外食は「3つの選択肢」しか思い浮かばない⁉
これほどラーメンが好きな日本人ですが、このことは「さて、これから何を食べに行こうか?」と考えるときの選択肢にも表れます。これは厳密にアンケート調査を行ったわけではなく、私の体験に基づくものですが、人は外出先で飲食店を探すときに、だいたい3つの選択肢しか浮かんでいません。
「昼は、ラーメンかカレーかカツ丼かな?」「夜は、回転寿司か牛丼、あるいはラーメンかな?」ラーメン、カレー、カツ丼。ラーメン、寿司、牛丼の組み合わせです。そしていつもラーメンが紛れ込んでいます(図表参照)。
もちろん、私が勝手に感じていることですから、絶対にラーメンは選択肢に入らない、という人もいるでしょう。
しかし、この国では外を歩いていると、常に視界のどこかにラーメン屋さんが入ってきます。角を曲がるたびに新たなラーメン屋さんが目に入ります。そのため、何か食べようと思ったとき、やっぱりラーメンを思い浮かべてしまうのです。ラーメンはそれほど選ばれやすい食べ物なのです。
リーマンショックが起きた2008年、イギリスではドミノ・ピザをはじめとするピザなどの廉価な食品の売上が急増しました。その一方で、高級レストランは軒並み売上ダウンで閉店に追い込まれたお店も多かったと聞きます。
これは、不況で財布のひもを固くした消費者が、少しでも安い飲食店を利用しようとしたために起きた現象です。このような状況はアメリカでも見られました。
おしゃれなフレンチやイタリアン、あるいは日本料理店などの高級飲食店の経営は景気動向に大きく左右され、不況になれば高級なお店から閉店に追い込まれます。日本でもバブル崩壊後は一等地にあるような高級クラブはバタバタとつぶれていきました。
一方、庶民の食べ物であるラーメン店は、不況でもお客さまが来店します。いや、むしろ不況になるほどお客さまが増えるかもしれません。イギリスでのピザ屋さんと同じです。ラーメン店は、不況でも生き残れる可能性が高い飲食業です。ですから、投資先としては、手堅いのだと言えます。
外国人観光客が「最も満足した飲食」はラーメン
前回、ラーメンの中毒性や日本人のラーメン好きについてお話ししましたが、実は、もはやラーメン好きなのは日本人だけではなくなっていました(関連記事『なぜリピートしてしまう?「ラーメン」にある3つの中毒性』参照)。
観光庁『訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析 平成29年 年次報告書』(https://www.mlit.go.jp/common/001230775.pdf)によれば、外国人観光客が「最も満足した飲食についてその理由」について「おいしい」からと回答した1位は「ラーメン」、2位が「そば・うどん」、そして3位が「肉料理」でした。
当然、海外でも日本のラーメン店が相次いでオープンしています。私がプロデュースしたお店の看板を使いたいと台湾からオファーがあったことを紹介しましたが、実際、海外からのオファーはかなり増えてきているようです。ただし、それぞれのお店に個別に接触してくるため、全国でどのくらいのお店に引き合いがあるのか把握できていません。
もしかするとせっかく高く売れる看板を持っていながら、安くたたかれているお店もあるのではないかと心配しています。私は海外からの引き合いの窓口になるための団体「国際ラーメン協会」を設立しました。
これによって、日本のおいしいラーメン店が、より高く妥当な評価をされる仕組みを作れると考えているのです。
前述の観光庁の調査結果のように、訪日外国人旅行者の間でもラーメンは人気です。
しかし、ラーメン店側の情報発信はいまいちなのですね。ラーメン店の店長さんの多くはWebサイトやブログ、SNSを使った情報発信にあまり熱心ではありません。ましてや外国人向けに英語で情報を発信するといった発想をなかなか持てずにいます。
何もブログやSNSで英語の記事を書く必要はありません。もちろんできればよいですが、よほど英語に堪能でなければ難しいでしょう。しかし、静的なWebサイトであれば、一度だけ業者さんに英訳してもらえば、あとはメニューのメンテくらいですから大した費用も手間もかかりません。
外国人観光客にとっては、英語で情報を入手できることはとても重要です。国内での評判が同じくらいの店であれば、外国人は英語で情報を入手できたほうのお店に行きます。といいますか、行くしかありません。
現在はまだ、英語で情報を発信しているラーメン店は少ないですから、英語のサイトを用意できれば相当の差別化になります。
外国人観光客が参考にする食べログの英語版のようなサイトは多くあるはずですが、クリックした先に日本語のサイトしかなければがっかりするでしょう。しかし、英語でお店の紹介がされていれば、俄然、興味を持ってくれるはずです。
ですから、英語で店長のこだわりやメニュー、アクセス方法などが紹介されていれば、世界中からお客さまを集めることができます。海外では日本のラーメンを1杯3000円で出しているお店もありますから、インバウンド向けに付加価値のあるメニューを用意できれば、高くても受け入れられるかもしれません。
長い時間帯にわたってラーメン店のお客が絶えないワケ
ラーメンには3つの中毒性があることをお話ししました。この中毒性があるがゆえに、ラーメンは一時的なブームで終わらずに日本人も外国人も食べ続けてくれるのです。
そしてこの中毒性にはもう1つの効果があります。それは、長い時間帯にわたってお客さまが絶えないということです。
さすがに朝早くから朝食としてラーメンを食べる方はあまりいないと思いますが、お昼前後から深夜まで、誰かしらラーメンを食べに来てくれます。これは、ラーメンが昼食にもなり、小腹を満たすための間食にもなり、がっつり食べたい夕食にもなり、夜食にもなる。そしてお酒を飲み歩いた人たちの締めにもなるということです。
そのため、ラーメン店はお昼時のピークから始まり、長い時間営業を行うことができます。ただ、あまりに繁盛しているお店は、さすがに疲れるので一度お店を閉めることが多くなります。一般的なのは、朝10時にオープンし、15時くらいでいったん店を閉めます。そして休憩と仕込みのリセットを行った後、17時ごろから再びお店を開きます。
閉店時刻は立地条件により変わってきます。繁華街やその周辺であれば、かなり遅い時刻までお客さまが来ますし、住宅街や山の中などではあまり遅くまで営業していても無駄になることが多いでしょう。
このようにいったんリセットする時間帯を持っているほうが営業しやすいのですが、ショッピングモールなどにお店を構えている場合は、勝手に「休憩中」というわけにはいきません。閉店時刻もショッピングモールの規定に従う必要がありますので、深夜まで営業できないこともあります。この点は注意が必要です。