アジア圏のインターナショナルスクールが増えた背景
英語圏への留学だけではなく、最近はアジア圏への留学も人気が出始めています。
アジア圏の留学先として挙げられる代表的な国は、シンガポール、マレーシア、フィリピンです。このうちシンガポール、マレーシアが留学圏として注目され始めた背景には、いわゆる企業の「駐在員」の増加によってアジア圏のインターナショナルスクールが注目されるようになったことと、新設されるインターナショナルスクールが増えたことにより、そうした学校が積極的に学生をリクルートしていることなどがあげられます。
そのため、実際インターナショナルスクールにいる日本人学生は、まだまだ駐在員の扶養者として通学している学生が多いのが現状です。ただ、エージェントなどを使って自己手配して来ている学生の数は、ここ数年で増えています。
また、日本だけではなくインドや他のアジア諸国からの留学生の数も増加傾向にあります。駐在員の扶養者としての渡航する場合、両親のいずれかに就労ビザが発行されているケースとがほとんどで、ビザ申請から住居探しまで「会社」がやってくれるケースがほとんどです。自己手配となると、ビザ、学校、住居など、手続きが複雑かつ多岐にわたってしまうため、エージェントを使用されることが多いようです。
多様性ある環境、高い教育水準を誇る「シンガポール」
シンガポールも駐在員、または起業や投資によるビザの取得で滞在している家族が多いようです。親の事情でシンガポールに来たという学生が多いため、もともと英語圏であるヨーロッパや北米系の国籍の生徒がインターナショナルスクールにはいます。これは歴史が長く、名門校と呼ばれる学校に比較的多くみられる傾向です。
シンガポールが人気の理由は、世界的に見ても優秀な学校が多いこと、そして中国語の環境が適度にあること、また多様性がある文化圏でありながら、先進的で都会生活が手に入ることが挙げられます。
シンガポールにあるCanadian International School(CIS)では、IB(国際バカロレア)を採用しています(※IB:関連記事『ラグビーでも注目集まる「ニュージーランド」…留学するなら?』参照)。高校までをCISで過ごした学生は、アメリカ、イギリスなどの大学へ進学するケースも多いようで、卒業生の中にはIB(国際バカロレア)のテストスコアで満点をとって、ケンブリッジ大学へ進学を決めた学生や、奨学金を獲得する学生も多く、年々、獲得する奨学金の金額は増えています。(昨年度で約5,200万円)※1SGD=80円計算 参考:https://www.cis.edu.sg/about/academic-results
【学校情報】
Canadian International School Singapore
初等教育からIB(国際バカロレア)のカリキュラムを持つ数少ない学校の一つ。二つのキャンパスを持ち、Nursery(2歳)から入学可能。年々学生の数は増えており、現在3,400名程度。うち日本人は7%程度。全体の半数をアジア系が占めているが、その割合は、北アジア、東南アジア、南アジア、中東など多様な国籍から構成されている。中国語またはフランス語のバイリンガルディプロマ※1にも対応。
※1 バイリンガル・ディプロマ(Bilingual Diploma)は、国際バカロレア(IB)に基づいた大学入学準備コースのディプロマ・プログラムで必須科目群となっている「第一言語(Language A)」を2科目終了するともらえる資格。第一言語は母国語、または母国語並みに駆使できる言語を指す。自国のアイデンティティーを保持しながら、世界的な共通語も使いこなせるという証で、国際的評価が大変高い。
学費は欧米等と同程度の水準の「マレーシア」
マレーシアへの留学希望者は以前より増えています。もともとシンガポール同様に企業の「駐在員」が増加したことでインターナショナルスクールが増えたのですが、他にも、保護者ビザの取得のしやすさや、MM2H※2取得による10年更新型ビザで長期滞在が可能になること、生活費や滞在費のコストが下げられることがメリットとなって、留学先として人気になっているようです。
※2 10年間の長期の滞在が許可されるマレーシアの長期ビザ
マレーシアの名門校だけに関わらず、どの国の学校選びでもいえることですが、学校の設立年度や歴史、また進学実績などをしっかり確認する方が良いでしょう。名門校・人気校といわれるインターナショナルスクールは歴史があり、大学への進学実績などが豊富なケースがほとんどだからです。
新設校が悪いわけではありません。ただ、現在インターナショナルスクールが増えているため、新設校の学費の安さや校舎の見た目ばかりにとらわれると、選択を誤ってしまうケースがあることも事実です。競争率の高い、いわゆる名門校といわれる所には、一定の水準をクリアした学生が集まります。学校が提供するカリキュラムや先生の質だけではなく、当然クラスや学生生活を構成する他の学生のレベルも高い、ということも魅力のひとつとしてあるのです。
英語力の向上や空席待ち状態も考慮し、ある程度準備期間をとって、ウェイティングリスト(順番待ち、キャンセル待ち名簿)で待っても「入りたい学校」に行く意味、価値はこうしたことにあります。マレーシアの年間の学費は40万円程度から300万円クラスまで、学校によってさまざまです。前述した人気校・名門校になれば、200万円以上になってきます。学費は欧米やシンガポールと同程度の水準を見積もっておく必要があるでしょう。
進学目的で「フィリピン」を選ぶ人は多くないが…
フィリピンは少し特殊といえるかもしれません。日本では親子留学先としても少しずつ人気は出てきましたが、まだまだそのイメージは「安価に英語を学べる」という印象が大きいようです。
フィリピン以外のインターナショナルスクールの担当者からは、韓国の家族を中心に、一度フィリピンで短期間で英語力を上げてから、希望する学校や国へ留学する「二カ国留学」が多いとの話も聞きます。
フィリピンの語学学校は、個別レッスンや少人数制のレッスンが充実しているのが特徴で、やはり安価な学費で集中的に英語に取り組むことができます。そのため、海外赴任前や留学前のドクター、そして駐在予定の方などが、3ヶ月程度の準備のために通学することもあります。シンガポールや欧米圏といった、高い英語力が入学の条件になっている学校に行く前に、英語力を高めるためにフィリピンを検討するというのも、ひとつの選択肢です。
このように、進学目的だけでフィリピンを選ぶ方はあまり多くありません。一方で、ライフスタイルの変化を求めて移住する家族は昨今増えています。弊社でもお取り扱いをしている退職者ビザの一種であるSRRV(SPECIAL RESIDENT RETIREE VISA)は、2万ドル以上の預託金でフィリピンの永住権の申請が可能です。
そのため弊社の場合ですが、フィリピンに関しては親子留学より移住先としてのご相談が多いです。日本よりも圧倒的に安い物価のフィリピンで投資用コンドミニアムを購入。居住しながら、お子さまを現地のインターナショナルスクールに通学させるような家族が増えています。
アジア圏を中心に国の特徴をあげてきましたが、ご希望の国や関心がある国はあったでしょうか。欧米圏での「英語習得」だけが目的ではなくなっているなど、留学もトレンドが変化しています。