胃やみぞおち、胸の不快感…機能性ディスペプシアの原因とは?

機能性ディスペプシアの原因は様々ですが、心理的要因もその1つです。ストレス社会とも呼ばれる現代社会では、実際に長引く胃腸の不調に悩まされる人が多く存在します。今回は機能性ディスペプシアの原因と効果的な治療法について見ていきます。※本記事では、藤田胃腸科病院理事長・院長の本郷仁志氏が、胃腸の健康に関する正しい知識や、氏が普段の診療の中でアドバイスしている健康維持の秘訣等を紹介します。

食事を始めてすぐにお腹がいっぱいに…

【心得その1】

異常はないのに不調が続く、機能性ディスペプシアにご用心

 

機能性疾患のなかでも、近年注目を集めているのが「機能性ディスペプシア(FD)」です。胃酸の逆流によるゲップや胸焼けは機能性ディスペプシアの症状によく重なります。

 

具体的な症状については「食事に関係するもの」と「食事には関係しないもの」に分けることができます。

 

食事に関係するものとしては「食後のもたれ感」。特にたくさんの量を食べたわけでもないのに、いつまでも食べものが胃に残っている感じがして不快になる症状を指します。

 

また「早期膨満感」と呼ばれる症状もあります。こちらは食事を始めてすぐにお腹がいっぱいになるという症状。普通の量であっても食べきれなくなります。

 

食事と関係がない症状には、みぞおちに痛みが走る「心窩部(しんかぶ)痛」や、みぞおちに焼けるような不快感を覚える「心窩部灼熱感」があります。ちなみに、みぞおちより上、胸のあたりにこうした不快感を覚えるのが、あとで出てくる「非びらん性胃食道逆流症」です。

 

機能性ディスペプシアは、かつて「慢性胃炎」と診断されていました。しかし「胃炎」とは、胃粘膜に炎症が起きている状態を指します。これに対して、炎症がないのに胃に不快感を訴える患者を「胃炎」と呼ぶのは無理があるということで、新しい概念として「機能性ディスペプシア」という病名が付いたのです。

 

この病気に苦しんでいる人は健康診断を受けた人で11~17%、病院にかかった人では44~53%もいるというデータもありますから、機能性ディスペプシアは決して特別な病気ではありません。

胃の正常化だけでなく心理的負担の軽減も改善のカギ

【心得その2】

長引く胃腸の不調、治すための第一歩は「見て確認」

 

機能性ディスペプシアの原因にはさまざまなものがあると考えられています。例えば、「胃の運動異常」「胃の知覚過敏」「ストレス」「胃酸の過剰分泌」「生活習慣の乱れ」「ピロリ菌」などです。

 

私は機能性ディスペプシアの症状を訴える患者さんには左記を尋ねることにしています。

 

「ストレスがありますか」

「胃カメラを受けたことがありますか」

「ピロリ菌を調べた(除菌した)ことがありますか」

 

もし検査や除菌をしていたら自分がピロリ菌に感染しているかしていないかをご存じのはず。検査をしていないなら、胃カメラ時の所見でピロリ菌の検査と感染している場合は除菌を考えます。すでに何度か触れているように、ピロリ菌は早い段階で除菌できれば胃がんを引き起こす可能性を減らすことができるためです。

 

もしピロリ菌に感染していないなら、機能性ディスペプシアの疑いとなります。

 

機能性ディスペプシアの治療としては大まかに2つの点を考える必要があります。一つは胃の働きの異常を正しいものにすることです。胃の働きは、食べものを溜めて、消化し、小腸(十二指腸)に送り出すというものでした。この働きがうまくいかないと膨満感が生じたり、痛みを感じたりします。そのため、本来の働きができるように改善することが大切なのです。

 

もう一つの点は、敏感になっている胃を正常に戻すことです。機能性ディスペプシアの患者さんには、胃酸に敏感に反応する方が少なくありません。普通の人なら感じない刺激に対して痛みを感じてしまうのです。胃酸への知覚が過敏になっているということですから、胃酸を抑える薬等を処方します。

