時代が変われば、男女トラブルの在り方も変化していきます。今回は、世相を反映した男女トラブルについて考えていきましょう。※本連載は、弁護士の稲葉治久氏の著書『男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編し、よくある男女トラブルと、それに適切に対応するための法的知識をわかりやすく解説していきます。

高齢化を反映?急増する60~70代の男女トラブル

男女トラブルに関しては、最近、60代、70代の年配の人から相談を受ける機会が増えています。ことに多いのは、独り身の男性が定年後の寂しさを紛らわせるためスナックなどに通い出し、店のママやあるいは手伝いの女性と仲良くなり交際を始めた結果、金銭トラブルに巻き込まれるケースです。

 

男性の側は、相手の女性に対して、お金を渡したり、マンションを買ってあげたりした挙句、預貯金を使い果たしてしまった……。女性の側は、そうやってとれるものをすべてとってしまうと、男性に一方的に別れを告げたり、いなくなったり。

 

相談者からは、「老後のための蓄えを全て失ってしまった。何とかお金を取り返すことはできないか」と懇願されるのですが……。なかなか難しく、どうにもならないのが現実です。

 

もう一つ、高齢男性が巻き込まれがちな金銭トラブルとして、独身女性が資産家の財産を狙う結婚詐欺、いわゆる“後妻業”の手口にあうケースも目立ちます。

 

この場合、ターゲットとなった男性自身は、一応、死ぬまで女性に面倒をみてもらうことにはなるので“被害者”とまでは言えないかもしれません。しかし、その子どもは結果的に相続できる財産の取り分が減るわけですから、当然、心中穏やかではないでしょう。「遺産目当てで結婚した!」と義理の母親を非難し、骨肉の争いが繰り広げられることも珍しくありません。

 

高齢者に限った話ではないでしょうが、女性との間で、こうしたお金を巡るトラブルを避けるためには、自分の懐を、財産事情を相手には教えないことが大事です。「気持ちは許しても財布は許すな」が男女関係の一つの大きな鉄則と言えるかもしれません。

ヤギ5頭を渡して許しを得た日本人男性 

筆者は、大学を卒業した後、アフリカのジンバブエで青年海外協力隊員としてボランティア活動をしていたことがあります。そのなかで目にした、日本ではおよそ起こり得ないような男女トラブルの興味深い事例を1つご紹介しましょう。

 

トラブルに巻き込まれたのは、ボランティア仲間の日本人男性です。仮にQさんとしておきましょう。あるとき、Qさんは現地の女の子といい仲になってしまいました。そのことが女の子の暮らしていた村全体に知れ渡るところとなり、大騒動となってしまったのです。

 

村人たちは、Qさんに向かって

 

「おまえ、責任をとってこの子を嫁にしろ!」と強く迫りました。

「いや、それは……」と必死に拒むQさん。

「結婚しろ!」

「いや、それは……」

「結婚しろ!」

「いや、それは……」

 

というやりとりが幾度か繰り返された末に、ヤギ5頭とお金をいくらか女の子の父親に渡して謝罪することで、最終的にQさんは許してもらい、どうにかトラブルに決着をつけることができました。

 

国と文化によって貞操観念は大きく異なります。女性の貞操を非常に重んじる国で気軽に関係をもってしまうと、Qさんのように思わぬ窮地に追い込まれてしまうこともあるのです。

 

仕事などで海外に滞在したときに、もし現地の女性を口説くのであれば、まずはその国の文化や結婚観、性意識などをしっかりと見極めてからにしましょう。

 

ヤギ5頭で解決。高いのか、安いのか…
ヤギ5頭で解決。高いのか、安いのか…

不倫をすると「死刑」になる国も珍しくない

夫婦の平穏な結婚生活を破壊する不倫は大きな“悪”とみなされ、不倫をした男女に重い刑罰を科す姦通罪が古くから広く世界中で定められてきました。

 

たとえば、旧約聖書の申命記には次のような記述がみられます。

 

「男が人妻と寝ているところを見つけられたならば、女と寝た男もその女も共に殺して、イスラエルの中から悪を取り除かねばならない。」(申命記/22章/ 22 節[新共同訳より引用])

 

日本にもかつては姦通罪がありましたが、戦後の刑法改正によって廃止されています。一方、海外では今もなお、法で不倫を禁止し犯罪としている国が珍しくありません。アメリカの一部の州やフィリピン、それからイスラム教圏の国々などです。とりわけ、イスラム諸国は不倫に対して苛烈な姿勢で臨んでおり、アフガニスタン・イラン・パキスタンなどでは最高刑が死刑となっています。

 

これまでに各国で定められた姦通罪の中身をみると、男性よりも女性に対して厳しいものが少なくありません。例えば、かつての日本の姦通罪は、夫が不倫したときには相手が未婚者の場合には処罰されませんでしたが、妻が不倫したときには相手が未婚者であっても刑罰の対象になりました。また、現在、イスラム諸国で定められている姦通罪も女性にとってより不利な形になっている傾向がみられるようです。

 

ちなみに、このことに関して、1981年に飛行機事故で亡くなった作家・脚本家の向田邦子さんは、不倫を取り扱ったある小説で、主人公の女性に不倫相手との会話の中で次のような印象的な言葉を語らせています。

 

「自由と独立……」

「女はそういうことば、好きだね」

「持っていないからよ、女は。結婚したら二つとも無くなってしまうもの。人を好きになっちゃいけないのよ。恋をするのも罪なのよ。昔は殺されたわけでしょ。結婚した女は死ぬ覚悟で恋をしたのよ」(向田邦子『隣りの女』(文春文庫))

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