人気の「優待銘柄」は特有の値動きをする傾向にある
株主優待が人気の銘柄は、外国人投資家が大量に取引する銘柄とは違い、値動きは安定的なのでしょうか。
優待実施企業の株価が米国や中国の株式市場の値動きに関係なく、全く変動しないということはありません。優待が人気の企業であっても市場全体の動きに連動し、上下に変動します。もちろん個々に業績などのニュースが出た場合には、それが材料となり大きな値動きとなる場合もあります。
しかし、人気の優待銘柄は特有の値動きをする傾向にあります。株主優待を受け取りたい投資家は、権利付最終日までに株式を買付し、権利落ち日まで保有することで優待を受け取る権利を得ます。
権利落ち日以降、株主優待の獲得という目的を達成した投資家は、株式を手放す傾向が見られます。そのため、権利付最終日に向かって株価が上昇しやすく、権利落ち日以降に株価が下落しやすい傾向にあります。
株主優待が人気の銘柄ほどその傾向は強いため「株主優待銘柄は優待投資家の心理に左右されやすい」と言えます。
株価が安定して大崩れしにくいのも「優待銘柄」の特徴
一例として、日本マクドナルドホールディングス(2702)を挙げます。同社は業績不振が伝えられていますが、以前と変わらずに株主優待を続けています。決算後や権利落ち日以降に株価が下落基調にあっても、再びチャートは上昇に転じており、株価は2015年11月中旬現在、2000円台後半の水準で推移しています(下記図表参照)。
[図表]日本マクドナルド(2703)週足チャート(2015年11月20日現在)
また、個人株主が多いことで、株価が安定しやすい傾向がある点にも注目です。日本マクドナルドは、2014年7月にマクドナルドのサプライヤーの一つである「上海福喜食品有限公司」が、使用期限切れの鶏肉を混入させた「チキンマックナゲット」を製造したと明らかになりました。
その後、株価は一時大きく下落し、同月に業績の下方修正を発表。その後も、既存店売上高は連続で前年比マイナスとなる状態が続きました。また、直近の2015年11月に発表した15年第3四半期累計の決算でも、前年同期比で減収、赤字拡大となりました。
しかし、株価は非常に底堅い動きを見せ、2015年11月中旬現在で、期限切れ鶏肉問題が発覚する前の株価水準を回復するに至っています。このような値動きの背景には、魅力的な株主優待を出し続けていること、そして、同社のファンが株式を保有し続けていること、これが株価の下支えの一要因になっていると考えられます。
もちろん個人投資家に好まれ、安定した値動きの傾向を持つ銘柄も、株主優待や上場の継続性への懸念が強くなれば、それが反対に強い売り圧力になることもあります。
しかし今回解説した理由から、魅力的な株主優待を実施している企業は、実施していない企業よりも株価の値動きに強みがあるのは確かです。株価が安定しやすく、大崩れしにくい人気の株主優待銘柄を投資先とし、その中から選りすぐりの企業を見つけ出すこと。これが失敗しにくい投資への第一歩と言えます。