仮に7-9月期がマイナス成長であったならば、ドイツがテクニカルな景気後退となるだけに注目された今回のGDPデータですが、辛うじてプラスを確保しました。もっとも、4-6月期がマイナス0.2%と下方修正された中での上昇だけに、ドイツ経済が現状弱いことに変わりは無いと思われます。ただ、先行きについては底打ちの兆しも見られます。
ドイツ7-9月期GDP成長率:辛うじてプラスを確保、テクニカルな景気後退を回避
ドイツ連邦統計局が2019年11月14日に発表した7-9月(第3四半期)GDP(国内総生産)速報値は前期比0.1%増と、市場予想(マイナス0.1%)に反しプラス成長を確保、テクニカルな景気後退(リセッション)入りを辛うじて回避しました。なお前期(4-6月期)のGDP成長率はマイナス0.2%と速報値のマイナス0.1%から下方修正されました(図表1参照)。
どこに注目すべきか:景気後退、底打ち、期待指数、財政政策
仮に7-9月期がマイナス成長であったならば、ドイツがテクニカルな景気後退となるだけに注目された今回のGDPデータですが、辛うじてプラスを確保しました。もっとも、4-6月期がマイナス0.2%と下方修正された中での上昇だけに、ドイツ経済が現状弱いことに変わりは無いと思われます。ただ、先行きについては底打ちの兆しも見られます。
まず、7-9月期のドイツGDP成長率を簡単に振り返ります。ドイツ連邦統計局によると、プラスに貢献したのは家計の最終投資で、第2四半期を上回る回復と説明しています。また、政府支出もプラスに貢献しています。輸出が改善した一方で、輸入は前期と同水準であったため、純輸出も改善しました。しかしながら、機械と設備への投資は前期に比べ減少したと述べています。
今回のドイツGDPが注目された理由は、2四半期連続のマイナス成長という「テクニカル」な景気後退にドイツが陥ることが懸念されたためです。
前回、ドイツがテクニカルな景気後退となったのは12年10-12月期~13年1-3月期であったため、概ね7年ぶりのこととなるところでした(図表1参照)。今後GDP成長率が下方修正されて7-9月期がマイナス成長となる可能性もゼロではないですが、景気後退リスクはトーンダウンした印象です。8月には財政政策拡大の可能性を示唆したショルツ財務相は(今日のヘッドライン19年11月11日号を参照)、追加予算による財政政策は必要がないと言明しています。
確かに、ドイツ景気の先行きを示唆する指数の中には、ドイツ経済の今後の回復を示唆するものもあります。例えば、ドイツ欧州経済研究センター(ZEW)が公表するZEW期待指数(概ね半年先の期待を反映)は足元回復しています(図表2参照)。ドイツ製造業購買担当者景気指数(PMI)などの先行指数も底打ちの前兆が見られます。
ただ、先のZEW指数のうち足元の動きを反映するZEW現状指数を見ると水準は低く、厳しい景気の現状が示唆されています。期待指数の回復も、現状よりはましという程度の水準と思われます。ピクテではドイツの20年成長率を年率で0.7%と見込んでおり、19年の予想成長率0.6%とあまり変わらない、きわめて緩やかな回復しか見込んでいません。ドイツは来年財政を拡大する予定ですが、現状は最大許容範囲内での拡大にとどめる模様です。今後の展開しだいでは、踏み込んだ対応を求められる可能性も考えられます。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ドイツ、予想に反しGDPプラス確保…先行きは底打ちの兆しも』を参照)。
(2019年11月15日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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