どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえるだろう。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 交通や生活の利便性などのデータから検討していく。今回は「新宿勤務の20代独身男性」が住むのに適した街はどこかを考えていく。

新宿勤務の会社員にとって選択幅が広いのは「京王線」

会社員にとって、どこに住むかは重要だ。通勤時間は短い方が、仕事のパフォーマンスは上がる。一方で、家賃に多くがとられては資産形成もままならない。もちろん生活するうえで、便利なところがいい。所帯があれば、教育環境も気になる……。色々な条件で検討したうえで、最適解を見つけていく。

 

そこで今回、様々なデータをもとに、「住みやすい街」を考えた。想定したのは、新宿勤務の20代男性。男性の1人暮らしであれば、家賃のほかに重要視するのは、まず交通の利便性。次に生活の利便性といわれている。

 

平成29年度「民間給与実態統計調査」によると、男性20代後半の平均年収は393万円。平均給料・手当に対する賞与割合は男性 19.7%なので、推定月収は約26万円となり、所得税、住民税、社会保険料を引いていくと、手取り額は20.1万円ほどとなる。家賃は手取り月収の1/3以内と推奨されることが多いので、最寄り駅から10分圏内で、1K・1DK平均家賃が6.7万円以内のエリアを探していく。

 

通勤時間はどうだろう。同年代に話を聞くと、電車で15分程度という声が多く聞かれたので、ひとまず、「新宿」駅から15分以内で、平均家賃6.7万円以内のエリアをピックアップしていこう。

 

「新宿」駅には、JR、京王電鉄、小田急電鉄、東京メトロ丸ノ内線、都営地下鉄新宿線、大江戸線と、5社局が乗り入れる。西武新宿線はターミナル駅としての機能は「高田馬場」なので、いったん、今回の考察では除外する。

 

まず京王線。通勤時間15分圏内は、「新宿」~「八幡山」と、快速列車利用で「千歳烏山」。そのうち家賃の条件をクリアしたのが、「下高井戸」「桜上水」「上北沢」「八幡山」「千歳烏山」の5駅だった。京王線の平日の終電は、0時35分発「調布」行き各駅停車で、飲み会帰りも安心だ。

 

「新宿」から「京王八王子」などを結ぶ京王線
「新宿」から「京王八王子」などを結ぶ京王線

 

次に小田急線。通勤時間15分圏内は、「新宿」~「千歳船橋」。家賃の条件をクリアしたのは3駅で、「豪徳寺」「経堂」「千歳船橋」。平日の終電は、「千歳船橋」であれば0時39分発「向ケ丘遊園」行き各駅停車、「豪徳寺」「経堂」であれば、0時53分発「経堂」行き各駅停車となり、京王線よりわずかながら余裕がある。

 

都営地下鉄大江戸線で、通勤時間と家賃の条件をクリアしたのは「新江古田」の1駅のみ。平日の終電は0時46分発「光が丘」行きと、意外と余裕がある。

 

東京メトロ丸ノ内線は、通勤時間15分圏内は「新宿」~「荻窪」、支線で~「方南町」、「新宿」~「銀座」と幅は広いものの、平均家賃で条件をクリアした駅は「方南町」のみ。平日の終電は0時15分発「荻窪」行き(「中野坂上」乗換え)と他の路線と比べて早めなので、新宿で飲み会の際は注意が必要だ。

 

都営新宿線は、通勤時間15分圏内は「新宿」~「馬喰横山」、さらに急行利用で「森下」も視野に入るが、家賃の条件をクリアする駅はなかった。またJRも同様だった。

 

出所:平均家賃 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(10月30日時点)
[図表1]「新宿」駅から15分以内、家賃6.7万円の駅 出所:平均家賃 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(10月30日時点)

 

このように見ていくと、「新宿」勤務で住まい選びの対象となる路線のうち、京王線の選択肢の幅が光る結果となった。

交通、生活、共に利便性が高い「千歳烏山」

次に、京王線に絞って見ていこう。まず通勤を考えるなら、電車本数が多い方が何かと便利だ。朝8時台の電車本数を見ていくと、快速列車が停車する駅と通過する駅とのギャップが目立った。

 

京王電鉄では、有料列車のほか、特急、準特急、急行、区間急行、快速、各停が運転されているが、「千歳烏山」は準特急から、「桜上水」は急行から停車する。朝8時台は、2、3分おきに電車に乗れる計算だ。一方、その他の駅は8時台の電車は10本前後と、前出2駅の1/2の本数となる。とはいえ、朝のラッシュ時に5~6分おきに電車は来るので、数字ほど不便さは感じないだろう。

 

[図表2]京王線5駅の平日8時台の電車本数

 

続いて、生活の利便性を見ていこう。20代独身男性のライフスタイルを考えて、駅から10分以内にある①コンビニエンスストア ②スーパー ③ドラッグストア ④ファストフード・ファミリーレストラン の数をカウントした。

 

駅前に都内でも有数の商店街がある「千歳烏山」は、コンビニが12店、スーパーが5店、ドラッグストアは10店と、特に最寄り品を買うスポットが充実。街の規模に比べて、ファストフード・ファミリーレストランは少ないが、その分、地元にしかない飲食店は非常に充実している。

 

一方、街の規模に対して「下高井戸」「桜上水」「八幡山」は、ファストフード・ファミリーレストランが充実。日本大学文理学部の最寄り駅である「下高井戸」「桜上水」は学生をターゲットに、近くを環状8号線が走る「八幡山」はドライバーをターゲットに、店舗の立地が進んでいるためと考えられる。

 

生活の利便性では、男性の一人暮らしに便利な店舗が充実している「千歳烏山」が、頭一つ抜きでている印象だ。

 

※対象店舗は駅から徒歩10分圏内とする。カウントするのはチェーン展開している店舗のみで、ドラッグストアには調剤薬局は含めない
[図表3]京王線5駅の生活利便性 ※対象店舗は駅から徒歩10分圏内とする。カウントするのはチェーン展開している店舗のみで、ドラッグストアには調剤薬局は含めない

 

交通、そして生活の利便性を見てきたが、総合的に見て、新宿勤務の20代独身男性が住みやすい街として推せるのは、「千歳烏山」といえそうだ。

 

もちろん、住まい選びにおいて優先する条件は人それぞれ。通勤時間が長くてもいいから始発で座って通える街にこだわるのであれば、京王線の場合、7時台に2本の始発電車がある「府中」(新宿まで特急利用で20分)や、毎時間始発電車のある「高幡不動」(新宿まで特急利用で30分)などが候補になるし、月収の4割まで家賃を出せるというならば、新宿から2駅の「幡ヶ谷」(駅から10分以内、1K・1DKの平均家賃8.0万円)も候補エリアとなる。

 

さらに今回は考察対象から除外したが、勤務先が北新宿方面であれば、「西武新宿」駅の利用が便利で、実際の居住地選びの際には、西武新宿線は選択肢となるだろう。西武新宿線は平均家賃が安く、同条件で考えると、「新井薬師前」~「鷺宮」、「上石神井」あたりの駅が、有力な候補となる。

 

今回の結果は、あくまでもデータによる最適解。住まい選びの、1つの参考にしてほしい。

 

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