不倫の慰謝料、相場は?「妻にはまったく未練がないけど…」

離婚原因で多いものの1つが不倫。自分に非がある場合は、離婚に際し不利になるポイントが色々とあります。今回は男性の不倫が離婚原因の場合について見ていきます。※本連載は、弁護士の稲葉治久氏の著書『男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編し、よくある男女トラブルと、それに適切に対応するための法的知識をわかりやすく解説していきます。

男性の不倫が離婚原因…慰謝料の相場は?

◆男性が不倫して離婚する場合(Eさんのケース)

 

Eさんは妻との仲が思わしくないこともあり、職場の女性と不倫関係になっていました。最近、その不倫相手から「私、Eさんと結婚したい。奥さんと別れることはできないの?」とことあるごとに言われています。

 

「彼女も先日の誕生日で、30歳という節目を迎えたから、結婚願望がより強くなっているのだろう。そういえば、『地元で一番仲良しの友達がずっと不妊治療をしていて、昨年、ようやく赤ちゃんを授かったの……送られてきた年賀状に写っていたその子の写真を見ていたら、なぜか涙が出てきて、止まらなくて』なんてことも言っていたな。妻にはまったく未練がないから、別れてもいいのだが……ただ、浮気が原因で離婚すると財産を全部渡さなければならないと聞いたことがあるので、それだけは心配だ」

 

Eさんは不倫している男性の立場から、妻に対して離婚を求めることを考えています。この場合、夫の側が全面的に非を負うことになるので、「性格の不一致」などを理由とする場合に比べて、離婚を実現するためには、相当の覚悟と金銭的負担が必要になるでしょう。

 

まず、妻に対する慰謝料は当然支払わなければなりません。先にも触れたように、不貞が原因で離婚する場合の慰謝料は、一般的なサラリーマン家庭では、200~300万円程度が相場になります。

 

なお、不貞行為をした理由について、夫の側に同情すべき点がある場合には、裁判所で慰謝料が算定される際に考慮してもらえる可能性があります。たとえば、妻に性交渉を拒まれ続けていたような状況があれば、「不倫をしたことに関してくむべき事情がある」とみなされて慰謝料の額が軽減されるかもしれません。

 

ちなみに、このようなセックスレス(性交渉拒否)の状況が長期に及べば離婚原因にもなり得ます。実際、セックスレスを原因として、離婚が認められた裁判例もあります。

 

性交渉拒否が離婚原因に
性交渉拒否が離婚原因に

全財産を妻に取られることを覚悟する

一方、財産分与に関しては離婚の原因が、性格の不一致であれ、夫の不貞であれ原則は2分の1ずつであることに変わりありません。不倫をしたからといって「罰としてすべての財産を妻に渡しなさい」などという判決が裁判で行われることはありません。

 

とはいえ、2分の1の財産を渡すだけで、奥さんが離婚に納得し、同意してもらえるかというとその可能性は極めて低いでしょう。

 

「何言っているの。勝手に浮気をしておきながら、虫のいいことを言わないでちょうだい。離婚をしたければ、何も持たずに丸裸で出て行きなさいよ!」などというような厳しい要求を、突きつけられるのはまず間違いありません。

 

実際、筆者がこれまでにサポートしてきた不倫絡みの離婚案件に関しては、そのほとんどで妻が離婚に合意する条件として、夫は自宅も含めた相当の財産を妻に引き渡しています。

 

「不倫相手と一緒になりたいから、どうしても別れたい」という気持ちが見透かされてしまっているので、財産分与における交渉においては妻のほうが圧倒的に有利な立場に立っていることは十分に承知しておく必要があります。出された条件をすべてのみ、一切の財産を投げうつ覚悟がなければ離婚はまず成立しないと思ってください。

 

身ぐるみをはがされたくなければ不倫の事実は妻に知られないようにする

 

ただ、どうしても「すべての財産を失うのは困る。何とかならないか」というのなら、配偶者に不倫の事実は絶対に知られないようにすることです。

 

離婚を切り出すにしても、たとえば「あなたとは性格が合わないから、もうこれ以上は結婚を続けることができない」というように、性格の不一致など別の理由をあげるようにしましょう。

 

また、離婚の意思を伝えたら、すぐに家を出て別居することを勧めます。配偶者と別居している状態が続けば、裁判では婚姻関係が実質的に破綻していると評価される可能性が高まるからです。

