どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえるだろう。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 交通や生活の利便性などのデータから検討していく。今回は「品川勤務の30代男性」が住むのに適した街はどこかを考えていく。

家賃8.3万円以内、通勤にも便利な京急本線沿いの街

2000年代に入り、大規模な再開発で東京を代表するビジネス街に変貌した品川。その隣には来年、山手線新駅「高輪ゲートウェイ」駅が(暫定)開業し、2027年には中央リニア新幹線駅も誕生する予定と、ビジネス拠点としての重要性は増している。

 

そんな品川勤務の会社員が、通勤にも住むにも便利な街はどこなのだろうか。品川であれば、いくつか候補の路線があるが、今回は京急本線(「泉岳寺」~「浦賀」)に絞り、30代前半の男性を想定して考察していく。

 

赤い電車でお馴染みの京急線
赤い電車でお馴染みの京急線

 

2018年「賃金構造基本統計調査」によると、東京都の企業に勤務する31~35歳男性の平均給与は、1,000名以上の会社規模で33.34万円(税引前、残業代等込)であり、住民税や所得税などを差し引いた手取り額は、25万円ほどになる。

 

家賃は手取り月収の1/3以内と推奨されることが多いので、最寄り駅から10分圏内、1K/1DKで8.3万円以内と設定し、京急本線の各駅の平均家賃を見てみよう。

 

「品川」を出発し、初めに平均家賃8.3万円以下となるのは「新馬場」駅で7.73万円、次に「立会川」駅で7.22万円。さらに「平和島」駅(7.49万円)以降は、すべての駅で平均家賃が8.3万円を下回り、京急本線は家賃の面で非常に選択肢が広い路線だといえる。

 

次に「品川」駅までの所要時間を見てみよう。通勤時間帯である平日8時台で、乗り換えなしで「品川」まで最短で行ける電車を比較した。

 

各駅停車のみ停まる駅で30分圏内は「梅屋敷」駅(23分)、1時間以内だと「子安」駅(56分)となる。また快特や特急などを利用すれば、30分圏内は「横浜」(30分)、1時間圏内は「金沢八景」(52分)となる。

 

それぞれの駅の平日8時台の電車本数を見ていこう。各駅停車しか停まらない駅では、1時間に5~6本、つまり10~12分に1本というペース。快特や特急などの停車駅であれば、1時間に10本以上で、5、6分に1本のペースで「品川」駅に乗り換えなしで行ける電車に乗れることとなる。

 

ここまでで、平均家賃が8.3万円以内、「品川」まで1時間圏内、通勤時間帯の電車本数10本以上の駅をピックアップしたのが[図表1]である。

 

 出所:所要時間の*のついている数値は速達列車利用時 平均家賃:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(11月29日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする
[図表1]京急本線各駅周辺の平均家賃と、「品川」駅までの所要時間/電車本数
出所:所要時間の*のついている数値は速達列車利用時
平均家賃:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(11月29日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする

 

このなかから、交通利便性の観点でさらに候補を絞っていく。住居選びの際、単身者は交通の利便性を重視し、通勤時間が短いエリアを選択する傾向が強い。そのため今回は通勤時間帯で「品川」まで30分以上の駅(「上大岡」「金沢文庫」)は除外する。

 

続いてJRの駅にも近い3駅について考える。「横浜」駅はJR線も乗り入れ、東海道線を利用すれば「品川」まで10分、通勤時間帯は16本の電車が利用できる。品川勤務で「横浜」周辺に居住するのであれば、利便性の高いJRを利用する人のほうが多いだろう。

 

また「京急川崎」駅は、JR「川崎」駅と直線距離200mほどで、徒歩4分ほど。東海道線利用で「品川」まで10分で、通勤時間帯には18本の電車が利用できる。品川勤務で「京急川崎」周辺の居住であれば、JRを選択する人が多くなりそうだ。

 

一方「京急蒲田」はJR「蒲田」駅まで直線距離で800m弱で、徒歩15分ほど。京急線とJRでは、ある程度利用客の住み分けができていると考えられる。以上のことから、以降は「横浜」と「京急川崎」は、今回の分析では除外して考えていく。

立会川、平和島、京急蒲田、神奈川新町…住むなら?

交通利便性の観点で絞り込んだ「立会川」「平和島」「京急蒲田」「神奈川新町」の生活利便性を見ていこう。駅から10分以内にある①コンビニエンスストア ②スーパー ③ドラッグストア ④ファストフード・ファミリーレストランの数をカウントした(図表2)

 

※対象店舗は駅から徒歩10分圏内とする。カウントするのはチェーン展開している店舗のみで、ドラッグストアには調剤薬局は含めない
[図表2]4駅の生活利便性 ※対象店舗は駅から徒歩10分圏内とする。カウントするのはチェーン展開している店舗のみで、ドラッグストアには調剤薬局は含めない

 

都内でも数少ない、坂本龍馬ゆかりの地として知られている「立会川」。駅東側に40店ほどで構成される商店街「立会川駅前通り繁栄会」があるが、単身者が利用しやすい店舗は少なめで、スーパーも小型店のみ。商業集積地のJR「大井町」駅には直線距離1㎞ほどなので、場所によっては生活圏内になる。

 

「平和島競艇場」の最寄り駅で、ボートレース開催日には多くのファンで賑わう「平和島」だが、駅周辺に商業施設の集積はそれほど見られない。しかしボートレース場のほか、様々なアミューズメント施設が集合する「BIG FUN平和島」へは、徒歩15分圏内。テナントとして「ドン ・キホーテ BIG FUN平和島店」や「業務スーパー ビッグファン平和島店」が入っており、平日も休日も楽しませてくれる。

 

京急空港線との結節点となる「京急蒲田」。JR「蒲田」駅へは、西口から徒歩15分。JR駅のほうが商業施設の集積は進んでいるが、その賑わいは京急駅近くまで続いている。駅西口エリアの物件であれば、JR駅周辺も生活圏内になり、JR線の利用も無理がなく、交通、生活どちらの利便性も高い。また駅の高架化の完成により、周辺では再開発が進行中で、今後、さらに生活利便性の向上が期待される。

 

「神奈川新町」は、メジャー駅とは言い難いが、特急が停車するなど、交通利便性は高い。しかし駅周辺に商店街はなく、コンビニも少なめ。スーパーマーケットも小型店のみ。普段の買い物はコンビニで済ませる程度という単身者であれば問題ないが、自炊も考えれば、少々不便に感じるかもしれない。

 

交通と生活の利便性を中心に、京急本線の4駅を見てきた。そのなかで「京急蒲田」駅は交通の利便性が高く、特に駅西口周辺は生活利便性も申し分ない。京急本線は「横浜」駅付近まで、JR線が並行している。JR駅のほうが商業集積地である傾向があるので、両線を利用できるエリアであれば、生活利便性は飛躍的に向上する。

 

また京急本線では、平日の朝と夜に座席指定の「ウィング号」を運行している。「品川」~「上大岡」はノンストップで、所要時間は30分程度。「上大岡」駅周辺には「京急百貨店」など商業施設が集積し、最寄り品はもちろん「買い回り品」も揃う。「ウィング号」の利用にはプラスαのコストがかかるが、満員電車の憂鬱からは解放される。

 

会社までの通勤時間よりも「座って通勤」を最優先するのであれば、「上大岡」も有力な選択肢になるだろう。

 

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