グローバル化が急速に進むなか、海外で子どもの幼少期や初等、中等教育等の早い段階から英語環境におくことで、英語のみならず、国際感覚を身につけさせたいと考える富裕層が増えている。本記事では、数多くの留学サポートを手がける株式会社アエルワールドで海外生活カウンセラーとして親子留学を担当する北原万紀氏が、「家族長期留学」についての最新事情を解説する。

留学を目的化せずに、「手段」として考える

親子留学の成功術について触れる際には、そもそも「成功」というものをどう定義するかが必要です。結論からいうと、この「成功」は、家族ごとの価値観によって当然異なります。留学の目的や重要度などの優先順位を伺う必要があり、その目的が達成できるか否が重要となってきます。

 

そのため、「なぜ留学なのか」が非常に重要になってきます。留学のご相談を受ける際に気をつけているのが、留学を目的化せずに手段として考えることです。カウンセリングでは、どんな目的や目標があって、その実現のためにどんな手段をとるべきか、その上で「留学」という選択肢が適切であるかをお客さまと確認していきます。そして、何を優先すべきかの中で「国」、「都市」、「ビザの種類や組み合わせ」、「学校」が自然と絞られてきます。

 

とはいえ、まず、ご相談いただくタイミングでは、お客さまも全体像が見えていないことがほとんどです。そのため、電話や来店を通じて、お考えやご希望、ご予算など、ゆっくりとお聞かせいただく時間を大切にしています。

 

意外と多いのが、「考えたこともなかった」、「そんなやり方があるのですね」という声です。だいたい留学へのお問い合わせというのは、何かしらで見聞きした情報をもとに、具体的な国などのイメージを持った状態でないとできないものです。そのため、お問い合わせ時点ではカナダを希望しておられたお客さまが、目的や優先したいことを整理した結果、別の国になるということも少なくありません。

 

留学の「成功」は当然家族ごとに異なる
留学の「成功」は当然家族ごとに異なる

親子留学の初期費用…「ビザコンサルタント費」とは?

長期の親子留学は、ある程度の金額が予算として必要です。この金額が消費で終わるのか投資になるのか、またはどのような価値があるのかは、渡航前のカウンセリングでお聞かせいただく際の「目的」と「優先順位」が整理できているのかに関わります。

 

連載の中でも学費や滞在費などについて触れていますが、あらためてオーストラリアに親子で通学するケースを例に少し整理をしてみます。

 

【継続的にかかる費用の例】

お子さまの学費(年間):100万円〜300万円

住居費(年間):180万円〜360万円

留学医療保険(一人あたり年間):23万円〜25万円

生活費等(年間):120万円

 

【初期費用の例】※視察代を除く

航空券(一人あたり・往復):約15万円

ビザ申請費(一人あたり):約5万円

ビザコンサルタント費(家族あたり):5万円〜15万円

賃貸物件の仲介手数料:約15万円〜30万円(賃料の4~5週間程度)

渡航後の案内・同行(車両手配込):5万円〜15万

(※1AUDあたり75円レベルで試算)

 

上記を参考にすると、初期費用を除く現地での予算は、親子で通学する場合、年間約500万円~800万円程度になります。親が通学する際には、通学する学校にもよりますが、年間80~120万円程度です。その他、現地で車を購入したり、現地サポートをつけるともう少し予算があがります。

 

上記のビザコンサルタント費に疑問をお持ちの方もいるかもしれません。これは、家族で渡航される場合、ビザ申請が少し複雑で注意が必要だからです。ビザの承認や発給を行う各国の移民局は、家族で長期滞在を行う際に移民目的でないかを厳しくチェックします。入国の理由、滞在の目的、帰国後のプランが一貫していることが非常に重要です。

 

また、片親の同伴の場合、夫婦間で同意しているかなどもチェックされ、離婚しているケースでも、子どもの血縁上の父親に同意書を求めることもあります。日本のような単独親権を認めない国もあり、その場合、通常のビザ申請とは異なる申請を出すこともあります。このように、国が持つルールと、ご家族の状況の組み合わせによってビザ申請のポイントが異なります。したがって親子留学では、こうしたケースを多く扱うビザの専門家(ビザコンサルタント)に申請を代行してもらうことが一般的なのです。

親子留学の後、渡航前に見えなかった選択肢に気づく

弊社のお客さまの滞在は比較的長期で、2年以上がほとんどです。お問い合わせやご相談の時点で「できるだけ長く行きたい」というご希望があることが特徴かもしれません。親子留学の後の進路は、本当に多種多様です。

 

お子さまだけ現地の学校にそのまま進学され、付き添っていたお母さま(お父さま)は帰国というパターンもありますし、帰国子女枠などを使って帰国後に日本で進学される方も多くいらっしゃいます。

 

また中には永住権取得により、生活の拠点自体を移されてしまうお客ももちろんいらっしゃいます。親子留学の特徴は、日本に戻ってからの進学や進路を定めてしまうというより、留学後に将来のビジョンや可能性が広がり、渡航前に見えていなかった選択肢に気づいていくことが多いということです。

 

渡航前にできるだけ選択肢を広げながら、目的に合わせてカウンセリングします。しかし、前述した渡航後の現地で得る経験や可能性を考えると、まだ余白だらけであることも事実です。「目的を定めつつ選択肢を増やす」というのは矛盾しているようですが、それだけ「実際に行くこと」、行動するということが作り出す可能性は大きいものです。

 

アメリカには小学校の時から、全米の生徒が受ける試験があるのですが、その中で成績がいいと、CTYのテストを受けませんかというオファーが来ます。CTYは、「Center for Talented Youth」の略で、1979年にジョンズ・ホプキンス大学内に開設され、同一年齢層トップ5%までを対象とした才能児のための米国屈指の教育研究機関です。

 

アメリカに留学し、そのまま移住されたご家族で、お嬢さまがCTYのオファーをもらうことができて、テストに合格したケースがあります。CTYのテストに合格すると、提携大学を会場にしたサマープログラムや、世界50か国以上をネットワークしたオンラインプログラムを受けることができます。普通の教育だとうまくいかないクラスの生徒さんたちなので、個別のプログラムが組まれます。

 

アメリカは、優秀な人材をスクリーニングし、コミュニティとして築き上げるのが得意な印象があるのですが、このご家族はアメリカに実際に行くまでこうした仕組みをご存知ではありませんでした。これは、前述した留学によって新たに開かれた「可能性」でもあったわけです。

 

親子留学の成功は、最終的にはご家族が渡航後に得るチャンスの大きさや、そこでの頑張りにかかってくるものでもあります。留学で獲得された新しい環境の中で、それらの機会やチャンスをうまく掴み、活かすことできると、親子留学は渡航前に考えていた「成功」以上のものになるのかもしれません。

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