非課税の対象は「直系尊属」であること
教育資金を目的とする贈与の贈与税が1500万円まで非課税となる「教育資金贈与」という制度をご存知でしょうか。
2013年度の税制改正で導入され、2019年度の税制改正で期間が2021年3月31日まで延長された期限付きの措置となります。通常、入学金や授業料の教育資金を、支払いの都度、贈与する場合は非課税ですが、まとめて贈与する場合は課税の対象となります。「教育資金贈与」の制度を利用すると、法令で定める教育資金として払い戻す場合に、受贈者1人につき、最大1500万円までが非課税になるというものです。
【教育資金贈与のポイント】
・受贈者1名あたり1500万円が上限
・非課税の対象は直系尊属であること
・受贈者が30歳になるまで利用可能(在学中であれば40歳までの延長も可)
・教育資金にあてたことがわかる領収書などで払い戻し可能
※30歳になった後や贈与者の死亡など、課税対象となるケースがございますので詳細は各金融機関でご確認ください。
【制度の活用のための2ステップ】
(1)教育資金口座の開設口座開設後に、「教育資金非課税申告書」を管轄税務署に提出する必要がありますが、金融機関が提出手続きを行ってくれます。手続き後に預入を行います。
(2)教育資金の払い出し領収書などの必要書類を添えて、金融機関に払い出しの申請を行ないます。
さて、この「教育資金贈与」は教育資金の対象となるかどうかがポイントとなりますが、主に学校などに支払われるものと、学校以外への支払いがあります。
【学校への直接の支払いとして対象となる教育資金】
・入学金や入園料
・授業料や保育料
・施設設備料
・検定料
・教材費/修学旅行費/給食費等
最大1500万円までが非課税となります。
※インターナショナルスクールが該当するかどうかは学校によって異なるため、確認をお勧めします。
【学校への直接の支払いではないが対象となる教育資金】
・塾や予備校の費用
・そろばん/水泳教室の指導料や施設利用料
・スポーツ/文化芸術活動に関わる指導料など
※ただし、非課税枠1500万円のうち500万円まで。
基本的な考え方として、学校へ直接支払う費目は最大1500万円までが非課税となり、それ以外の費目の教育資金は、非課税枠1500万円のうち500万円までが対象となります。
制度を使用できる「正規留学」とカリキュラムとは?
留学の場合も、考え方は原則同じで、海外の学校へ直接支払う費目は最大1500万円までが非課税となり、それ以外の費目の教育資金は、非課税枠1500万円のうち500万円までが対象となります。
ただし、制度を使用できるのは、その国の学校教育制度に位置づけられている学校への「留学」を対象としています。日本の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、大学、大学院、高等専門学校、専修学校に相当する学校への留学が対象です(以下、「正規留学」とします)。
正規留学は、海外の幼稚園、小学校、中学校、高校、大学への留学です。わかりやすくいうと、現地の生徒が通う学校だとお考えください。学校に対して直接支払う費目(授業料、指導料、滞在費等)と、留学渡航費(空港使用料、サーチャージ、発券手数料を含む)も、最大1500万円までが非課税の対象となります。領収書、就学を証明する書類、渡航経路を確認する書類などが払い出しの時に必要です。
正規留学以外での海外での教育の例として、個人で通う語学学校への留学、海外の学校等に通わないホームステイ、海外ボランティア、海外インターンシップ、ワーキングホリデー等があります。これらは、「留学」とはみなされません(これらは、現地の生徒が参加するものではありません)。
ただし、例外として、日本で通う学校の授業またはカリキュラムの一環として単位認定されるものや、学校のカリキュラムの一環として上記のような海外での教育が組み込まれているもの、所属する学部やコースでそのようなプログラムへの参加が必須な場合には、日本の学校の教育カリキュラムの一部とみなされ、「留学」の対象となります。
しかし、カリキュラムの一部ではない場合や、先生や教授の裁量に参加の判断が任せられているケース、募集や選抜等で滞在するものはカリキュラムとみなされません。その場合、国内での教育同様に「塾や習い事の合宿費用」として500万円の非課税の対象になる場合があります。
「サマースクール」というものが大変紛らわしいのですが、海外の学校がキャンパスや学校施設を使って行っているものと、仲介業者や留学あっせん業者が「サマースクール」と呼ぶホームステイプログラムや国際教育プログラムがあります。
前者は海外の学校に直接支払う費目として1500万円を上限とした非課税の対象となることがあります。後者は「留学」とは見なされませんが、前述の「塾や習い事の合宿費用」として500万円の非課税の対象になる場合があります。
保護者に係る費用は非課税の対象外となりますが、受贈者は非課税の対象です。保護者と受贈者の費用を区別できるよう内訳を明確にする必要がありますが、仲介業者や留学あっせん業者の場合、支払方法が選べなかったり、2名分の費用が合算された形で領収書の発行されることが多いです(正直なところ、制度自体を知らないこともあります)。
また、支払いの選択を増やすことや領収証を分けることは手間になるので、対応しないところもあるかもしれません。事前に「留学」で「教育資金贈与」の制度を利用したい旨を留学をサポートする会社と金融機関の双方に伝えましょう。各支払いにおいて「教育資金贈与」として払い出しができる書類が発行できるようにする。そして、その相談および確認がスムーズにとれる状態にしておくのが無難です。
また、贈与者となる祖父母か受贈者となる孫が、海外に居住している場合には使用できないため、注意が必要です。「海外居住者」と見なされるかどうかは、ビザや滞在国での滞在日数、納税の状況によって変わりますので、国際税務に詳しい専門家を入れながら準備をした方がいいでしょう。
※2019年7月時点の情報です。制度をご利用の際には、金融機関や税理士に最新の情報を確認の上、利用されることをお勧めいたします。
参考:「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置・文部科学省(http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/1332772.htm)