なぜ、「株主優待」が人気の銘柄(優待株)は初心者でも安心して投資できるのでしょうか。優待株投資のメリットと合わせて探っていきましょう。

最大の魅力は「株価の安定性」

株式に投資する投資家は、大きく分けて次の3つに分類できます。

 

年金、保険、証券会社などの「機関投資家」。海外に拠点を置き、日本の株式市場に投資を行う「外国人投資家」。日本国内に住居を持ち、投資額は少額ながらも大多数が売買を行う「個人投資家」です。

 

投資家ごとに投資スタイルも異なります。「機関投資家」は潤沢な資金を持ち、中長期で投資を行う傾向にあります。「外国人投資家」の場合は短期から中長期まで様々な売買手法で取引を行っています。「個人投資家」は知名度が高い大型企業や市場で話題となる企業、株主優待を実施する企業などを投資先とする傾向が強く、投資期間はまちまちです。

 

株主優待を実施し、かつ人気となっている企業は個人投資家比率が高い特徴があります。個人投資家がどのぐらいの割合を占めているかは企業の有価証券報告書の株式等の状況内にある「所有者別状況」で確認することができます。

 

有価証券報告書とは、金融商品取引法に基づいて企業が事業年度ごとに作成する企業内容の開示資料です。上場企業などの該当企業に提出が義務付けられており、個人投資家も財務局、金融庁のWEBサイト(EDINET)や、証券取引所・企業のWEBサイトなどで確認することができます。

 

例として、コロワイド(7616)を挙げます。コロワイドは居酒屋の「甘太郎」やパスタ・ピザの「ラ・パウザ」など様々なジャンルの飲食店を展開しています。500株以上の保有で、株主優待カードのポイント付与が受けられます。利用対象店舗が多いため、使い勝手が良く、店舗を利用しない方でもポイント数に応じて優待商品と交換できる点が人気のポイントとなっています。

 

コロワイドの有価証券報告書で株主の構成比率を確認します。比率を見てみると、《金融機関》9.82%、《金融商品取引業者》0.76%、《その他の法人》9.54%、《外国法人等》1.31%、《個人その他》78.59%となります(下記図表1参照)。

 

[図表1]コロワイド(7616)有価証券報告書(2015年3月期)

 

《個人その他》の比率が78%以上と高く、この企業におけるメイン株主であることがわかります。《個人その他》は、個人投資家だけでなく、企業関係者や親族、そして自己株式も含まれる場合があります。つまり、安定株主と捉えることができます。

 

コロワイドの個人株主比率がこれほどまでに高く、個人投資家に支持されるのは、株主優待品の充実など、個人の株主を意識した動きが活発なことも要因となっています。

 

個人投資家に優しい企業の株式は株価も安定しやすく、外国人投資家の売買に振り回される可能性も少ないことが、株価の安定に一役買っています。他にも多くの株式が個人投資家に支持されています。

 

個人株主比率が50%を超える株式をランキング形式でご紹介します(下記図表2参照:個人株主比率の高い企業ランキング/本決算時の有価証券報告書で個人株主比率が50%以上、株主優待実施企業、時価総額が500億円以上の株式をスクリーニング)。

 

[図表2]個人株主比率の高い企業(有価証券報告書ベース)

人気の優待銘柄ほど株価を「支える」買いが入る

人気の優待銘柄は、一時的な株価の調整局面においても有利に動きやすくなります。その株主優待が人気であるほど、株価を支える買いが入り、大きな値崩れを防いでくれる効果を期待できます。

 

記憶に新しい2008年の金融危機、リーマンショック時の株価を振り返ってみます。

 

2008年9月15日にリーマン・ブラザーズの破綻が報じられ、その影響を受けた日経平均株価も大きく下落しました。リーマンショック前の2008年9月12日に1万2214円をつけていた日経平均株価は、リーマンショック後に安値(終値ベース)をつけた10月27日には7162円と、約1カ月半で約41%の下落率となりました。

 

一方、個人の株主数が多いコロワイドを見てみると、同期間の下落率は約17%、吉野家HD(9861)の下落率は約31%と日経平均よりも下落率が小さいことがわかります(下記図表3参照)。

 

[図表3]リーマンショック直後の日経平均と人気優待銘柄の株価比較

 

コロワイドや𠮷野家HDの業績の強みもさることながら、リーマンショックのような世界的な金融危機時にも、売りが入りづらく、大幅な下落を防いだ要因と判断できます。

 

また、リーマンショック後1年間の株価比較を見てみても、日経平均と比較してコロワイドや𠮷野家HDは株価の立ち直りが非常に早いことがわかります。この結果から、株価が大きく下落したタイミングで株主優待を目的とした買付が入りやすかったと考えられます(下記図表4参照)。

 

[図表4]リーマンショック後1年間の日経平均と人気優待銘柄の株価比較

 

このように、株主優待を目的とした個人投資家が株価を支える傾向がある・・・これが人気の株主優待銘柄の頼もしいところです。株主優待が人気で個人の株主比率が多い銘柄であれば、初心者の方も安心して保有することができます。

本連載は、2016年1月27日刊行の書籍『勝てる!「優待株」投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を解説したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。本連載の内容に関して投資した結果については、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

勝てる!「優待株」投資

勝てる!「優待株」投資

藤井 明代

幻冬舎メディアコンサルティング

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