不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

「マンションは、買ったほうが得?借りたほうが得?」

イスラム圏では、利子を得るということが教義上禁止されています。不労利得はイスラムの理念に反するということなのだそうですが、イスラム圏にも当然金融機関はあって、住宅ローンのようなことも行われています。

 

これは「イスラム金融」と言われているもので、買手の目的物をまず金融機関が取得して、買手に販売する形をとります。その際、手数料を乗せて分割払いということにすれば、利子ではなく転売差益となるため、不労利得には当たらないのだという整理です。目的物が住宅であれば、買手側から見て住宅ローンと変わらないという仕組みです。このイスラム金融のスキームは収益機会だとして、最近は日本のメガバンクや欧米の金融機関が進出しているようです。大手不動産会社も、ロンドン、ニューヨークにとどまらず、進出していくかもしれません。

 

また、イスラム金融では投機的なもの、不確実性の高いものへの投資も禁止されているそうです。不労所得と言われがちな、日本の不動産投資はどう判断されるのか聞いてみたいものです。

 

ところで、日本ではなぜ不動産投資という投資があるのでしょうか。それは、不動産を買うコストと借りるコストの間にスプレッドがあるからです。不動産を買うときのローン金利はおおよそ1~3%であるのに対し、貸した場合の賃料利回りはおおよそ4~6%程度あるため、ローンを借りて不動産を取得し、それを賃貸すれば利ざやを受け取ることができます。理論上は自分がお金をださなくたって、投資リターンを得ることが可能です。

 

もちろん金融機関が貸してくれるかどうか、安定的な賃貸収益が継続するかどうかなど、考慮する点は多く、物件選びや管理運営の巧拙もポイントになってくるのですが、ファイナンス的には、自身の「信用(クレジット)」を活用した、個人のファイナンス戦略的な投資行動と言えます。

 

金融機関は預金金利と貸出金利の利ざやで収益をあげ、不動産投資家は調達金利と運用利回りとの差で収益をあげています。つまりは「持っている人」が「持っていない人」に貸し出すことでその利用料を受け取ることができるという経済原理が存在していると言えるのです。

 

「マンションは、買ったほうが得?それとも借りたほうが得?」という議論がされることがあります。どちらがいいかは、結局「ライフスタイルの違いで決まる」という着地になることが多いようですが、先述の「持っている人・持っていない人」の論理で考えれば、買ったほうが得ということになるでしょう。家賃支払いより住宅ローン返済のほうが、経済的負担も少ないはずですし、買うことにより不動産資産も残っていくからです。

 

ただ、いったん買ってしまうと家族構成の変化や転勤等の事情に対応しにくくなるわけで、転勤の多い会社に勤めている方や、子供が生まれるまでは動きにくいという方にとっては、購入をデメリットと捉えてしまうのも理解できます。それこそ、買った物件を賃貸に出せば済むことなのですが、将来いくらの賃料であれば貸せるかというのが不透明です。

 

日本の不動産店舗の数はコンビニエンスストアより多いそうなのですが、大きく賃貸仲介か売買仲介で得意分野が分かれています。不動産資産の価値尺度として、賃料と売買価格は密接な関係にあるはずなのですが、両者を横断的に取り扱っている店舗は多くありません。購入したマンションが終の棲家になるかというと、いずれ売るかもしれないし、貸すかもしれません。売買賃貸両面からアプローチできることが求められると思いませんか。

現物資産のマンションは、インフレ対策としても効果的

◆サービス名称

『レントクリップ』(借上保証付マンション販売)

 

【ビジネス概要】

マンション購入を躊躇する理由として、転勤などの理由で、将来このマンションを使わなくなったときに、売却や賃貸の手間が生じることが挙げられます。貸すのであればローン返済以上の賃料が取れなくてはなりませんし、売却できる保証があるものではありません。「レントクリップ」では、リノベーションマンションを購入いただく際の契約に付帯する形で、当該物件を対象とした「借上げ保証サービス」を提供します。購入直後に限らず数年後でも保証期間内であれば、あらかじめ定めた金額(保証賃料)で当該マンションを借り受けることを約束するのです。

 

