妻に不倫された場合、慰謝料はどうなる?
前回(関連記事「不倫の慰謝料、相場は?「妻にはまったく未練がないけど…」」)男性側が不倫された場合の対応方法について触れました。妻に不倫されたとしても、「本当にごめんなさい。反省しているわ」「わかった、今回だけは許そう」などと、その後、夫婦の関係が元に戻るのであれば、もちろんそれにこしたことはありません。
しかし、残念ながら、最終的に離婚へと至ってしまった場合には、妻に対してどのような要求が可能となるのでしょうか。また要求する際にはどのような点に注意を払っておくべきなのでしょうか。
まず、慰謝料の請求とあわせて財産分与を求めることができるのは、夫の不倫が原因で離婚する場合と変わりありません。
そして、妻の不倫が原因で離婚することになったのですから、この場合、夫は財産分与の交渉を自分に有利な形で進めることが可能となるでしょう。
すなわち、妻のほうから「不倫相手とどうしても一緒になりたいから離婚してほしい」と求められたときには、「別れてあげてもよいが、ただし、こちらの財産は一切、分与しない。一銭たりとも分けないからな」と強気の条件を示せば、おそらく「それで構わない」と応じる女性が少なくないはずです。
その結果、本来であれば、与えなければならなかった財産を与えずにすむ、つまりは自らの財産を守ることが可能となるわけです。
不倫相手への慰謝料請求は、財産分与の前に行う
ただし、ここで一つ注意が必要となるのは、妻に対して財産分与を行わなかった場合には、不倫相手から慰謝料を得られなくなるおそれがあることです。
妻に不倫された場合、夫は不倫相手に対して慰謝料を請求できます。それに対して、相手は「慰謝料は、財産分与を行わなかったことによって、すでに実質的に支払われている」と主張してくる可能性があります。妻側が本来、財産分与により受け取ることができた金銭と、慰謝料相応額を相殺させたのだというわけです。
このような相手側の主張が、実際、裁判では認められることがあります。つまりは、「妻を裏切らせた憎たらしい男に慰謝料を払わせて、痛い目にあわせたい」という思いがかなえられなくなるおそれがあるわけです。
それを避けたいのであれば、不倫相手への慰謝料請求を離婚する前に行うことです。それなら、当然、相手は財産分与を理由として慰謝料を拒むことはできません(離婚は成立していないので慰謝料の額は低くなると思いますが)。
そして、不倫相手から慰謝料を得た後で、「どうしても離婚を認めてほしいのであれば……」と、財産分与についての交渉を行えばよいのです。
妻の不倫なら、夫が親権を手に入れられる可能性も
さらに、妻の不貞を理由として離婚する場合には、財産分与だけでなく、親権についても有利な立場に立てることが期待できます。
先に述べたように、離婚した場合、基本的に父親は親権を手に入れられません。しかし、妻の不倫が原因で離婚する場合には、交渉次第では親権を得ることも不可能ではありません。
実際、「親権を渡すのなら離婚に応じる」と夫から言われて、子どもを捨てて不倫相手の元に走る母親は決して少なくありません(子の母としての思いよりも、女としての情が勝ってしまうのでしょうか……)。
私が女性側の立場で離婚交渉の代理人を引き受けるときには、「親権を後で取り戻すことは難しいから絶対に渡すべきではない」と強くアドバイスするのですが、それでも聞き入れてもらえないことが多々あります。
そして、後になってから「やはり子どもと一緒に暮らしたい。どうにかできないだろうか……」と思い詰めた様子で相談されることもこれまでに幾度となくありました。残念ながら、いったん自分の意思で子どもを手放してしまったら、もはや弁護士が手助けできることはほとんどありません。
前妻に収入があれば、養育費も請求できる
なお、子どもの親権を得た場合、前妻に収入があれば、養育費を請求することもできます。そもそも、養育費は両親がともに分担するべきものであり、父親だけが負担すると決められているわけではないのです。
請求できる養育費の額については、養育費算定表が裁判所のホームページで公開されているので、そちらを参照するとよいでしょう。そこに示されているように、前妻がパート勤めで年収が200万円程度であっても、毎月、1、2万円は請求することができます。養育費が支払われない場合には、給料の差押えなどもできます。
外国人妻と離婚する場合の問題点
最近は、日本でも国際結婚が当たり前となっています。そのため、「妻が外国人だが、最近、折り合いが悪くなっている。いざというとき、離婚手続きはどのように行えばよいのだろうか」と思っている人もいるでしょう。
夫婦がともに日本で生活している場合には、基本的に日本の法律に基づいて離婚することができます。
ただ、フィリピンのようなカトリック系の国では離婚が認められていません。そのような場合には、前妻の国においては離婚が成立していないという状況になります。
そして、こうした複雑な状況で、たとえば相続を迎えた場合には思わぬトラブルが起こる可能性があります。
すなわち、自分が亡くなった後に、日本においては、離婚が成立しているので前妻には当然、相続権は発生しません。その一方で、「では、前妻の国ではどうなのか。離婚した妻が自分の財産を相続することが認められてしまうのか」という問題が起こり得るのです。
また、財産分与に関しても、結婚後に配偶者が母国で不動産を購入していたような場合にそれが分与の対象に含まれるのかが大きな問題となるでしょう。日本の法律に従うのであれば、分与対象になりますが、相手からは「そもそも、私の国では財産分与という制度自体がない」などと反論される可能性もあります。
このように、配偶者が外国人の場合の離婚トラブルに関しては、相続も絡んでさまざまな形で問題が起こり得るので、現地の法律に精通した弁護士等の専門家のサポートを得るのが適切でしょう。