グローバル化が急速に進むなか、子どもに英語のみならず、国際感覚を直接現地で身につけさせたいと考える富裕層が増えている。本記事では、数多くの留学サポートを手がける株式会社アエルワールドで海外生活カウンセラーとして親子留学を担当する北原万紀氏が、「海外留学」、「家族長期留学」等についての最新事情を解説する。今回は、近年開発が進むドバイの中でも注目すべき開発地域について、現地視察の様子も併せてレポートする。

国有の最大手ディベロッパー「EMAAR」が凄いワケ

ドバイと聞いてどんな印象をお持ちになりますか?

 

行ったことがあるかないか、また最近行ったか、5年以上、10年以上前に行ったのかで、この印象が大きく異なるでしょう。なぜならば、ドバイの景観は数年でどんどん変わっていくからです。今回は、昨今留学先としてのお問い合わせが増えているドバイに現地視察へ行ってきましたので、そのレポートお送りしたいと思います。

 

10年前にはほとんど砂漠だった土地でしたが、今では高層ビル、海外沿いは商業施設が建ち並び、またリゾート地として開発され、ヨットやクルーズ船の姿も多く見ることができます。

 

イスラム教を国の宗教(国教)として定めていますが、そうしたイスラム圏の国の中でも、ドバイは服の着用や飲食に関しても寛容で、最も住みやすい都市のひとつといえます。

 

人口の8割を外国人が占めているので、そうした文化的な違いを受け入れてはいるのですが、イスラム圏と意外と知らずにそのエチケットを守れないのが、ドバイを訪れる人々です。観光客が非常に多いドバイでは、多様な文化圏から人が行き来します。公共の場での飲酒や婚姻前の男女の立ち居振る舞いに関しては、イスラム圏ならではの厳格なルールが適用されるので、安全だからと日本と同じ感覚でいると、トラブルになりかねないのでご注意ください。ドバイ情報はこちらも参考にしてみてください(関連記事『日本人、中国人、韓国人が少ない留学先なら?「親子でドバイ」』参照)。

 

ドバイの特徴は、国有の最大手ディベロッパーEMAAR(エマール)のマスタープラン3つを中心に大規模な都市開発がされていることです。

 

EMAARは建物の建設のみを行う他のディベロッパーとは全く異なっており、ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)をはじめとするランドマークタワーや、その周辺の緑化や景観を含めた整備すべてを行っています。そのため、EMAARの開発案件は、いわゆる不動産の価格を左右するロケーションや部屋からの眺望など、居住者が求めるポイントが総合的に計算されており、ドバイで物件を購入する人は、EMAARびいきになる人も少なからずです。

 

というのも、その他のディベロッパーの案件は、EMAARの都市開発計画の周辺に副次的に建設され、周辺の整備は手が行き届いていないことも多いのだとか。

 

EMAAR(エマール)のマスタープラン3つのうち、1つ目はダウンタウン。観光客がまず訪れる場所で、まだまだ建設途中もありますが、その景色は「ドバイといえば」という象徴的な景色が完成していると言っていいでしょう。

 

ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)を中心に、目の前には大規模なショーが行われる巨大な噴水と超大型ショッピングモールであるドバイモールを併設し、その景観を眺めることがひとつの贅沢として、円を囲むようにレジデンスタワーやホテルなどが建ち並びます。このエリアはどちらかというと不動産収入を目的とした物件か、純粋にロケーションの良さを気に入って購入する居住用としての物件が人気です。

 

このエリアには学校はほとんどなく、お子さまのいるご家庭が居住する場合、ダウンタウンの外のインターナショナルスクールへ車で20~30分程度かけて送り迎えが必要となります(ドバイでは車の購入だけではなく、月々のレンタルという制度があり駐在者や就労を始めたばかりの外国人には人気です)。

 

ドバイのダウンタウン周辺は深夜まで出歩く人が多く、ショッピングモールやレストランも夜11時くらいまで開いています。タクシーも24時間つかまりやすい上に、過剰な請求をされるようなこともありません。ドバイは清潔で整備されていて安全であることは、渡航すると誰しもが感じることではないでしょうか。ダウンタウンを中心に至るところに監視カメラが設置され、現地のパートナー会社によると、落し物も戻ってくるし、ブランド物のバッグやスマホをレストランのテーブルに放置したまま席を立つのが日常とのことでした。

 

視察の際、ドライバーの女性が車の鍵をかけずにそのまま駐車して離れてしまう姿を見て、さすがに「大丈夫?」と聞いてしまったのですが、問題ないとのことです。こうしたことをしても大丈夫なのは日本くらいかと思っていたのですが、日本よりも安全ではないかなと思えるほどでした。整備された都市型の生活が好きで、すぐに渡航したいのでしたら、ダウンタウン近くがおススメです。

