輸出入銀行に対する一般市民の誤解とは?
スリランカに輸出入銀行が必要なことは明白だ。輸出入銀行設立に対する反対意見は、主に政府の能力に対する疑いから起こっている。果たして政府は、政治的介入なしに効率的かつ一流の銀行を設立し運営することができるのか、という疑いだ。そのため政府は、設立に向けて「行動」をする前に、まず運営していくための「能力」を身に付けることが重要になる。そうでなければ、輸出入銀行はスリランカにとって「資産」ではなく「重荷」になってしまうだろう。
またスリランカでは一般的に中国の輸出入銀行がよく知られている。中国の輸出入銀行はスリランカの大規模プロジェクトに融資しているため、輸出入銀行といえば、そのような融資活動を行う銀行なのだという認識が広まっており、スリランカがそのような銀行を設立する必要はないのではと考えられている。しかし、これはもちろん誤解である。世界の輸出入銀行は、プロジェクト融資だけを行っているわけではないし、中国の輸出入銀行は独特な性質を持っているからだ。
輸出入銀行は専門的な融資機関であり、通常は輸出セクターへの融資制度がある国には存在する。輸出入銀行は、一般的に民間セクターが引き受けるのに消極的かつ不可能な支払遅延やデフォルトのリスクを引き受けることで、輸出業者や銀行の積極性を促す手助けをする。輸出入銀行は専門機関であるため、市中の商業銀行にはいないような貿易や輸出先マーケット、国際取引におけるリスク分析の専門家が在籍している。
そのため、輸出入銀行は民間の商業銀行とは異なり、金融サービス以外にも輸出業者に対して情報、教育そして助言などのソフト・サービスを提供できる。そして世界の大半の輸出入銀行は、政府が所有するか政府と連携して運営されている。
政府自身の能力向上が最優先
輸出入銀行はスリランカにとって新たなコンセプトではあるが、世界的に見ればこのような銀行は長らく存在している。例えば、アメリカの輸出入銀行は2015年に閉鎖されたが、その運営は80年以上にも及び、アメリカの輸出セクターを支援し続けた。スリランカは後追いの立場となるため、他国の経験を学びながら、自国に適した輸出入銀行を設計できる。
コロンボのコンサル会社であるVerité Researchの調査では、スリランカの輸出金融がより活用されるよう、取り得るいくつかのイニシアティブが示唆されている。その中には情報アクセスの向上や、現存のフレームワーク内に新たな融資制度を導入することなどが含まれている。ガバナンス、効率性そして能力といった観点において、政府機関に対する国民の深い不信感を考慮すると、輸出入銀行設立については、短期で仕上げるのではなく中期計画を立てて取り組んでいくのが一番だろう。
スリランカでは輸出収入が停滞し、GDPに占める割合が低下している現状を考えると、政府は他国の経験から学びながら、まずは現存の制度内における輸出金融の改善に取り組むべきだろう。そして、政府はこれからの数年をかけて、レベルが高くかつ独立した輸出入銀行を設立することができるように、自身の能力を養っていく努力をするべきなのだ。