「借金があるの…」見事騙された男性、30年間の貯金が水の泡

インターネットの普及で、ネット上の男女トラブルが増えています。今回は、出会い系サイトで知り合った男女のトラブルについて説明していきます。※本連載は、弁護士の稲葉治久氏の著書『男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編し、よくある男女トラブルと、それに適切に対応するための法的知識をわかりやすく解説していきます。

女性の借金を肩代わりしたTさんだったが……

《Tさんのケース》

Tさんは、男女の出会いを仲介することを目的としたいわゆる「出会い系サイト」を結婚相手を探すために利用していました。そこで、知りあった複数の女性とメールでやりとりするなかで、共通の趣味をもっていることもあって話があったPさんと食事をする約束を取り付けました。

イタリアンレストランで初めて会ったPさんに対してTさんは好印象を抱きました。その後も会食やデートを重ねるなかで、Tさんは「自分の生涯の伴侶はPさんしかいない」と確信するに至り、自らの思いをPさんに伝えました。

Tさんは、笑顔とともにすぐさま肯定的な返事が返ってくるとばかり思っていたのですが、案に相違して、Pさんは無言のまま暗い表情を浮かべていました。

怪訝に思ったTさんが理由を尋ねると──。 

「私もTさんのような真面目で誠実な人と結婚できたら、どんなに幸福だろうと思っています。ただ、実は、ずいぶん前にブティックを経営していたことがあって、そのときに作った借金を返済するまでは独身のままでいると決めているのです。自分ばかりが幸せになったら、お金を貸してくれた人たちに申し訳ないから……」

借金の額を尋ねてみると、Tさんが30年間かけて貯めてきた定期預金の金額とほとんど同じでした。そこで、Tさんは預金を解約して作ったお金を見せて、「これで借金をすべて返済してください。なーに、気にしないでください。後で返してくれればいいですから」と言ってPさんに渡しました。

それから1ヵ月後、「渡したお金でもう借金はすべて返し終えたはず。あとは結婚するだけだ」とTさんは期待と喜びに胸を膨らませながら、Pさんの携帯電話に電話をかけました。すると、聞こえてきたのは、

《おかけになった電話番号は、現在使われておりません。番号をお確かめになって……》

という案内のメッセージ。

「あれ、おかしいなあ、何だかいやな予感がするけれど、きっと気のせいだよね」

不幸にも、Tさんのこの悪い予感は当たり、その後、Pさんと結婚することはおろか、人生で再び会うこともなかったのです。

相手の身元がわからなければ、泣き寝入りするしかない

良い関係かと思っていたら、実は相手をよく知らないことも
良い関係かと思っていたら、実は相手をよく知らないことも

 

このTさんのように、出会い系サイトなどを通じてネット上で知りあった女性から、男性がお金をだまし取られる例が増えています。

 

SNSやメールなどのやりとりだけで一度も会わないままお金を貸してしまい戻ってこないケースもありますが、やはり多いのは何度か会って信頼させた後に「実は……」と借金名目でお金を巻き上げ、行方をくらますパターンです。

 

どちらの場合も、基本的にはだましとられたお金を取り戻すことは困難です。相手と知りあったのが匿名性の高いネット環境であるため、その素性や身元が明らかでないケースがほとんどだからです。「どこに住んでいるのか」あるいは「どこに勤めているのか」がわからなければ、お金を請求したくても請求のしようがありません。教えられていた名前も、まず間違いなく偽名のはずです。

 

このように、お金を取り戻すための手掛かりがまったくないのであれば、対処のしようがありません。

お金を貸すのなら「借用書」を作ること

また、仮に相手の身元がわかっていたとしても、借用書がなければお金を貸したことを証明することができません。

 

貸したお金の返還を求めて裁判を起こしても、相手に「いや借りたのではなく、もらったのだ」と反論されたときに、借用書を証拠として提出することができなければ、相手の言い分通り、貸したものではなくあげたもの、贈与したものと認定されてしまいます。

 

したがって、ネットで知りあった女性に対してお金を貸すのであれば、必ず借用書を書いてもらうことです。

 

それから、相手の身元をおさえておくために、免許証などの公的な証明書の提示も求めましょう。

 

もっとも、そもそも論を言えば、ネットで知りあい、数回程度しか会っていないような女性に簡単にお金を貸すこと自体が間違っているのかもしれません。また、渡したお金が5万円、10万円程度の場合には、裁判を起こして回収することができたとしても、弁護士報酬等を考えるとむしろマイナスになる可能性があります。

 

「お金を渡してしまった自分が悪いのだ。勉強料と思ってあきらめることにしよう」と割り切ることも、場合によっては必要となるかもしれません。

「美人局」(つつもたせ)に気をつけよ

出会い系サイトやSNS等で知りあった女性との間に金銭トラブルが発生する場合としては、美人局(つつもたせ)のケースもあり得ます。

 

「びじんきょく? 何それ」と思っていた人のために、まずは美人局の意味を辞書から引用しておきましょう。

 

