ラーメン店には「ラーメン」を食べに来る人がほとんど
飲食店経営で重要なことの1つに回転率があります。これは、1日のうちに同じ座席で何人のお客さまが座ったかということです。ですから、この回転率が高いほど、1つの席から多くの注文を受けたことになります。つまり、回転率が高いとは、1つの席の売上が高いということです。
よく、カフェなどで参考書を広げて勉強している学生を見ることがあります。あれは長時間その席を占領しているわけで、飲食店側としてはとても迷惑だということが分かります。また、ゲームに興じている学生もいます。
特に稼ぎ時のお昼にテーブルを長時間占拠している学生は、迷惑以外の何ものでもありません。それでも追加の注文をしてくれているのであればまだよいのですが、ほとんどの学生は水を飲んで居座っています。
そのため、最近のカフェではお昼休み時間は2時間まで(これでも長いと思いますが)のご利用でお願いします、と言って制限時刻を書き込んだプレートを渡す店も増えてきました。
あるチェーン店のカフェなどは、お年寄りのたまり場になったことで回転率が下がって閉店に追い込まれたところもあります。憩う場所のないお年寄りには気の毒なのですが、せめて数十分おきに追加注文してくれていれば、その店は長く憩いの場として営業を続けることができたでしょう。
その点、ラーメン店の回転率は、飲食店の中でも飛び抜けて高いという特長があります。なにしろ注文してラーメンが提供されるまでが短いです。細麺を使っているお店であれば30秒ほどで麺がゆであがりますので、注文を受けてから1分ほどでラーメンを出すことができます。長くゆでるお店でも3分以内には出せます。
また、ラーメン店にはラーメンを食べに来る人がほとんどだからです。ラーメン店で勉強する学生や集っているお年寄りはいません。ときどきラーメンよりもビールを飲みに来ているお客さまもいますが、たいていの場合はビールやおつまみを追加注文し続けていますので、回転率の低さを補ってくれています。
ラーメン店に匹敵する回転率の高さを持った飲食店は、他には立ち食い蕎麦屋さんや牛丼屋さんくらいでしょうか。
あえて「遅く」ラーメンを提供する理由とは?
ラーメン店は回転率が高いとお話ししました。それは、1つの座席が生み出す売上が高いということです。しかし、いくら回転率が高いとはいえ、そもそもお店にお客さまが入ってこなければ回転が始まりません。そこで私は、オーナーや店長に、「あまり早くラーメンを出さないでください」「少しゆっくりめに仕事してください」とアドバイスすることがあります。
回転率が命の飲食店で何を真逆の指導をしているのか、と思われることも多いのですが、これは作戦です。それは、お店を人気店にしてお客さまを増やす作戦なのです。
日本人は行列ができているお店が気になって仕方がありません。行列は人気店の証しだからです。そのため、中にはサクラを雇って、やらせの行列を作るプロモーションもはやりました(もしかすると、いまだにやっているお店があるかもしれません)。
しかし、私はサクラなど雇わなくても行列を作ることができます。それは、「座席を減らすこと」と「ラーメンの提供を遅めにすること」です。
こうすれば、一度に入れるお客さまが制限されてしまいますし、回転率もやや下がりますので、行列ができやすくなります。せっかく人気店になれるほどのおいしいラーメンを出しているのに、そのことに注目されなければお客さまは増えません。わずか3~4人の列ができただけでも、道行く人たちが注目し始めます。
そして、行列は行列を呼びます。いったん、さばけないほどの行列ができてしまえば、あとはこちらのものです。そこからは回転率を上げて売上を伸ばせばよいでしょう。
ただし、くれぐれも注意してください。この作戦をとれるのは、あくまでラーメンがおいしいという条件があります。まずいのに待たせれば、あっという間に最悪な評判がネット上に書き込まれてしまいます。おいしいからこそ、待たされたお客さまは「待ったかいがあった!」と喜んで高い評価を書き込んでくれるのです。ここは間違えないようにしましょう。
確実に「日銭」が入るメリットはあるが…
ラーメン店に限らず、飲食店経営の良い点は、売上が即現金として入ってくることです。いわゆる「現金商売」ですから、確実に日銭が入ります。現金商売の良いところは、なんといっても回収が早いということです。
他の商売ですと、納品を月末で締めて翌月末の振込といったことが起きます。建築業などになると、工事に着手して費用が発生し始めますが、売上を回収するのは数カ月後といったことは普通です。
しかし、商売をしていれば、仕入れ費や光熱費、家賃、人件費と、出ていくお金は待ったなしです。そのため、日々現金が入る商売は、売上の回収が即時に行われますので、資金繰りが楽になります。ただ、この状態がいつまでも続くとは限りません。というのも、日本でもキャッシュレス決済が普及を始めているためです。
キャッシュレスには、現金を狙った強盗に入られなくなることや、現金の管理がなくなることなど、様々なメリットがありますが、その半面、回収までにタイムラグが生じることや、様々な決済方法に対応するための設備を導入しなければならないこと、そして決済手数料を取られることなどのデメリットがあります。
とはいえ、キャッシュレスは時代の流れですから止められません。特にインバウンドを期待した場合、外国人はキャッシュレスであることを期待しています。これからは、キャッシュレス対応が当たり前の時代が来ますので、そのための準備も必要になってきます。