未熟な輸出融資機関や支援機関
輸出金融サービスの不足が課題となっているスリランカだが、実際には輸出金融の活用を推進するべき機関はいくつか存在する。それらの機関は、核となる機能の点から2種類に大別される。一つは、商業銀行やスリランカ輸出クレジット保険会社(Sri Lanka Export Credit Insurance Corporation)などのような輸出金融サービスそのものを提供する機関。二つ目は、輸出振興委員会のように、輸出セクターに情報、教育や助言を提供することを目的に設立された機関だ。
輸出金融に期待される輸出拡大への効果は、情報、教育そして助言など輸出業者が利用できるその他のソフト面でのサービスの質によっても左右される。また、このようなソフト・サービスは金融ファシリティが新たな取引先となる輸出業者を開拓する際にも大変重要になる。
現時点では、スリランカでのこのようなサービスの質は低く、活用しづらい。そして融資機関と支援機構の間には協力体制が見られず、ほとんど連携が取られていないため、その効果を発揮しづらくなっている。さらに、それら機関のスキルや能力、専門家の数も不足しており、輸出金融における政策順位が低いこともあって、輸出金融の拡充がスリランカでは進んでいないのだ。
金融スキームの未発達と低い利用率
最後の課題は金融スキームの未発達である。スリランカにおける既存の輸出金融に関した金融ソリューションは、多様性、活用しやすさ、そして質のレベルが、どれも依然低いままだ。たとえば他国と比較してみると、スリランカでは中小企業や、事業を始めたばかりの輸出業者に特化した専門的な金融ファシリティがない。さらに、輸出ファクタリング(金融機関が輸出債権の保証と取立業務を代行するサービス)、バイヤーズ・クレジット(輸出先が下請企業に代金をすぐ支払えるよう、金融機関による輸出先に対する融資)、そして二国間輸出に関する与信枠の設定など、多くの国では利用できる融資スキームも、スリランカには存在しない。
そのことに加え、バリュー・チェーン・ファイナンス、輸出クレジットやデフォルトに対する保証制度など、今ある輸出金融制度もあまり活用されていない。その主な理由としては、それらを利用するためにかかるコストが高いことや、そもそも現在の輸出構造のリスク・プロファイルがローリスク・ローリターンであること、さらに輸出セクター内で輸出金融に関する情報が限られていることなどが挙げられる。
最終回では、スリランカに求められる輸出入銀行の設立についてお伝えします。