 

配偶者以外の女性と肉体関係をもった場合でも、それが婚姻関係が実質的に破綻した後であれば「不倫によって婚姻関係が破壊された」とは言えないので慰謝料の対象や離婚原因にはなりません。

 

ただし、婚姻関係の破綻は客観的に認められることが必要です。たとえば、「私たちはもう何年も仮面夫婦であり、家ではまったく言葉を交わしていない」などと夫が主張しても、そのような実情を知らない第三者の口から「お二人はともに暮らして子育ても一緒にしており、ごく普通の夫婦に見えました」などと証言されれば、裁判所に婚姻関係が破綻していると認定されることはないでしょう。

 

そこで、婚姻関係が破綻している状況を客観的に示すために、つまりは「あの夫婦は完全に終わっている」と誰の目にも明らかな状況を作るために、きっちりと別居をすることが必要になるのです。

 

なお、男性の相談者のなかには、

 

「不倫する前から妻とは不仲で、離婚の話もしていました。そして、単身赴任をきっかけに私は家に帰らなくなり交流もほとんどなくなったのですが、これなら婚姻関係が破綻していると言えますよね」

 

などと確認してくる人がいますが、単身赴任で別々に暮らしている程度では別居しているとは言えません。ときおり家に帰宅することもあるようならなおさらなので、くれぐれも注意してください。

不倫相手が嘘の証言…懲役10年の刑の場合も

このように、別居した後であれば、たとえ妻以外の者と肉体関係をもったとしても、「婚姻関係が破綻した後に交際を始めたのだから、不貞行為ではない」という反論を展開することが可能になります。

 

もっとも、裁判になった場合には、不倫相手の女性が法廷に呼ばれて証言を求められる可能性はあります。その場合に、別居前から関係があったのにもかかわらず、「交際を始めたのは別居後からです」などと女性が嘘の証言をすれば、偽証罪に問われるおそれがあることは覚えておいてください。

 

ちなみに、偽証罪の最高刑は懲役10年なので決して軽い罪ではありません。また、裁判で嘘の証言をするよう促したりなどすれば、同罪の教唆に問われる可能性があるので、そのような真似は間違ってもしないでください(なお、訴訟の原告・被告が嘘の証言をしても偽証罪にはなりません)。

妻と別れたくなければ不倫相手とは完全に縁を切る

ここまで、妻と別れることを前提に不倫が原因で離婚する場合の対策手段等について紹介してきましたが、「いや、自分はできれば離婚したくない」という人もいるでしょう。

 

その場合には、奥さんに何とか離婚を思いとどまってもらうしかありません。ただひたすら謝り、説得し、後は運命に任せるしかありません。

 

また、不倫相手との関係は完全に解消することです。このときに、男性が犯しがちな過ちは、妻と不倫相手、双方へうまく立ち回ろうと考えることです。

 

要するに、不倫相手にもいい顔をしようとするわけですが、そのようなことをすれば「やっぱり、奥さんよりも私のほうを愛しているのね」などとあらぬ誤解を与えることになりかねません。

 

その結果、相手が「私のほうが大切なのに、○○さんはあの女がいるために苦しんでいる。ならば、いっそのこと、私が……」などと衝動的に恐ろしい行動に出てしまうことも、あり得るかもしれません。

 

自分を過信したり、女性を甘くみると手痛いしっぺ返しを食うことになります。いったん離婚しないと決めたら、腹をくくって、不倫相手とはすぐに完全に縁を切ることです。

 

 

稲葉セントラル法律事務所
東京弁護士会 代表弁護士

1976年茨城県生まれ。江戸川学園取手高校卒業。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。青年海外協力隊員としてアフリカ・ジンバブエでボランティア活動。関東学院大学法科大学院卒業。平成24年弁護士登録都内大手法律事務所勤務。平成28年7月より稲葉セントラル法律事務所を開設。メディアへの出演・法律監修多数。

著者紹介

連載男女トラブルのダメージを最小化する法律ノウハウ

男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学

男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学

稲葉 治久

幻冬舎

不倫、離婚、セクハラ、痴漢冤罪…… 男女の間には何かとトラブルがつきものです。 昨今マスコミをにぎわせている芸能人、著名人の不倫トラブルに典型的に示されているように、 男女トラブルは訴えられた側に甚大なダメージ…

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