どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえるだろう。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 交通や生活の利便性などのデータから検討していく。今回は「六本木勤務の20代独身男性」が住むのに適した街はどこかを考えていく。

大江戸線、日比谷線沿線で平均家賃7.8万円未満の街

戦後、周辺にあった軍事施設が連合軍に接収されたことから、外国人向けの飲食店が多数軒を連ねる六本木。繁華街の印象が強い一方で、大型複合施設である六本木ヒルズや東京ミッドタウンには、グローバル企業が拠点を構えるなど、ビジネス街としての要素も併せ持つ。

 

特に2000年代前半に「ヒルズ族」という言葉が生まれたことから、六本木勤務というと、ITベンチャーや投資ファンド関連のビジネスマン、という印象が強い。この六本木で働く会社員が、家を借りるなら、どのような街がいいのか、考えてみよう。

 

六本木勤務の場合、利用する鉄道駅は、東京メトロ日比谷線「六本木」駅か、都営地下鉄大江戸線「六本木」駅。乗換なしで考えるなら、まずこの2路線沿線が候補になる。

 

さらに日比谷線は「北千住」駅で東武伊勢崎線に乗り入れ、また直接乗り入れることはないが、「中目黒」駅では、降りたホームの反対側で東急電鉄東横線に乗り換えでき、横浜方面にアクセスできる。この2路線も、六本木勤務の会社員であれば、交通の利便性で有力な候補になるだろう。

 

家賃はどうだろうか。2018年「賃金構造基本統計調査」よると、東京都にある100〜999人規模の企業に勤務の20代後半男性の月給は30万8100円。所得税、住民税、社会保険料を引いていくと、手取り額は23.6万円ほどとなる。

 

家賃の適正は手取り月収の1/3以内と推奨されることが多いので、7.8万円以内が妥当だろう。そこで前出の4路線から、最寄り駅10分圏内の1K、1DKの平均家賃を見ていこう。

 

まず大江戸線だが、「大門」「汐留」方面で家賃7.8万円以内となるのは「牛込柳町」7.72万円、「若松河田」7.68万円となるが、所要時間は40分を超える。6の字運転をしている大江戸線の場合、これらの駅に行くなら、「都庁前」で乗り換えた方が近い。しかし基本的に4番線到着、階段を昇り降りして2番線で「飯田橋」「両国」方面に乗り換えとなる。乗換なしを基本とするので、今回は考察の候補から外す。

 

一方、「光が丘」方面の場合、平均家賃7.8万円以内となるのは「東中野」7.41万円。これ以降の駅はすべて7.8万円を下回り、特に日本大学芸術学部など3大学に近い「新江古田」は平均家賃5.79万円と、大江戸線沿線でも最も低い。家賃最優先というなら有力候補だろう。

 

日比谷線を見ていこう。「銀座」方面の場合、平均家賃7.8万円以内となるのは「入谷」「三ノ輪」「北千住」の3駅。「北千住」以降は東武伊勢崎線となり、各駅7.8万円未満。都内でも「竹ノ塚」は5.63万円、東京都を超えて「草加」では4.89万円と5万円を切る。ただし所要時間は50分弱。通勤時間よりも家賃の安さを優先させるなら、東武伊勢崎線沿線も、候補になるかもしれない。

 

「中目黒」方面では、東横線に乗り換えて「都立大学」で7.61万円。隣の「自由が丘」は急行停車駅という利便性から、平均家賃も8.44万円と高くなるが、さらにその隣の「田園調布」で7.89万円、「多摩川」で6.97万円と下落。以降の駅も平均家賃7.8万円未満の駅が続く。

 

では交通の利便性だけで候補を絞っていこう。各方面で、最も「六本木」からの所要時間が短く、かつ平均家賃が7.8万円以内の駅をピックアップすると、大江戸線では「東中野」(六本木駅から19分)、日比谷線「銀座」方面では「入谷」(六本木駅から29分)、「中目黒」方面では東横線に乗り換えで「都立大学」(六本木駅から15分)。ただし「都立大学」は、乗り継ぎがスムーズにいった場合を想定しており、場合によっては、プラス5分程度の所要時間がかかることを付け加えておく。

 

出所:平均家賃 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(11月15日時点) ※所要時間は電車による異なる
[図表1]六本木から乗り換えなしの通勤圏内で、家賃7.8万円以内の駅 出所:平均家賃 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(11月15日時点) ※所要時間は電車による異なる

 

通勤時間帯の利便性を見ていこう。平日朝8時台の電車本数を見ていくと、「入谷」は2分に1本、「東中野」は3分に1本、都立大学は4分に1本の割合で電車が来る。3駅とも、申し分ない。

 

[図表2]各駅の平日朝8時台の電車本数

 

一方、平日の終電時間を見てみると、11月15日現在、「東中野」「都立大学」ともに、「六本木」0時37分発となる。一方「入谷」は0時1分発と30分以上早く、飲み会の際には、「お先に失礼します」というシーンが増えそうである。

六本木からも近く、生活の利便性が高い「東中野」

次に生活の利便性を見ていこう。20代独身男性のライフスタイルを考えて、駅から10分以内にある①コンビニエンスストア ②スーパー ③ドラッグストア ④ファストフード・ファミリーレストラン の数をカウントした。

 

※対象店舗は駅から徒歩10分圏内とする。カウントするのはチェーン展開している店舗のみで、ドラッグストアには調剤薬局は含めない
[図表3]3駅の生活利便性 ※対象店舗は駅から徒歩10分圏内とする。カウントするのはチェーン展開している店舗のみで、ドラッグストアには調剤薬局は含めない

 

「東中野」は以前は雑多な雰囲気の住宅街だったが、近年は再開発により、洗練さと昔らしさが同居するエリアになった。駅中心に生活利便性の高い店が程よく点在し、独身男性には住みやすい環境だといえる。特に駅前には25時まで営業の比較的大きめのスーパーが2店あり、独身男性には強い味方だろう。

 

「入谷」は寺社仏閣が多い住宅地。コンビニは程よく点在するが、スーパーは少なく、しかも小型店舗。ファストフードが少ないため、食事は勤務先近くで済ませる、というパターンが多くなりそうな街だ。

 

「都立大学」は高級住宅地としても人気のエリアのためか、コンビニは少なめ。しかし他はジャンルは駅前を中心に充実。また洗練された街の多い東急東横線沿線駅だけあり、センスのいい店が点在。線路の高架下には、東急電鉄による「いい街 いい電車 プロジェクト」第一弾の商業施設「ToristuNade(トリツナード)」.が2015年にオープン。コーヒー専門店やイタリアンバル、精肉店など、14の店舗が軒を連ねる。

 

以上、交通の利便性と生活の利便性、両面から見てきたが、双方を兼ね備えた「東中野」が、六本木勤務の20代独身男性にとって、もっとも住みやすい街だという結果になった。

 

最後に「せっかくだから都心ライフを楽しみ尽くしたい」という人もいるだろう。そこで「六本木に住む」ことを考えたところ、「六本木」の平均家賃は1K・1DKで16.77万円と、さすが都心だけあり高い。月収としては50万円以上でないと、都心住まいは難しい、というのが現状のようだ。

 

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