日本人の観念的に、マンションは「住宅すごろく」を進めていく中での一時期の住まいとして捉えられてきましたが、これからは個人の資産ポートフォリオとして、現物資産であるマンションを一定割合(複数戸)保有することを目指します。その際、賃料保証が付随していれば、安定的な資産として位置づけることが可能となります。異次元の金融緩和が続くなか、現物資産であるマンションはインフレ対策としても効果的です。親の住まい、子の住まい、賃貸など活用の選択が可能であるほか、流通市場がしっかりしている区分マンションであれば、資産の入替えにも対応しやすいのです。

 

[図表1]
[図表1]

 

30代の単身女性が1LDK、30~40㎡くらいの、いわゆるコンパクトマンションを購入する例が増えています。

 

住宅ローン超低金利が続く中では、家賃支払いよりもローン返済のほうがずっと安く済むためで、ある程度、経済的にゆとりがある、働く女性がオシャレな住まいを探すような場合はなおさらです。将来、結婚して新居を構えた後は、そのマンションを賃貸に出せば、[賃料─ローン返済分]の金額が副収入となります。マンションデベロッパーも、そのあたりのニーズを狙ったマンションシリーズを展開しています。三井不動産のパークリュクスを草分けに、三菱地所のパークワンズ、野村不動産のプラウドフラット、大京のライオンズアイルなどがそれにあたるでしょう。

 

また、マンション購入にあたって、転勤を心配して購入に踏み切れないという人もいます。将来もし転勤となった場合は自宅を売るか貸すかしなければなりません。転勤者の住まいをサポートするリロケーションサービスを担う会社はいくつかありますが、収受する賃料が不確実な中ではゆとりを持てません。また、将来ケガや病気で入院し、収入がなくなってしまった場合、所得補償保険に入っていなければ、ローン返済に窮することも考えられます。これらに限らず、将来の不測の事態に備える意味でも、購入したマンションが月々いくらの収入をもたらしてくれるか、その金額が保証されていれば安心です。レント(賃料)を物件ごとに付帯して表示していくという仕組みから「レントクリップ」と命名しました。

 

マンションの販売会社が想定賃料を算出し、将来の運用見通しを添えてマンションをセールスすることはよくありますが、多分に希望的観測にもとづく数字であり、将来にわたって、賃料の実額まで保証するものはこれまでありませんでした。数年後の賃料相場は不確実なものであり、そのリスクを取ろうとする事業者はいなかったのです。本来であれば、価格と賃料は不動産資産を両面からみた価値尺度であり、密接な関係があるはずです。価格と賃料の関係を具体的にコミットできるのがプロであり、それを可能としたものが、住み替えだけでなく、相続、投資といった、あらゆる不動産領域をビジネスにしていけるのです。「レントクリップ」では、家族構成やライフスタイルの変化など、不確定な将来の住み替えリスクに柔軟に対応するためのソリューションサービスを提供していきます。

 

「レントクリップ」事業の収益は、借り上げ保証の保証料(初回、更新時)と、第三者に転貸することによる転貸差益の両面で考えていますが、スタンドアローンで事業が成り立つには、相当の案件数が積み上がるまで待つ必要があると考えます。借り上げにより賃料保証をするということは、転貸差益を狙える一方、転貸差損もありえます。リーシングに時間がかかってしまうようだと賃料保証を行う事業者のダメージも大きくなります。このサービスが軌道にのるまでは自社物件の販売促進メニューと位置づけたほうがいいと考えるのです。

 

自社の販売する物件であれば、事業者は入居する前の室内状況を把握していますし、従前の賃料水準も把握しやすいと言えます。その他、事業者が買主に付与する販売上のアフターサービスは、賃貸運営上の小修繕と重複する場合が多く、何かと有効です。

 

「レントクリップ」はサブリースの予約契約と言い換えることもできるでしょう。サブリースとは不動産を所有者(オーナー)から借り受けて、入居者を探した上で転貸(又貸し)する事業のことをいいます。サブリース事業者にとっては、入居者に貸し出す賃料から所有者へ払う賃料を差し引いた差額が収益となり、オーナーにとっては、サブリース事業者が賃借人となってくれるので、入居者の有無にかかわらず一定賃料を確実に得られ、賃貸経営が安定するというものです。

 

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本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

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