製品とマーケットに偏りがある輸出セクター
輸出金融をより広く定義するのならば、輸出業者の能力向上(キャパシティ・ビルディング)を図る融資制度だとも言える。能力向上とは、輸出を行う中小企業の技術、スキル、
そして製品の品質を高めることなどを指す。輸出金融のこのような性質は、中小の供給業者に依存している農産物の輸出などでは、重要となってくる。
また、スリランカの輸出規模は、2011年以降およそ100~110億ドルで停滞している。またGDPにおける輸出分のシェアは、2000年から2014年にかけて、33%から15%にまで落ちてしまった。スリランカの輸出セクターが直面する大きな課題は、輸出製品の多様化と、輸出先のマーケットの多様化だ。
現状では輸出収入の半分以上が、衣料品と紅茶の輸出によって占められている。また輸出先のマーケットも、輸出収入の半分以上が欧米で生まれているという偏りがある。政府からすれば、輸出金融によって輸出製品とマーケットの多様化という課題を克服し、輸出セクターの復活につなげたいところだ。しかし残念なことに、輸出金融はスリランカが用意する制度の中で最も活用されていないもののひとつだ。
金融ファシリティと情報ツールを併せて活用
輸出金融は、新たな国で新たなバイヤーとビジネスをしようとする輸出業者にのしかかる支払遅延やデフォルトのリスクを、一部肩代わりすることでマーケットの多様化を側面支援する。支払遅延とデフォルトは、バイヤー側による契約違反だけでなく、輸入国側の税制、政策あるいは規制が突然変更した結果、発生する可能性もあるものだ。
そのため、制度も政策も安定していない新興マーケットとのビジネスは、リスクがより高いと言える。さらに、このようなマーケットについての信頼性が高い最新情報は入手できるものがほとんど限られている。そのことがリスクレベルの評価を難しくし、民間銀行はこれらのマーケットが関わる取引への融資に消極的になったり、あるいは融資に高額のリスクプレミアム(危険保険料)を課さざるを得なくなる。
スリランカの輸出セクターでは、製品やマーケットが偏っているだけでなく、輸出を担うプレイヤー数も限られてしまっており、新たに参入する企業数が少ないのも問題だ。経験不足やエクスポージャー不足、教育不足などにより、民間銀行は新たな輸出業者を高リスクの借り手だと評価する。そのため新規参入しようとする企業が、融資を受けるために負担しなければならないコストは一般的には高額になっている。
新興マーケットに飛び込む輸出業者向けの政府保証融資制度は、この問題の解決の手助けになる。また、スリランカ大使館の各商業部門や輸出振興委員会(Export Development Board)などの輸出促進機関がもたらすマーケット情報や助言サービス、トレーニング・サービスなどを併せて活用すれば、その制度はより有効なものになる。これらのサービスによって輸出業者の信用度が高まれば、銀行は喜んで低コストで融資をするようになるだろう。
次回は、スリランカの輸出融資制度の不足要素を具体的に見ていきます。