●7-9月期決算の先陣を切った米金融大手6社はおおむね好調な決算となり株価はいずれも上昇。
●キャタピラーなどは利益が市場予想を下回ったが株価は上昇、マイクロソフトは好決算で株価上昇。
●減益予想の7-9月期決算を乗り越えれば、その後の増益見通しに支えられ米株は堅調に推移か。
7-9月期決算の先陣を切った米金融大手6社はおおむね好調な決算となり株価はいずれも上昇
米国では、主要企業による7-9月期の決算発表が本格化しています。先陣を切ったのは、JPモルガン・チェース、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス(決算発表は10月15日)で、バンク・オブ・アメリカ(同16日)、モルガン・スタンレー(同17日)が続きました。米金融大手6社の決算では、いずれも最終黒字が確保されました。
米銀の利ざや(貸出金利から預金金利を差し引いた値)悪化は懸念材料ですが、JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーの1株あたり利益が市場予想を上回るなど、全体としてはおおむね好調な決算となりました。株価についても、それぞれの決算発表日の前日から10月23日までの間、6社全てで上昇しています(図表1)。
キャタピラーなどは利益が市場予想を下回ったが株価は上昇、マイクロソフトは好決算で株価上昇
米動画配信大手のネットフリックスが、10月16日に発表した7-9月期決算では、世界の有料契約者数および1株あたり利益が市場予想を上回り、株価はいったん上昇しました。しかしながら、他社との競争激化の懸念が残り、その後は株価が低迷しています。また、米半導体大手のテキサス・インスツルメンツが、10月22日に発表した10-12月期の業績見通しは、市場予想を大きく下回り、株価は急落しました。
キャタピラーとボーイングが10月23日に発表した7-9月期決算では、ともに1株あたり利益が市場予想を下回りましたが、キャタピラーは需要に応じた減産措置が好感され、また、ボーイングは737MAXの年内運航認可への期待から、いずれも株価は上昇しました。マイクロソフトも同日、7-9月期の決算を発表しましたが、堅調なクラウドビジネスなどを背景に、売上高および1株あたり利益が市場予想を上回り、株価は上昇しました。
減益予想の7-9月期決算を乗り越えれば、その後の増益見通しに支えられ米株は堅調に推移か
調査会社リフィニティブが、S&P500種株価指数を構成する主要500社について決算状況を集計したところ、10月23日時点で124社が決算発表を終えました。このうち、売上高について、市場予想を上回った企業の割合は63%、下回った割合は37%でした。また、純利益について、市場予想を上回った企業の割合は82%、一致した割合は5%、下回った割合は13%でした。
米企業の7-9月期決算発表はまだ序盤戦ですが、順調な滑り出しといってよいと思います。同四半期における主要500社の純利益は、前年同期比2.9%減となった後、10-12月期以降は増益に転じ、増益率は拡大していく見通しです。市場では、2019年通年の純利益は前年比1.2%増、2020年は同10.8%増が予想されています(図表2)。米国株は、減益予想の7-9月期決算を無難に乗り越えれば、その先の増益見通しに支えられ、底堅い推移が見込まれます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『順調な滑り出しとなった米企業決算…「米株」は底堅く推移か?』を参照)。
(2019年10月25日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト