当を財源にして半年に一度以上金地金を買っています。

 

1回に買う金地金は300グラムが適切です。昨今(2020年1月24日現在)の購入時価で換算しますと、約182万円です。1回に買う量は、あまり少なくても財産性がないですし、あまりたくさんはなかなか買えないでしょう。そこで、1回に300グラム(約182万円)を理想とします。ボーナスと株の配当(あとは、定期預金と株の売却益)をかき集めて、夏と冬に金地金300グラムを買い集めていきます。

 

すると、1年で600グラム、5年で3キログラムになります。3キログラムになれば、今の時価で換算すると、約1,820万円になりますから、これだけでも一家で3~4年は暮らしていけます。これで、有事に備えるのです。

 

なお、1回の購入が300グラムですと、追加の手数料が16,500円かかりますが、売るときに小分けにして売れるので課税上とても有利です。1年に1回の売却であれば、現行税法では売却益のうち50万円以下の部分は非課税になります。すると、たとえば1キログラムのインゴット(金塊)を買っていた場合で売却益が150万円あったとすると、100万円(150万円-50万円)が課税対象になります。各人の適用税率にもよりますが、概ね20万円~30万円(最大55万円)の税金がかかります。一方、300グラムであれば売却益は45万円ですから非課税の範囲に収まります。ですから、300グラムずつ3年にわけて売却すれば税金はゼロですみます。こういったメリットを勘案すれば、購入時の16,500円は簡単に元が取れます。

 

また、金地金を贈与することを考えた場合には、1回に買う金地金は200グラムにしておくのがいいでしょう。現行の贈与税法では1年間に受贈者1人当たり110万円までは贈与税が非課税になりますので、200グラムなら2020年1月24日現在の時価で換算しますと120万円とちょっとですから、課税額は1万円とちょっとですみます。200グラムずつ買っておけば、相続税や贈与税の対策になります(相続税には「生前贈与加算」というややこしい問題がありますが、ここではそれは度外視しました)。

 

なお、金地金を200グラムで買う場合も手数料が16,500円かかりますが、贈与税が軽課税になるメリットを考えますと、やはりこのくらいの手数料を支払うのは有効です。

 

税金対策のことを考えても、また、手軽さの意味からも、金地金は200グラムか300グラムといった小さな単位で買っておくのがよいというわけです。

「金投資」ではなく「貯『金』」と心得よ

金地金は強い「インフレ対抗力」を発揮してくれます。定期預金のような通常の「貯金」では、インフレ時代には、実質的な価値は目減りしてしまいます。これまでにも述べてきましたが、万が一、国家財政が破綻しそうになったら、定期預金の実質的な価値は目減りどころか、壊滅するでしょう。実質的価値は10分の1どころか、100分の1以下になってしまうかもしれません。たとえば1,800万円の貯金があっても、貯金のままでは、国家財政破綻のXデーが来た後の実質的価値は10万円か20万円くらいのものになってしまうのです。

 

一方、同じく1,800万円くらいの財産を「貯『金』」で保有しておけば(つまり、金地金3キログラムにしておけば)、Xデーが来た後も実質的な価値は維持・保存されます。ですから、今からコツコツ金地金を買い集めておけば、Xデーが来た後も、3~4年は暮らしていく財産を確保できます。かなりの国難になっても、3~4年しのいでいければ、その後の態勢を整えることができます。国家財政が本格的にヤバくなってからでは、金地金は買えなくなるでしょう。猛烈に高くなってしまうか、国家の統制が入って、購入禁止になるでしょう。ですから、今からコツコツと買っておくのです。

 

ちなみに、「株」も強い「インフレ対抗力」があります(「不動産」も同様です)。Xデーが来たら、株価は一旦は大きく下がるでしょうけれども、その直後から、インフレに呼応するように、暴騰を演じるはずです。

 

ですから、財産は、「金地金」と「株式」と「不動産」にしておくのがいいのです。外貨もいいのですが、ドルはイマイチ不安ですし、他にどの国の通貨がいいのかもわかりません。「金地金」は「通貨の起源的なもの」であり、「国際的に認められた最強の通貨」ですので、やはり「金地金」を保有しておくのがいいでしょう。

 

「お金」というのは、紙幣や硬貨のことではなく、そもそもは「金地金」のことだと思っておくのが本質的に正しい理解なのです。実は、「金地金」こそが、絶対的価値のある「お金」の根源的価値のあるものであって、紙幣や硬貨は、「価値の交換手段に過ぎない」というのが正しい理解といえるのです。

 

さてここで、強調しておきたい大事なことがひとつあります。それは、ここで金地金の買い集めをオススメしたのは、いわゆる「金投資」ではなく、「貯『金』」だということです。すなわち、「価格が上がることを期待して買っておくという投資」ではなく、身を守るための「貯『金』」だということなのです。ですから、多少の価格の上下は無視します。

 

今は1グラム6,000円強(消費税込み)くらいですが、それが3,000円に下がろうが、9,000円に上がろうが、絶対に売らずに持っておくのです。上がったら売って儲けようとか、下がったらどうしましょうとか、そういうこととは一切無縁です。

 

この「貯『金』」の本質は、「ハイパーインフレ保険」ということにあるのです。価格の上下は関係なく、ただひたすら、有事の際に「1キログラムで概ね1年分の食費・生活費に充当できるもの」を確保しておくということだけが狙いです。

金地金は「お守り」…有事のときに効果抜群

金地金は「お守り」なのです。平時には、売るとか、損得とかは関係ありません。あなたは、伊勢神宮や京都の八坂神社で買ってきた「効果が抜群のお守り」を、価値が買い値より多少上がったからといって、売りますか? 売らないですよね。

 

また、「お守り」がいらなくなったときが来たとして、そして、そのときに売ったらいくらか損をしたとして、そのことで、「お守り」を買ったことを後悔しますか? 「お守り」がいらなくなったときが来たこと自体のほうが、よっぽど幸福なのだと考えれば、売り値が多少安くても、メデタシ、メデタシではないでしょうか。

 

金地金という「お守り」を持っておけば、有事のときに効果抜群です。そして、それとは対照的に、もしも国家財政破綻の懸念が杞憂に終わり、平和な日本がずっと続いてくれれば、「お守り」の価格は、あまり上がらないか、いくらか下がるかもしれません。でも、そうなることが一番の幸福ではないですか。地獄のハイパーインフレが来なかったのだから、金の価格がいくらか下がっても、たいしたことではないはずです。

 

そして、自分が65歳を超える頃までにハイパーインフレもなく、今と変わらない平和な日本だったら、その頃から1年に3つ(900グラム)ずつ換金して、その年の「食費・生活費の足し」にすればいいのです。それこそまさに、「年『金』」です。

保険にも年金積立にもなる「金地金」

金地金を買い集めておくことは、「ハイパーインフレ保険」になるうえに、有事がなければ、「年金積立」にもなるのです。

 

資産分散の一環としても、財産の一部を金地金で持っておくことは、非常に有効です。現金や預金は生活に必要な最小限の金額に抑えてしまえばいいと思います。そして、金融資産のうちの10%~20%は金地金で持っておくといいでしょう。今からでも、まだ間に合います(間に合ってくれなければ困りますよね)。

 

「(国家財政が)転んだ先の杖!?」は、ないよりは、あったほうがいいのです。

 

なお、金地金の保管は、銀行の貸金庫でもいいのですが、もしも預金封鎖になった場合に、封鎖されてしまうかもしれません(有事のときに、そのあたりがどうなるのかということは、正確にはわかりかねます)。ですから、各自、自己責任で自宅の金庫等に保管しておくということになります。なお、金庫は埋め込み式のものでないと、泥棒に入られたときに金庫ごと持っていかれてしまいます。

 

最後に、金地金の購入方法ですが、「田中貴金属」で購入されることをオススメします。「田中貴金属」以外にも、大手銀行などでも買うことはできますが、信頼性の意味で、「田中貴金属」が一番だと思います。200グラムか300グラムを買うのであれば、代金の現金以外には何も必要ありません。代金を持って、ただお店に行って買うだけです。「田中貴金属」は全国各地に販売店舗があります。

 

最後に、「未来永劫、日本が国家財政破綻にはならない」ということを心から祈っています。ここに書いた「貯『金』」計画が効果を発揮せず、多少は目減りしてもいいので、無事、「年『金』」として換金できるようになることを祈っています。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

専攻は会計学。1961年、名古屋市に生まれる。1984年、名古屋大学経済学部卒業。1990年、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年、東北大学助教授。2001年、レディング大学よりPhDを授与される。2003年、東北大学大学院教授を経て、2004年から現職。

著者紹介

連載会計学の教授が伝授する「これからの日本」の歩き方

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