 

こうした地域に賃貸で住むのあれば法人設立によるビザ取得、または居住用の不動産を購入していいということであれば不動産ビザでも親子留学は可能です。

 

ドバイの象徴ブルジュ ハリファをのぞむダウンタウンは24時間眠らない
ドバイの象徴ブルジュ ハリファをのぞむダウンタウンは快適・安全そのもの

 

家族やコミュニティを意識した都市づくりが進む

EMAARのマスタープラン3つのうち、2つ目はドバイ・ヒルズ・エステート。ブルジュ・ハリファ(BurjKhalifa)のようなランドマークタワーはありませんが、こちらは広大な敷地に砂漠を忘れ去れるような緑豊かなコミュ二ティが形成されています。それを印象づけているのが、18ホールのチャンピオンシップ・ゴルフコースや住宅の間に点在する大きな公園などのオアシスと、ドバイ・ヒルズの周囲に多く設置されている学校の数々です。

 

「緑豊かな自然の近くで暮らしたい、子育てしたい」というニーズはドバイ居住者にも多いようで、その緑の多さ以外にダウンタウンには見ることができない戸建てや庭つきの家が多いのも特徴です。戸建てや庭つきの家はダウンタウンの外には点在して見られますが、時に砂漠のような土地に戸建ての家がポツンとある景色を目にします(ただ、周りは砂漠です)。住居だけでなく周りの環境を総合的に考えると、ドバイ・ヒルズは非常に魅力的なのが納得できます(https://www.emaar.com/en/our-communities/dubai-hills-estate)。

 

ドバイ・ヒルズ内の病院や学校は、すでに2017年頃から順次営業も開始しており、この夏までにショッピングモールが営業を開始します。コミュニティの中での落ち着きのある「暮らし」を求めるのであれば、ドバイで最適のエリアのひとつではないでしょうか。戸建てだけでなく、マンションタイプなど、さまざまな物件が販売されており、一部はすでに入居が始まっています。周囲の学校はイギリス系、アメリカ系、インド系とさまざまですが、GEMS(ジェムズ)Schoolが周囲に多くあります。GEMSは、Global Education Management Systemsの略で、2000年に設立、ドバイを中心に各国に70校を展開しています。それぞれの学校が約40~80カ国からの生徒を受け入れています。

 

また、ドバイではKHDA(Knowledgeand Human Development Authority)が私立校の教育の質の向上を管理しており、13の基準を持ちながら定期的な視察をおこなっています。評価はWeak,Acceptable,Good,Verygood,Outstandingまで5段階で、その結果がウェブサイトに公開されています。もちろんGEMSもその管理内です。周囲の学校の多さを見ても、家族やコミュニティを意識した都市設計を感じさせます。

 

最後に、EMAARのマスタープラン3つ目は、ドバイ・クリーク・ハーバーです。こちらは第2のダウンタウンといってもいいほどの大規模開発地域で、立地は空港からわずか10分、ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)よりも高い世界一の高さを誇るドバイ・クリーク・タワー(1007m)がランドマークとして建設予定です。

 

さらに、建設予定のショッピングモール(ドバイ・スクエア)の大きさは750,000㎡、サッカー場100を合わせた敷地面積を予定しています。また、野生のフラミンゴを保護する水辺がすぐ側にあり、最先端のテクノロジーと自然がうまく調和した近未来的な景観です。ビーチを有する限られた数の物件は即完売しており、その他の物件も、現在EMAARからオファーされているペイメント・プランにより、販売開始後にすぐに完売になっているようです(https://www.emaar.com/en/our-communities/dubai-creek-harbour)。

 

ドバイ・クリークは一部の完成したばかりの高層マンションに入居が開始した程度で、まだまだ未完成。最終的な完成まで5%にも満たない初期段階です。学校も周囲に点在しますが、留学エリアとしておススメできるようになるには、あと数年かかるかなという印象でした。

 

それでも、そのセールスオフィス(開発エリアのミニチュアやモデルルームが設置されたEMAARの販売オフィス)には、入れ替わり立ち替わり、さまざまな国籍の人々が訪れ、物件を購入していきます。まさに南アジア、中東、アフリカのハブという印象でした。多種多様な人々が行き交い、今年の万博(Dubai Expo2020)に向けて、その活気はますます高まる気配を各所で感じることができました。

 

次回は、視察してきたドバイの「インターナショナルスクール」についてご紹介いたします。

 

 

北原 万紀

株式会社アエルワールド 海外生活カウンセラー

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