「工場系」はスープや返しの味を安定させることが可能
ラーメン店投資をされる方が、ご自身が特に気に入っている憧れのラーメン店の味を再現できないだろうか、と相談されることがあります。これはできます。
私がプロデュースするラーメン店は「工場系」であるとお話ししましたが、工場系ではスープや返しの味を安定させることが可能なことと同時に、様々な味を再現することも可能になります。ですから、投資される方が再現したいと考えているラーメンがあれば、私はメーカーの担当者を伴って食べに行きます。
すると、私もメーカーの人も、ラーメンのプロですから、「ああ、○○と○○が入っているんだね」といった具合に、すぐにその味の要素を分析することができます。あとは、メーカーで同じ味になるように調合できるのです。
ただ、本当の製法までは分かりませんので、まったく同じ味ではないかもしれません。それでも、ほぼ同等の味を再現できます。これは、他のラーメン店ではまねができない技術です。また、日々一定の味を維持するという技術もなかなかまねできません。これが工場系の強みです。
ちなみに、私がプロデュースする場合はぜひ、私が指定するメーカーの麺とスープを使ってほしいのですが、このメーカーから皆さんのお店が麺とスープを仕入れることができるのは、私がこのメーカーと提携していることによります。この工場に個人で仕入れたいと申し入れても、個人のお店では購入量を約束できないため取引してくれません。ましてや味の再現など受け付けてくれません。しかし、私がプロデュースする場合は、間違いなく繁盛させるだろうという信用を得ているため、味の再現も取引も受け付けてくれます。
同じスープから何十種類の味を出す「返し」とは?
ほとんどのラーメン店ではラーメンの味のバリエーションを増やすために、様々なスープの味を出そうと工夫しています。中には数日間煮込まないと作れないスープもあります。しかし、私の方法では、スープは1種類だけで十分です。この1種類のスープから、何種類もの味を出せるためです。その秘密が「返し」です。
どんぶり1杯に60㏄の「返し」を入れるのですが、「返し」の中に様々な味やうま味のエッセンスが入っています。同じスープを使っていても、「返し」を変えることで異なる味のラーメンを作ることができます。
つまり、メーカーから1種類のスープと複数の「返し」を仕入れて使い分けるだけで、何十種類ものスープを瞬時に作り出せるのです。この発想は当初メーカーにもありませんでした。この方法を使えば、ラーメンの味ごとに異なる製法のスープを作る手間も器具もスペースも節約できます。なにしろスープは量が多いので作り分けるとなると、相当に手間とスペースが必要になります。もちろん、光熱費がかかります。この方法は今のところ私しかできません。
工場系ラーメンのスープは、メーカーから配達されるときは冷凍されていて、お店で溶かす必要がありますが、私がメーカーと共同開発したスープは常温で運べるというのが特長です。
メーカーから常温でスープが配達されてきますから、輸送費が安くなります。また、冷凍された状態から溶かすためのガス代も節約できます。スープは濃縮されていて、1パックから50~60杯分作れ、1杯のスープが約40円でできます。
そしてもう1つ、スープと麺を安く提供できる理由があります。提携先のメーカーの子会社が餃子の製造と配達を行っていて、その流通網にスープと麺を乗せているためです。そのため、麺とスープの流通コストが低く抑えられているわけです。
この流通システムはメーカーの提供で、「藏本さんならウチのスープや麺の納入先を全国に広めてくれるでしょ」というメーカー側のもくろみがあったためだと言われました。