つつもたせ【美人局】

男が妻や情婦にほかの男を誘惑させ、それを種に相手の男から金品をゆすりとること。なれあい間男。 〔もと博徒の語で、「筒持たせ」の意かという。「美人局」の字は「武林旧事」などに見え、中国、元の頃、娼妓を妻妾と偽って少年などを欺いた犯罪をいったのにはじまる〕」(三省堂「大辞林」より)

 

たとえば、「ネット上で知りあった女性と肉体関係をもった後に、その女性の夫と称する男が現れて金を出せと言ってきた……」というのが、その典型的なトラブル例になります。

お金の要求は拒み、すぐに警察に届け出る

では、美人局の被害にあった場合にはどのような対応をとればよいのでしょうか。美人局は、通常、恐喝罪かもしくは詐欺罪のいずれかに該当します。

 

まず「オレの女によくも手を出したな。ただではすまないぞ。家族や会社にばらされたくなかったら……」などと金銭を要求する際に脅迫あるいは暴行が伴われていれば恐喝罪にあたります。

 

一方、「あなた、私の妻に何ていうことをしたのですか。出るところに出て訴えますよ。大事にされたくないのなら、誠意を見せてください」などと脅迫とまでは言えない程度の様子で金銭を求められた場合には、詐欺罪に該当することになります。婚姻関係がない場合はもちろん、婚姻関係があったとしても、女性にほかの男性と肉体関係をもたせて金銭を得ようとすることは詐欺行為にあたるからです。

 

このように、美人局は明白な犯罪なので、毅然とした態度をとることが求められます。相手からの金銭的要求は断固として拒み、すぐに警察に届け出ましょう。一度払ってしまうと、その後も脅かしがやまず、ずるずるとお金を払わされ続けることになりかねません。

美人局なのか、それとも浮気相手の抗議なのか?

一方で、女性の夫や恋人と称する男性が突然目の前に現れた場合、美人局ではなく単に浮気がばれただけという可能性もあります。美人局なのか、それとも浮気相手の夫・恋人がとがめにきたのかは、どのように判断すればよいのでしょうか。

 

まず、女性と関係をもつにいたった状況・過程等に不自然な点があれば、美人局の罠にはめられた可能性が高いと推測できるでしょう。

 

たとえば、ネットで知りあった女性と初めて出会ったその日に肉体関係をもったようなケースであれば、そのこと自体がおかしいと思うべきです。金銭等の何らかの対価を払っているのであればともかく(買春にはなってしまいますが)、通常は、相手の素性や人となりを十分に知る期間を経るなど、相応の段階を踏んでから、はじめて男女の関係になるものでしょう。

 

そうした前段階もなく、会ったばかりの女性の側から積極的に肉体関係を望んだり、促すような言動があったとすれば、美人局の可能性が高いと言えます。

 

また、美人局なのか否か判断がつきかねる場合には、相手の素性を調べ、どのような行動に出るのかを見極めつつ、弁護士にも相談しながら、慰謝料を払うかどうかを検討するとよいでしょう(なお、相手が既婚者であることを知らないで肉体関係をもった場合には、そもそも慰謝料を払う必要はありません)。

ネットで知り合った女性の年齢は必ず確認を

最後に、ネットを通じた女性との出会いに関して、強く注意を促しておきたいことがあります。それは、相手の年齢です。

 

仮に知りあった女性と肉体関係をもつような状況になった場合には、必ず相手が18歳以上であるかどうかを確認することを忘れないでください。もし、肉体関係をもった相手が18歳未満の未婚者の場合には、各自治体で定められている青少年保護育成条例に違反し、刑罰を科されることになります。

 

相手から「自分は18歳だ」などと告げられたとしても、少しでも「怪しい」と思ったら鵜呑みにせず、身分証や運転免許証など年齢を客観的に証明できるものの提示を求めてください。もし確認できないのであれば、肉体関係は絶対にもつべきではありません。「18歳だと言っていたし、そう見えた」では許されないのが現実です。

 

また、13歳未満の子どもと性行為等をした場合には、相手の同意の有無を問わず、強姦罪(強制性交等罪)になります。18歳未満の女性を避けるように気をつけていれば、おそらく間違っても13歳未満の相手と関係をもつことはないでしょうが、用心するに越したことはありません。

稲葉セントラル法律事務所
東京弁護士会 代表弁護士

1976年茨城県生まれ。江戸川学園取手高校卒業。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。青年海外協力隊員としてアフリカ・ジンバブエでボランティア活動。関東学院大学法科大学院卒業。平成24年弁護士登録都内大手法律事務所勤務。平成28年7月より稲葉セントラル法律事務所を開設。メディアへの出演・法律監修多数。

著者紹介

連載男女トラブルのダメージを最小化する法律ノウハウ

男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学

男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学

稲葉 治久

幻冬舎

不倫、離婚、セクハラ、痴漢冤罪…… 男女の間には何かとトラブルがつきものです。 昨今マスコミをにぎわせている芸能人、著名人の不倫トラブルに典型的に示されているように、 男女トラブルは訴えられた側に甚大なダメージ…

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