武蔵小杉の一件以降、何かと話題になっている「タワーマンション」。庶民にはうらやましく感じられていたその暮らしですが、実情はもっと複雑なようです。株式会社未来投資不動産代表取締役社長・川嶋謙一氏が、「タワマン」の実情について解説します。

「堅実な節税」と考えるか?「不公平」と捉えるか?

タワーマンションは同じ平米数の部屋だとしても高層階と低層階では価格が全く違うものです。特に最上階などの分譲価格は坪単価で2倍近くの差があるタワーマンションもあるようです。

 

この差額を利用してタワーマンション節税なるものが脚光を浴びました。平米数が同じであれば固定資産税や都市計画税も同じです。

 

これもマンション分譲価格からすれば不公平に思う人もいるかもしれません。特に相続税の問題で、現金で1億円の貯蓄があった場合、1億円に対して税率がかかりますが、その1億円をタワーマンションにしておけば、マンションの評価に対して税率がかけられます。現金が一番税率が高く、マンションは平米数に対しての評価価格になりますので、大きな節税になるのです。しかし、税務署もこの点を重視して被相続人の亡くなる前後の売買には目を光らせるようになりました。

 

マンションは区分所有法により管理組合の集会(総会)が最高意思決定機関となっています。ここでの決議によって様々なことが決められていきます。

 

ここで議決権という問題が出てきます。区分所有法第38条(議決権)では、「各区分所有者の議決権は規約に別段の定めがない限り、各区分所有者の専有部分の床面積の割合による」というものですが、土地と専有部分、共有部分などで計算がとても難しくなりますので、ほとんどのマンションは規約に別段の定めをしています。あるマンションでは、分譲当初から1住戸1議決権というところもあります。これが、一番簡単で集計も楽にできます。

 

都心のタワーマンションの中では上層階は5LDKなどの数億円の住居、下層階には3000~5000万の1LDKもあったりします。当然、専有面積が何倍も違えば、管理費や修繕積立金も3倍~10倍ほども変わってきます。

 

それなのに、議決権が同じく1議決権なのは不公平ではないかという問題が最近、提議され議論されています。それに伴い、国土交通省が「マンション標準管理規約」を改正しました。議決権割合に関する改正で「新築物件における選択肢として、総会の議決権については住戸の価値割合に連動した設定も考えられる」というものです。価値割合ということは、5000万の住戸と2億円の住戸があれば、単純に4倍違う議決権を持つことも認めるということです。

 

たとえば、お祭りをマンション全体でやろうという議題も低層階の大勢が賛成しても上層階の少ない人の反対で没になってしまうということです。これは、民主主義や多数決の原理に反することになるので賛否両論があると思います。

 

また、2016年度からは3分の2以上の賛成で建て替えができることになっていますが、区分所有法第62条の建替決議では、個人や法人が複数住戸を所有していても区分所有者としては一人としてカウントすることになっています。これも、公平なのか不公平なのかは難しい問題です。

 

公平か、不公平か?
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誰も知らない不動産屋のウラ話

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川嶋 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

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