丸ノ内OL…「通勤30分で住める街」は9駅
東京駅を中心に、北で大手町と隣接している丸の内は、東京を代表するオフィス街として発展。日本の金融、経済の中心地として、大手銀行や大手企業のビルが建ち並ぶ。
昭和の後期には、この界隈で働く女性を指す「丸の内OL」という言葉が生まれた。働く女性の代名詞として使われてきたが、このような女性が住みやすいのは、どのような街なのか、考えてみた。
2018年「賃金構造基本統計調査」よると、東京都にある1000人規模の企業に勤務の20代後半女性の月給は320,900円。所得税、住民税、社会保険料を引いていくと、手取り額は25.3万円ほどとなる。
家賃は手取り月収の1/3以内と推奨されることが多いので、家賃は7.5万円以内。物件は最寄り駅から10分圏内、さらに女性ということで防犯性を重視し、二階以上でオートロックの1K、1DK。通勤時間は乗換なしで30分以内。以上を条件とし、通勤利用駅から20分(最寄り駅から10分ほど歩くことを想定)圏内で、平均家賃が合致する駅を探していく。
丸の内勤務の場合、利用する駅は「東京」駅、「大手町」駅、「二重橋」駅が候補となる。「東京」ではJRのほか、東京メトロ丸ノ内線、「大手町」では東京メトロ丸ノ内線、半蔵門線、千代田線、東西線、都営地下鉄三田線、「二重橋」駅では千代田線が利用可能だ。
JR「東京」駅に乗り入れるのは、新幹線を除き、山手線、中央線、京浜東北線、上野東京ライン(宇都宮線、高崎線、常磐線)、東海道線、横須賀線、総武快速線、京葉線と8路線。これらの路線沿線で条件をクリアしたのは、山手線「西日暮里」、上野東京ライン(常磐線)「北千住」、総武快速線は「錦糸町」「新小岩」「市川」の6駅だった(図表1)。
地下鉄路線を見ていこう。条件をクリアしたのは、東京メトロ千代田線「町屋」「北千住」「綾瀬」、東京メトロ東西線「南砂町」「葛西」「浦安」(快速利用時)の6駅(図表1)。「北千住」はJR利用時で既出なので、全12駅がまずは条件をクリアした。
次に通勤の利便性として、通勤時間帯の電車本数を見ていく(図表1)。平日朝8時台の電車本数は、JRでは3〜4分に1本、東京メトロでは2〜3分に1本の割合で電車が来るので、どの駅でも申し分ない。
ただし、JR上野東京ラインの「北千住」駅利用で東京駅に乗換なしで行ける電車は5本のみ。また東京メトロ東西線「浦安」駅に関しては、朝8時台に快速電車の運転はなく、所要時間20分を超えてしまう。そのため以降は、JR上野東京ライン「北千住」、東京メトロ東西線「浦安」の2駅は、候補から除外して考えていく。
丸の内OLが「安心&住むのに便利な街」は?
次に生活利便性を見ていこう。駅から10分以内にある①コンビニエンスストア ②スーパー ③ドラッグストア の数をカウントした(図表2)。
候補である9駅のうち「錦糸町」や「北千住」は、広域から人が集まる繁華街であり、「錦糸町」であれば「錦糸町PARCO」「丸井錦糸町店」「アルカキット錦糸町」「北千住」であれば「ルミネ北千住店」「北千住マルイ」など、大型の商業施設もあり、最寄り品はもちろん、買回り品も最寄り駅周辺で揃えることができる。
「新小岩」も駅の南側に全長420mの商店街「新小岩ルミエール商店街」が続くなど、比較的大きな繁華街を形成。「市川」は市川市の中心であり、行政機関も揃うなど、利便性の高い駅である。
「西日暮里」駅はJRと千代田線、2路線で都心へアクセスできる。駅の東側は飲食店が集積するエリアだが、寺社が点在する西側は落ち着いた住宅地が広がる。コンビニやスーパー等も駅周辺を中心に点在するが、規模が小さく、自炊派の人は少々物足りなさを感じるかもしれない。
「綾瀬」「町屋」「葛西」は住宅地ではあるが、駅周辺にはコンビニやスーパー、ドラッグストアのほか、さまざまな商店が集積。最寄り品を買うのに困ることはない。
他の駅に比べて店舗の少ない「南砂町」は近年再開発が進み、「イオン南砂町店」などが入る「トピレックプラザ」や、イオンやカインズホームなどが入る「南砂町ショッピングセンターSUNAMO」といった大型SCがあり、こちらも生活するには十分だろう。
次に安全面を見ていこう。警視庁が発表している「平成30年区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数」を見てみると(図表3)、都内でも有数の繁華街を形成する「錦糸町」では犯罪認知件数が712件と、頭一つ抜けている感がある。
特に昔ながらの飲食店が多い「江東橋3丁目」は、強盗などの凶悪犯、暴行などの粗暴犯が他エリアよりも突出している傾向にある。
同じく飲食店が集積する「北千住」の「千住2丁目」「千住旭町」、「西日暮里」の「西日暮里2丁目」、「新小岩」の「新小岩1丁目」も、凶悪犯、粗暴犯の多いエリアである。一方「西日暮里」駅の西側、特に「台東区谷中5~7丁目」は犯罪認知件数が少なく、安全な住環境といえる。
一方で「葛西」や「南砂町」で目立つのが、非侵入窃盗。平坦な道が多い江東区、江戸川区は自転車の利用が多く、「葛西」では駅周辺、「南砂町」では大型SCのある「南砂6丁目」で自転車の窃盗が多い傾向にある。
同じように「綾瀬」も駅周辺で自転車の窃盗が目立っているが、今回の候補駅周辺で一番犯罪認知件数が少なかったのが「町屋」だった。駅周辺に自転車をとめられるスペースがあまりなく、そもそも自転車利用が少ない、という事情もあるかもしれないが、実は「町屋」のある荒川区は東京23区のなかでも犯罪認知件数が2番目に少ない区である。一方「葛西」のある江戸川区は、軽犯罪の件数が多く、東京23区のなかでは4番目に犯罪認知件数が多い区である。
今回「市川」は同様のデータはなく比較ができなかったが、市全体の犯罪認知件数は平成30年度3400件とあり、今回対象となった区では、葛飾区(3654件)と台東区(3153件)の間に位置する。
以上のように、交通、生活、安全、それぞれの面で見てきたが、「20代後半丸の内OL」が安全かつ住みやすい街として、(意外にも)「町屋」は有力な候補になるという結果になった。
もちろん繁華街を形成する「錦糸町」や「北千住」は、エリアを選べば生活の利便性は都内でもトップクラス。さらに「錦糸町」は東京メトロ半蔵門線で「渋谷」方面に、「北千住」は東京メトロ日比谷線や千代田線を利用で「六本木」や「原宿」方面にダイレクトにつながる。交通の利便性も文句のつけようがない。
自転車の窃盗が目立つ「葛西」や「南砂町」も、防犯対策さえしっかりしていれば、安全に便利に暮らせる街である。
今回の結果は、あくまでも住まい選びのひとつの参考として見てもらえればいい。