日本を代表する大手ディベロッパーが、相次いでフィリピンに進出し、事業拡大を図っています。なぜなのでしょうか。株式会社ハロハロホーム エグゼクティブディレクターの家村均氏に、ビジネスと投資対象、二つの視点で、フィリピンの魅力について語っていただきました。

英語が話せる豊富な労働力に、グローバル企業が注目

先日、フィリピンに関連して、下記のような報道がありました。

 

阪急阪神、新たな戸建て分譲事業始動
阪急阪神不動産(大阪市)は5日、フィリピンで新たな戸建て分譲事業を開始すると発表した。別の物件開発で手を組んでいる地場同業と協力し、マニラ首都圏郊外に約1,700戸を建設する。(NNA ASIA 12/9報道より)

 

また三菱地所は、今年の8月、フィリピンのディベロッパー、ArthaLand Corporationが進めるオフィスビル開発への参画を決めました。そのほかにも、三井不動産は、フィリピンの大手ディベロッパーRockwell Land Corporationと共同でケソンで分譲住宅事業を、野村不動産は三越伊勢丹とともに、フィリピンの大手ディベロッパーのFederal Land Incorporatedと共同で、マニラのグローバル・シティ(BGC)で大型複合開発を進めています。なぜ日本の大手ディベロッパーは、フィリピンへの進出、事業拡大を進めているのでしょうか?

 

ビジネスの視点で考えると、フィリピンの魅力は何といっても「豊富な人口・労働力」です。フィリピンの人口は、2017年時点で1.049億人で、ASEANのなかでは、インドネシアの2.64億人に次ぐ第2位の規模を誇ります。さらに注目すべきは、総人口に占める生産年齢人口の割合が上昇し続ける「人口ボーナス」です。

 

人口ボーナス期の終了年は、タイでは2031年、ベトナムでは2041年、インドネシアでは2044年、ミャンマーでは2053年といわれていますが、フィリピンでは2062年と、圧倒的に長く、その間、経済成長が続くだろうといわれています。

 

またフィリピンは若い世代で構成されているのが最大の強みです。国民年齢の中央値は、日本48.9歳に対し、フィリピンは23.5歳と、圧倒的に生産年齢人口が多いのです。

 

さらにフィリピンは戦前、アメリカ領だったこともあり、公用語のひとつが英語になっています。つまりフィリピンには、世界のビジネスシーンで共通言語として使われている英語を話せる労働力が豊富、というわけです。

 

このような状況に、真っ先に目をつけたのが欧米の世界的企業で、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、なかでもコールセンターの集積が進み、その規模はフィリピンGDPの約1割といわれています。さらにより複雑かつ高度な知識が要求されるKPO(ナレッジ・プロセス・アウトソーシング)の集積も進んでいて、いまやフィリピンは、企業のグローバル展開になくてはならない存在になっています。

 

このように、継続した成長が見込まれる有望なマーケットとして、日本の大手ディベロッパーは、フィリピンでの展開を加速させているのです。

 

世界企業がこぞってフィリピンにコールセンターをつくっている
世界企業がこぞってフィリピンにコールセンターをつくっている

 

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地下鉄計画で注目が集まる「マカティ」

外国資本の流入が加速したこともあり、国際的格付け会社S&Pグローバルはフィリピンの信用格付けを「BBB+」に引き上げ、格付け見通しを「ステーブル(安定的)」としました。また米国の『U.S. News & World Report』誌は2018年版の「投資するのに適した国々(Best Countries to Invest In)」という記事で、投資に適した国の第1位にフィリピンを選び、HSBCは「2050年の世界のGDP予想ランキング」で、2012年世界41位だったフィリピンを、2050年には世界16位になると予測し、「世界で一番成長する国」としてフィリピンを選んでいます。

 

投資対象としても、フィリピンは非常に魅力的な国なのです。

 

投資先として候補に挙がるのは、まず首都であるメトロ・マニラ(東京でいう23区。マニラはメトロ・マニラのなかの1つの市)です。なかでも、マカティには、インテルやマイクロソフト、ネスレなど、多くのグローバル企業が集まり、近代的な街並みを形成しています。外国人駐在員に人気のエリアということもあり、高級コンドミニアムのニーズが高まっています。

 

また、ドゥテルテ政権の下で進められている「BUILD BUILD BUILD」という政策により、フィリピンではさまざまなインフラ整備が進んでいますが、なかでも注目なのが「メガマニラ圏地下鉄事業」です。ケソンを出発し、途中マカティを通り、パサイのニノイ・アキノ国際空港に至る、全長57.7kmに及ぶ地下鉄は、メトロ・マニラを南北に縦断する計画です。日本の政府ODA(政府開発援助)や日本企業が主導で開発は行われ、開通は2025年を目指しています。

 

さらに、マカティでは、フィリピンの不動産開発会社、フィリピン・インフラデブ・ホールディングスと中国資本が包括提携をして、地下鉄計画を進めています。こちらも2025年の開業と発表されていましたが、先日、完成を1年前倒しにするという報道がありました。

 

地下鉄が開通することで、政府が最も期待しているのは自動車渋滞の緩和ですが、世界の投資家が期待するのは、地価の上昇です。利便性が向上することで、特に駅ができる予定のエリアでは、すでに世界の投資マネーが流入し始めています。

 

マカティ中心部
マカティ中心部

 

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フィリピン第2位の都市圏「セブ」で進むインフラ開発

マカティとともに注目したいのが、セブです。みなさんは、セブと聞いて、ビーチリゾートを想像するでしょうが、メトロ・セブは、フィリピン第2位の規模を誇る大都市圏で、人口は300万人を数えます。しかも半径8キロ圏内にほとんどの経済が集中するというコンパクトさで、日本の都市で例えるならば、大阪や名古屋を、さらに密度を濃くしたイメージです。

 

そんなセブでも、マニラと同じように、米大手ITサービスのIBMや、米大手銀行のJPモルガン・チェースといったグローバル企業がコールセンターなどを開設するなど、外国資本の流入が始まっています。

 

さらにセブで注目すべきは、大規模なインフラ開発です。みなさんがセブと聞いて思い浮かべるリゾートは、セブ島の東にあるマクタン島にあります。大都市を形成するセブ島と、リゾートの中心であるマクタン島は、現在、2本の橋で結ばれていますが、そこに第3の橋が2021年誕生し、さらに第4の橋の建設も決定しました。

 

2021~2022年には高速道路も完成し、渋滞緩和とリゾートへのアクセスは、さらに向上するでしょう。高速バスターミナルも設置され、2022年には「マクタン・セブ国際空港」から都市部への鉄道が開通します。リゾートや都市部へのアクセスが、より簡単に、スピーディになります。

 

同時多発的に進むインフラ開発のインパクトは計り知れません。セブ島とマクタン島のつながりがより強固になることへの期待感で、双方のエリアでは地価上昇が始まっています。

 

セブには、日本から5時間弱で到着
セブには、日本から5時間弱で到着

 

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