 

また近年は、ストレス社会といわれるように、生活のなかでさまざまなストレスを感じている人が多くいます。不安や焦りなど心理的要因で機能性ディスペプシアが起きているときには、まずそのストレスを軽減させることも大切です。

 

私の経験で言えば、医師による丁寧で詳しい説明が効果を発揮するケースが多々あります。しっかりと患者さんの話を聞き、検査結果を見せ、異常がないことを伝えると、安心感を覚え、改善したケースも多くありました。それでも改善しないときには、抗不安薬や抗うつ剤を使用することがあります。ただし、合う、合わないの個人差があるため、使用の際にはどれくらいの量をどれくらいの期間で使うのかを見定めながら使っていきます。

 

日本消化器病学会「機能性ディスペプシア(FD)ガイド」より
[図表1]機能性ディスペプシアの治療の流れ 日本消化器病学会「機能性ディスペプシア(FD)ガイド」より

1週間で改善…胃腸の安静と熟睡を得る入院プログラム

<1週間の入院で絶食と熟睡を経験すれば機能性ディスペプシアは改善>

 

機能性ディスペプシアや後述する過敏性腸症候群はある意味「胃腸の打撲」と考えることができます。腕などを打撲した場合、その部分に刺激を与えないように安静にすることが大切なように、胃腸の打撲にも「絶食」という安静が必要なときがあります。

 

当院では重症の機能性ディスペプシアの患者さんに対して1週間の入院プログラムを用意しています。わざわざ入院してもらうのは、絶食と熟睡の機会を提供したいためです。重症の患者さんでは、自律神経失調症やうつ病を合併していたり、不眠・食欲不振によるストレスを抱えたりというケースがよく見られます。機能性ディスペプシアには不安や焦りなど心理的要因があることは本文でも触れました。

 

即効性の抗うつ薬を服用してもいいのですが、この薬には強い眠気が出るという副作用があります。そのため「日常生活に支障を来すから」と服用をためらう人が少なくありません。しかし入院してしまえば、その心配も不要というわけです。

 

入院をしてぐっすりと眠れば睡眠不足は解消。その間2日ほど絶食をしてもらうのですが、睡眠不足の解消とともに体調も整い、食欲が出てきます。これは「快眠」と「快食」が戻ってきたということです。絶食後に食べた流動食が「今まで食べたなかで一番美味しかった!」と喜ぶ人もいるほどです。

 

当院ではすでに数十人の患者さんにこの入院プログラムを受けてもらっており、治療としての効果の大きさも確認できています。通院ではなく入院なので、遠方の患者さんに対応しやすい点もメリットの一つです。

 

[図表2]1週間プログラムのスケジュール

 

藤田胃腸科病院 理事長・院長

1963年生まれ。1989年、大阪医科大学を卒業。2003年より藤田胃腸科病院院長に就任。2009年より理事長も兼務。2019年より、大阪医科大学臨床教育教授。胃腸科および内科の専門病院として「早期発見・早期治療により患者様の信頼に応える」を基本理念に、日々診療に励む。地域での啓発活動も積極的に行っており、セミナーやイベント、講演会等で発表多数。胃がん・大腸がん検診に長年携わり、大阪府がん対策推進委員、病院のある大阪府高槻市では胃内視鏡検診導入・検討委員長や高槻消化器疾患談話会代表世話人を務めている。

著者紹介

連載快食・快眠・快便を実現!不調・病気知らずの「胃腸」をつくるための心得

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

本郷 仁志

幻冬舎

食物繊維の取りすぎで便秘が悪化⁉ 間違った情報をうのみにしていると不調が引き起こされることも…。阪府高槻市で50年間にわたり地域の健康を守り続けてきた専門医による胃腸のバイブル。年間1万2000件の内視鏡検査を行う藤田…

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